深夜に近い時間帯、薄暗い部屋でパソコンの立ち上がる音がした。基本画面からマウスを使ってサイトに飛ぶ。
数秒の間が空く。ニャオ~ンと猫の鳴き声で画面中央にタイトルが浮かび上がった。
MMORPG『寝子島奇譚』である。ハンコのような丸い枠内に書かれていた。右下の隅には小さい文字でプロトタイプとあった。
ログインを済ませているのか。すぐにゲームは開始された。
公園の噴水前にキャラクターが現れる。見た目は小柄な少女でウェーブのかかった髪は銀色に輝いていた。机に向かってパソコンを操る
アン・リアルにそっくりであった。
公園にはたくさんの人が集まっている。アンはキーボードで文字を打ち込んだ。
「誰でもいいの。あたしとチームを組んでくれないかな?」
画面の中のアンが吹き出しの言葉で呼び掛けた。
「あっそ」
「わたし、他のチームだから」
「レベル1じゃねぇか」
呼び掛けに反応はあるものの、色好い答えは返って来なかった。
キーボードから手が離れた。アンは薄暗い部屋の天井を見上げる。
「……ビラを自作するから、別にいいもん」
強い意志の籠った声であった。
翌日、寝子島高校のカフェテラスに一束のビラが置かれた。見出しの赤い文字の『急募』は人の目を引き付ける。内容はとても簡素であった。
四月の末日の二十時にMMORPG『寝子島奇譚』内の公園に集合して欲しい。
ログインの方法は本アドと本名で出来るよ。あ、それと最初にステータスを決める必要があるね。
自分にそっくりのキャラクターを使って、ゲームの中で楽しく遊ぼうよ。
興味深い顔で何人もがビラを手に取った。
今回の舞台は微妙な3Dで展開されて、時に凝った演出があるMMORPG『寝子島奇譚』となります。寝子島とタイトルにはありますが、プロトタイプなので現実離れしています(アクション次第)。あ、それと味方に攻撃は出来ますがダメージは与えられません。ゲームの仕様なのでご容赦くださいね。
では、最初に皆様の設定を決めましょう。無事にログインを果たしたとして話を進めます。
最初に職業(?)を決めてください。アクションに書かれていない場合は自動的に学生になります。
職業(?)の選択
学生 HP11 MP0 腕力2 防御力2 素早さ2 運2(スキル:何もない)
戦士 HP12 MP0 腕力3 防御力3 素早さ1 運0(スキル:何もない)
魔術師 HP08 MP6 腕力1 防御力1 素早さ1 運2(スキル:レベルが上がると魔法を覚える。初期はファイヤー・ボール)
僧侶 HP09 MP3 腕力2 防御力2 素早さ2 運1(スキル:レベルが上がると魔法を覚える。初期はヒール)
盗賊 HP08 MP0 腕力2 防御力2 素早さ4 運3(スキル:ピッキング)
殺人鬼 HP11 MP0 腕力3 防御力2 素早さ2 運1(スキル:敵に狙われ易い)
ピエロ HP10 MP0 腕力2 防御力2 素早さ1 運4(スキル:敵に狙われ難い)
※ファイヤー・ボール 効果範囲 単体 消費MP2 威力1~8
※ヒール 効果範囲 単体 消費MP1 回復1~8
※魔術師 レベル2でファイヤー・ブレス 効果範囲 全体 消費MP4 威力1~20
※僧侶 レベル2でヒール・オール 効果範囲 全体 消費MP3 回復1~20
レベルアップによって増える数値(職業別)
学生 +HP3 +MP0 +腕力2 +防御力2 +素早さ2 +運2
戦士 +HP4 +MP0 +腕力3 +防御力2 +素早さ1 +運1
魔術師 +HP2 +MP4 +腕力1 +防御力1 +素早さ1 +運2
僧侶 +HP3 +MP2 +腕力2 +防御力2 +素早さ1 +運1
盗賊 +HP2 +MP0 +腕力1 +防御力2 +素早さ3 +運3
殺人鬼 +HP3 +MP0 +腕力3 +防御力2 +素早さ2 +運1
ピエロ +HP2 +MP0 +腕力2 +防御力2 +素早さ1 +運4
※最初はレベル1。2になるには経験値10が必要。次のレベルは20。次は40と倍で増えていく。
色々な数値を参考にして職業を選択しましたね? 次は10ポイントを各項目(上限は30)に振り分けてください。アクションに書かれていない場合は以下になります。
学生 HP14 MP0 腕力4 防御力4 素早さ4 運4
※ポイントを使い切らない時は少ない数値でゲームが始まります。反対の場合は大きい数字からオーバー分を削られます。
各職業の装備品ですが、それらしい物を持っています(アクション次第)。所持金は500ニャオン(ニャオンは貨幣単位)。
ログインを済ませますと、街の中央にある公園からゲームが始まります。自由に楽しんでください。街は平原の只中にあります。外に出ますと漏れなく戦闘になりますのでご注意ください。
徒歩による移動は大変ですよね。そこで簡易移動があります。いつでも使用できるコマンドなので紹介しておきましょう。
簡易移動
1:魔王の居城
2:街(公園に出現)
3:はりじごく
4:キャッキャうふふぅ~
5:雑貨屋
6:望みの店(アクション次第)
※雑貨屋の商品
薬草 (100ニャオン、効果は単体のHP1~8の範囲で増やす)
毒草 (100ニャオン、効果は単体のHP1~8の範囲で減らす)
草 (100ニャオン、草食動物に人気があります)
猫の置物(300ニャオン、胸に抱えるほどの大きさ。何かの役に立つと信じましょう)
反魂の札(500ニャオン、所持するだけで効果があり、僕は死にましぇ~ん、と涙目で叫ぶことで生き返るとか)
望みの品(価格は不明で、望んだ物に適した価格が付けられていると販売されるかもしれません)
まさかとは思いますが「1」を選択する人はいませんよね? ゲームの中なので死はありますよ。そうそう、HPが0になった時のペナルティを簡潔に述べておきましょう。
死亡の影響で所持金が半分になります。持ち物は没収です。厳しい取り立てなのです。
次にゲームの花形となる敵を紹介しましょう。
またお前か、と思う敵もいるかもしれませんが、気のせいと思い込んでください。
スライム HP5 MP0 腕力2 防御力2 素早さ2 運1 ニャオン5 経験値1
ゲジゲジ HP6 MP0 腕力3 防御力3 素早さ4 運1 ニャオン7 経験値2
ロボット HP7 MP0 腕力4 防御力5 素早さ3 運2 ニャオン10 経験値3
カマキリ HP11 MP0 腕力9 防御力4 素早さ8 運4 ニャオン15 経験値5
オオカミ HP15 MP0 腕力12 防御力6 素早さ10 運3 ニャオン20 経験値7
にゃおん HP20 MP0 腕力20 防御力20 素早さ20 運20 ニャオン100 経験値20(※条件が揃うと出現)
敵の出現はランダムとなります。1d5(五面ダイスを一回振ること)で決めるとかなんとか、むにゃむにゃ。
戦闘時にキャラクターの順番が回ってきて出来ることを書いておきます。
1:戦う (手持ちの武器による攻撃)
2:魔法 (魔術師や僧侶の為のコマンド)
3:守る (防御力が一時的に二倍になります)
4:投げる (物の可能性が高いです)
5:逃げる (逃げ出す可能性が高いです。あまりに頻繁に逃げますと……)
6:アイテム(アイテムを使用します)
7:思うまま(行動を起こすことで何かが起きるかもしれません)
これ以降はゲーム内の仕様なので読まなくても問題ありません。ですが、なんで一撃でやられるんだよ、とリアクションに納得できない人の為にも明かしておきましょう。
戦闘の流れ(敵も同様)
※1d30 30面体のサイコロを一回振ること。
※【GA】の場合、敵は二分の一の確率で殺人鬼を狙いにいく。それ以外はキャラクターに五十音順の数字を割り振り、人数分の出目のサイコロを振って標的を選ぶ。ピエロは標的になってもスキルの効果で一度のやり直しが可能となる。
●敵の最大出現数はキャラクターの二倍。途中から味方が戦いに参加することもできる。その場合、高確率で敵も増える。リアルタイムに見せかけたターン制の戦闘である。
●攻撃の順番は素早さの数値の大きさで判定する。敵と素早さが同じ時はキャラクターが優先される。
●味方で数値が同じ時の優先順位は、盗賊>殺人鬼>戦士>学生>僧侶>魔法使い、となる。職業が同じ場合は素早さと運の合計の大きい者を選ぶ。それでも決まらなければ、サイコロの出目による完全な運となる。
●狙う敵の素早さがキャラクターを上回っている場合、クリティカルヒットが出るまで攻撃は当たらない。魔法は無条件で当たる上に敵の防御力も無視できる。
●攻撃がクリティカルヒットになる条件(1d30>(31-運の数値)の時に(腕力×2)-敵の防御力>0で数値分のダメージを与えられる)。
●クリティカルヒットを逃すと敵は回避行動を取る(1d60>61-(運の数値+素早さの数値)の条件でノーダメージ)。
●敵の回避が失敗に終わると通常の攻撃になる(腕力-敵の防御力>0の場合に数値分のダメージを敵に与えられる)。
長々と書いてきましたが、以上がMMORPG『寝子島奇譚』の概要となります。ややこしいようにも思うかもしれませんが、要約するとすっきりします。