モデル体験撮影会｜リアクション

モデル体験撮影会

●●●寒天の集会●●●

　寒空の中開催された新人教育と言う名の撮影会。
　集まったカメラマン、ディレクター、メイク、衣装コーディネーターはそのほとんどが新人だ。
　参加者はボランティア…とまでは行かないが、駅で声をかけた人や主催のツテで集めた人たち。

　それなりに多くの人が集まり、衣装や写真などの希望を取り、それぞれが決まり次第場所を移動する。
　主催のツテの一人、直也はスタッフ側としてその指揮のようなことをしていた。
　この運営スタッフ自体は直也が部下として育てているスタッフだ。

「ねぇねぇ、カメラマンとして参加させてもらうことはいいのかな？」
「あ、はい、ええと…大丈夫です。こちらの約束さえ守っていただければ」

　そんな直也に話しかけたのは持参のカメラを手に持った響タルトだ。
　直也の対応は慣れたもので、いくつかの約束事がかかれた紙を渡し、サインを求める。
　主になるのはここで撮影したデータを差し出すことと、許可がない限り保存しないことだ。

（モデル撮影会って事は美形がいっぱいいるって事だよね☆　薄い本の参考にしなきゃ！）

　普段は絵を描き、男子同士や女性同士の恋愛を好物としているタルト。
　健全（？）な事を考えながらサインをし、直也に提出し、もらった許可証を首から下げる。
　タルトは浮かれ気分でまだ希望を書いている人たちに目を向ける。
　カップリングのネタというのはどこにでも転がっているものなのかも知れない。

「あっ、月さんだ」

　タルトが目を向けた先にいたのは同じクラスの服のデザイナーを目指す桜月だ。
　とてとて、と近づくタルトに気がついた月と隣にいる豊満な体躯を持つ、北条冬華。
　聞けば月の誘いで冬華も参加し、クリスマスのイメージガールの撮影を希望したのだとか。

「こういう撮影会社主催のものは初めてですから新鮮ですね。頑張らないと」
「うんうん。北条さんも素敵だけど、月さんも綺麗だからモデルとしての参加でいいんじゃない？」
「私は大丈夫だ。今日は冬華の撮影だからな」

　意欲を示す冬華に月に撮影を勧めるタルト。
　そんな三人は撮影ブースヘと移動する。

　移動する冬華達の後ろには、スタッフを魅了する一人の女性がいた。
　胸の高鳴りを押さえつつ、男性スタッフは希望を聞きにいく。
　本人は魅了していることを自覚していないのか、艶めかしい仕草で対応をする。

「衣装なのですー？　エロはいつもの服で撮影なのです」

　この時期の普段着としては寒いであろう、キャミソールドレスを着ているのはエロ・イーアールオーだ。
　しかし、それはそれ。女性のファッションへかける情熱は寒さなどでは負けないのだ。
　下心はない、と心の中で唱え続ける男性スタッフはエロを撮影場所に誘導する。
　当のエロは男性が自分に魅了されつつあるということを知らずに男性スタッフについていく。

　入れ替わるように直也のところに挨拶に来たモデルがいた。
　以前、とあるイベントで仕事をした関係で声をかけていた城山水樹だ。

「おはようございます。以前はお世話になりました。今日は少しでもお役に立てたら」
「あぁ、いらしてたのですね。すみません、こちらから挨拶に伺えればよかったのに」

　通例の挨拶を済ませる水樹と直也。
　今回はスケジュールが空いており、教育という面で力になれることがあるだろうと、水樹は参加していた。
　どんな人でも新人時代があり、先人の知恵や教えがあって成長ができているのだ。

「今日は『寝子島ラムネ』の宣伝をしようと思うのだけれど、どうかしら？」
「えぇ、丁度用意もありましたし、メーカーにから連絡しておきますね」

　水木の提案に言うが早いか、手元の端末を操作する直也。
　約束が取り付けられるか分からないが、こう言ったことは早い方がよい。
　それに、監督が繋がりがあったはずなので、話も通りやすいと直也は考える。

「それじゃ、また後でよろしくお願いしますね」
「はい。城山さんも良い画が取れますよう」

　そういって別れる二人。
　快晴の空が広がる、肌寒い日の撮影会は少しずつ始まっていった。

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