赤い夕陽が、街並みの向こうに沈んでいく。
人のいない店内を眺めて、店主は溜め息を吐いた。冷めた茶をすすり、肩を落とす。
「そろそろ、潮時かねえ……」
零した呟きは、人気のない店内に吸い込まれていく。昔は良かった、などと口にするつもりはないが、学校帰りの子供達で賑わっていた頃を思い出すと、寂寥感に心の奥が小さく痛んだ。
そろそろ腰も痛くなってきたし、思うように身体が動かないことも増えてきた。まだ元気であるとは思っているが、寄る年波には勝てないのだろう。店主は寂しげに目を細めると、企業のロゴが入ったボールペンを手にして、手元にあった紙に文章を書き付けた。
一文字一文字、自分がこの店と歩んできた日を思い出しながら、言葉を綴っていく。出来上がった文章を眺め、店主は目を伏せると緩慢な動作で立ち上がり、ガラス戸にその紙を貼った。
「閉店のお知らせ
11月×日をもって、閉店させて頂きます。
長い間、ありがとうございました。
×日までは休まず営業します。
かどや」
冷たさをはらんだ風が、貼り紙を揺らしていた。
こんにちは、青崎です。
駄菓子はたまに食べるとおいしいですね。
■舞台
旧市街、細い路地の角にある小さな駄菓子屋「かどや」
■目的
駄菓子屋で思う様楽しんで下さい。
■日時
とある日曜、10時~17時
■駄菓子屋「かどや」
5人も入ればいっぱいになってしまうような、年季の入った小さな店です。
店の入口には自動販売機が一つ、店内には所狭しと、色とりどりの駄菓子や玩具が並んでいます。
奥には座敷があり、店主はたいていそこに座ってお茶を飲んでいます。
その奥は、店主の家に繋がっています。
■店主
高梨 さと(たかなし さと)
72歳/小柄
人の良さそうな顔をした、白髪の女性。
ずっとここで駄菓子屋をやっているので、知っている人もいるかもしれません。