お腹空いたな……などと思いつつ、寝子高一年で桜花寮生の津島 琴美は、食堂へと一歩足を踏み入れた。その途端。
「心霊現象なんて、そんな非科学的なもの、あるわけないでしょ!」
室内に響いた大声に、思わず足を止める。声のした方を見れば、そこには背丈も顔立ちもそっくりな双子、花村 あかりと花村 ほのかがテーブルに座して向かい合い、睨み合っていた。
「ないとは限らないでしょ。そもそもじゃあ、人間の肉体を動かしているのは、なんなのよ! 魂があるから、人も動物も動いているんじゃないの?」
最初の怒声はあかり、あとのがほのかである。
「バカじゃないの? だったら、炊飯器や掃除機に、魂があるの? パソコンやスマホにも? 動いているのは、電気が通っているからよ」
ほのかの抗弁に、あかりも負けずに言い返す。
そのやりとりに、琴美は小さく溜息をついた。
「二人とも、またやってるの? ……いい加減にして、仲良くお昼食べようよ」
彼女たちの方へと歩み寄り、琴美が仲裁のつもりで口を挟む。
「そうはいかないわ。今日こそは、決着をつけないと」
「そうよ。……科学的に証明できることだけが、この世の全てじゃないわ。だいたい、この地球のことにしろ、私たち人間のことにしろ、まだ解明されていないことの方が多いのよ。なのに、『今の』科学で証明できないからって、ないと決めつける方がおかしいわ!」
「なんですって!」
互いに叫ぶなり、再び双子はものすごい形相で睨み合う。
「いえ、だから……」
琴美は仲裁の言葉を口にしかけて、再び溜息をついた。
この双子、同じ寝子高に通い、この桜花寮でも同じ部屋だというのに、今一つ仲がよくない――というか、正反対の考え方を持っているのだ。
あかりの方は、絶対的な科学の信奉者で、心霊や超常現象などあり得ないと考えている。フィクションのドラマやアニメでさえ、科学的根拠のない内容のものは、「子供だまし」とバカにするような少女である。
一方ほのかはオカルト大好き少女で、雑誌の占いコーナーは欠かさずチェックし、オカルト系の雑誌も月に何冊か買っては読んでいる。だけでなく、各国の神話や魔法、まじないなどを中心に、民俗学にも強い興味と知識を持っていた。
琴美はこの二人とは、中学のころからの友人だった。なので、こういう状況はしょっちゅう目にしているわけだが――。
しばし考え、ふと思いついて琴美は言った。
「なら、実験をしてみたらどうかしら」
「実験?」
二人が見事にハモりながら、彼女の方をふり返る。
「そう。実験をするの」
うなずいて、琴美は言った。
「百物語ってあるじゃない? 何人かで集まって怪談をして、一人が話し終わると、ろうそくの火を吹き消して行くっていうの。あれって、全員が話し終わって、真っ暗になったら、なんらかの心霊現象が起こるって言われているわけでしょ。それが本当かどうか、やってみるのよ」
「なるほど。それで、何も起こらなければ霊なんて存在しないっていう証明になるわね」
考え込みつつうなずいたのは、あかりだ。
「いいわ、受けて立とうじゃないの」
ほのかもうなずく。
「そのかわり、何か起こったら、その時は霊魂はあるって認めてちょうだい」
「何か起こればね」
あかりは相変わらず、バカにしたようにほのかを見やって、せせら笑う。
再び二人は顔を突き合わせて睨み合い、琴美は深い溜息をつくのだった――。
こんにちわ、織人文です。
暑い日々が続くと、涼しさが恋しくなる――というわけで、百物語はどうだろうかと考えてみました。
【開催場所】
寝子高、南校舎1階の教室
【参加資格】
誰でも可。
小学生の方は、高校生以上の誰かが責任を持って面倒を見ますので、ご安心下さい。
【用意するもの】
怖いお話を一つ。(ご自分の体験談でなくてもかまいません)
◆怪談会を催す目的は目的として、用意するお話は「怖い」ものならなんでも可です。参加者がぞっとして、涼しくなるようなものということで、お願いします。
◆なお、小説やドラマ・アニメなどで読んだ・見たお話は、ご遠慮下さい。
◆もちろん、お話以外のアクション(他の方の話を聞いている時の様子、何か飲んでいる、友達を驚かせようとしているなど)は、ご自由にどうぞ。
◆また、怪談会は一般的な百物語の手順で行いますが、ろっこんの使用は不可とさせていただきます。ご了承下さい。
以下、NPCデータです。
●津島 琴美(16歳)
寝子高1年4組、普通科。桜花寮住まい。
寝子島生まれの寝子島育ち。寮生活に憧れて、高校入学と同時に寮に入る。
●花村 あかり(16歳)
寝子高1年4組、普通科。桜花寮住まい。
科学の信奉者。心霊やオカルトを、非科学的とバカにする。
●花村 ほのか(16歳)
寝子高1年5組、普通科。桜花寮住まい。
あかりの双子の妹。オカルト大好き少女。
それでは、みなさまの参加を、心よりお待ちしています。