目を覚まして最初に息を吸ったとき、まず感じたのは違和だった。
肺が重いのか空気が重いのか、何かひどく澱んだような気分になる。
(なんだろう……雨かな)
風の涼しい秋の深夜に似合わないどんよりとした気配に、二宮 卓はベッドから起き上がり窓枠に手をかける。
窓の外は暗闇だ。暗闇の中に、アパートの外階段の切れかけた蛍光灯がむなしく明滅している。ああ管理人さんに言っておかないとな。二宮が寝起きの頭で、そうぼんやり考えたときだった。
うつろな消えかけた光に照らされ、暗闇の中で何かがうごめくのが見えた。
(……ん?)
目を凝らしてみると、階段のところに――誰かが立っていた。
人影のように見えたそれは、よく見るとぬらりとしたような皮膚に覆われている。
ぎょろりとした目と目があった。
口からは首にまで届きそうな舌があった。
そしてそいつの手から生えた異様に長い爪は――真っ赤に濡れていた。
二宮は慌ててカーテンを閉めた。
どきどきと恐ろしいスピードで胸が高鳴っている。
その胸の高鳴りを抑えるようにカーテンの隙間からそっと階段の方を窺うと、その異形のバケモノは存外ゆっくりした動きで――しかし着実に歩いているのが見える。
(もしかして……こっちに向かって来てるのか……?)
思わず頭を抱える。これは夢か? いったいどうしてしまったんだ? 自分以外の人間はみんなバケモノになってしまったのか?
どんどんどん、どんどんどん
唐突にドアの叩く音が聞こえ、びくっと二宮は体を震わせる。
さっきのバケモノか? いやもしかしたら――
(俺みたいにバケモノに気づいた誰かが、助けを求めているのかも知れない)
そうだ、いやきっとそうだ。
都合よくそう解釈した二宮は、腰が抜けそうになるのを必死に奮い立たせてアパートの扉のレンズを覗いた。
その小さな魚眼の中に立っていたのは――
立っていたのはもちろん「ミドリ人間」です。
こんにちは、花村です。
あなたは夢を見ています。
街中にミドリ人間が徘徊してしまっているという悪夢です。
原因はろっこんなので、どうにかしてください、というシナリオです。
※シナリオ『恐怖!ミドリ人間の襲来』に参加されていない方、
読まれていない方ももちろん問題なくご参加可能です!
◆シナリオ『恐怖!ミドリ人間の襲来』について
一ノ瀬、二宮、三村の大学生三人組が企画を立ち上げ、
参加されたみなさんで作り上げた作ったZ級ホラー映画の世界が舞台です。
読んでいただく必要はとくにございません。どなたでもご自由にご参加どうぞ!
◆原因について
シナリオ『恐怖!ミドリ人間の襲来』にて監督を務めた一ノ瀬 勇治の仕業です。
「自分の映画がもっと多くの人に認められたらいいのにな…」という無茶な願望と神魂がリンクしてしまったのか、
「自分の映画の夢を見たとき、その夢の世界に映画を見た人を引きずりこむ」という傍迷惑な能力が発動してしまいました。
この悪夢(まさに悪夢)から抜け出すには、夢の世界のどこかで寝ている一ノ瀬を叩き起こすしかありません。
がんばって一ノ瀬を見つけて、目覚めさせてやってください!
失敗しても夢の出来事なので起きれば現実に戻れますが、今後一ノ瀬を起こすまで延々この夢を見続けることになります。
◆目的について
最終目的は「一ノ瀬を起こすこと」ですが、PCのみなさんはもちろん最初はそんなことご存じないかと思われます。
夢の世界の中では、原因が一ノ瀬にあるのではと察した二宮と三村が彼を探し回っています。
「彼らから一ノ瀬を探してくれと頼まれた」
「(前回参加者の方は)一ノ瀬の仕業だと察して彼を探すことにした」
「みんなと合流して、なんとなくみんなのしていることを手伝った」
などなど、一ノ瀬捜索に加わる方は上記をご参考ください。
(もちろんそれっぽい他のアプローチでも構いません)
◆舞台について
深夜の寝子島です。ミドリ人間がいたるところに徘徊しています。
目標「一ノ瀬を起こす」を達成できなくても、朝が来れば目が覚めます。
夢の世界なので、ろっこんの使用などはご自由に!
開始場所は舞台内でしたらご自由にどうぞ。
舞台が全土と広いので、ソロでのご参加の方は、誰かしら他PCさんと合流したい旨を書いていただければ、あとは絡みはアドリブですすめさせていただきます。
◆ミドリ人間について
全身ミドリのバケモノです。
攻撃手段は両手の鉤爪、当たり所が悪いとフツウに死ねるレベルの攻撃です。
動き自体は鈍いので、武道やスポーツの心得がある方は、撃退できるかもしれません。
が、過信は禁物です。よほどの実力者でない限りは、応戦しつつ、基本は逃げるスタイルが望ましいです。
一般的な高校生女子でも、全速力で走ればわりと余裕で逃げ切れます。
弱点は「猫」と「聖なるもの」です。「猫」をけしかければ、通常よりややダメージが通ります。
「聖なるもの」(神社、十字架、聖書など一般的にそれっぽいもの)が近づくと逃げ出します。
PCさんのプロフィールを見て、「この方でこの戦い方は無茶でしょ!」と私が判断してしまった場合は、
残念ながら死亡(=びっくりして目が覚めて、「ゆ…夢か…」となる)してしまうかもしれません。
(例:体を動かすことに縁のない学生さんが、ろっこんを使わず素手で5人相手のミドリ人間を吹き飛ばす、など)
もちろん、ろっこんや罠など、ご自身の立ち回りを工夫したような内容でしたら積極的に採用いたします!
また、せっかく夢の中なので、「派手に死にたい」「気になるあの子を守って死にたい」なども歓迎です。
全力で死に際を書かせていただきます(^∀^)
◆一ノ瀬の居場所
のんきに眠っているということはつまり、わりと安全な場所にいるようです。
わりと簡単なヒントですが、そこにたどり着くまではミドリ人間との遭遇は避けられないかもしれません。
◆大学生三人組について
今回は一ノ瀬を探すシナリオなので、彼と同行していたというアクションはご遠慮ください。
二宮はシーサイドタウンにある学生アパートで命の危機に晒されています。
三村は、この現象と一ノ瀬が何かしら関係あると気づき、星ヶ丘からオープンカーで友人たちを探しています。
いろいろ書きましたが、要はパニック映画の世界を楽しみましょう! という感じです。
それではよろしくお願いいたします。