町役場の応接室で町長の中沢リッカルドは、大柄な熊を連想させる男と向かい合っていた。
男は、関東映画株式会社、略して関映のプロデューサー、石橋康則である。
渡された名刺を見やってから、リッカルドは尋ねた。
「では、この寝子島町でサスペンスドラマの撮影をしたいと?」
「はい。テレビ夕日の『木曜サスペンス劇場』のことは、ご存じでしょうか?」
うなずいて、石橋は言う。
「タイトルどおり、毎週木曜日の夜、二時間のサスペンスドラマを放送しております。その中に、『鳴神(なるかみ)ひよりシリーズ』という人気シリーズがありまして。その十作目にあたる『落神伝説殺人事件』の撮影を、ぜひこの寝子島町で行いたいと、このように考えている次第です」
「『木曜サスペンス劇場』は、私も毎週、楽しみに見ています。『鳴神ひよりシリーズ』というと、たしか……民俗学オタクの女子大生・鳴神ひよりが、幼馴染の刑事・西脇数馬と共に事件を解決して行くというのが、基本のストーリーですね」
リッカルドが朗らかに笑って言うと、石橋も破顔した。
「おお、見ていて下さいましたか。それは、うれしい限りです。……今回の『落神伝説殺人事件』では、この寝子島町に残る落神の伝説を調査にやって来たひよりたちが、落神の末裔を名乗る一族を巡る連続殺人事件に巻き込まれる、といった筋立てです」
「ほほう。それは、面白そうです」
リッカルドが、軽く身を乗り出してうなずく。
「それで、撮影は町内のどのあたりで行う予定ですかな?」
「落神神社はもちろんですが、寝子島神社と参道商店街、それに寝子島高校といったあたりを予定しています」
石橋の答えに、リッカルドは大きくうなずいた。
「なるほど、わかりました。そのドラマが放送されれば、寝子島町のアピールにもなります。町としては、ぜひ、協力させていただきましょう」
「ありがとうございます。……撮影は、来週の月曜から三泊四日の日程で行う予定になっています。つきましては、地元の方々に、エキストラ、あるいは現地スタッフとして参加していただければと思っております」
石橋の言葉に、リッカルドは再度うなずく。
「わかりました。そのあたりは、町のホームページにて告知、募集するとしましょう」
「よろしくお願いします」
言って、石橋が立ち上がった。リッカルドも立ち上がり、二人の男は固い握手を交わしたのだった。
そして、翌週の月曜日。
寝子島に、『落神伝説殺人事件』の撮影隊がやって来た――。
こんにちわ。マスターの織人文です。
今回は、寝子島にサスペンスドラマの撮影隊がやって来たという内容のシナリオです。
町役場のサイトでは、以下の二つが募集されています。
1)エキストラ
落神伝説を再現したシーンで、古代の島民に扮して出演していただきます。
なお、参加者には『木曜サスペンス劇場』オリジナルグッズをプレゼント。
また、オンエアー前の初号試写に、ご招待いたします。
2)アルバイト
撮影の現地スタッフとして、お手伝いをお願いします。
時給1500円。委細面談の上。
なお、オンエアー前の初号試写にもスタッフとして、参加可能です。
これらは、町役場のサイトから応募できます。
◆以下は、PL様向けの情報です。◆
上記の二つ以外に、見物人として参加していただくことも、可能です。
偶然、撮影している所に通りかかったなど、シチュエーションは自由に設定して下さい。
また、アルバイトの方も、二日目のみ、四日間通してなどの指定をしていただいてOKです。
◆撮影隊関連情報◆
石橋康則 関映のプロデューサー。
島崎竜也 ドラマの監督。
井之頭晃司 カメラマン。
栗原ひより 鳴神ひより役の女優。かわいい系。二十代前半。
柳瀬良治 西脇数馬役の俳優。イケメン。特撮ヒーロー役でデビューした。二十代後半。
それでは、皆様の参加を、心よりお待ちしています。