夏の鮮やかな夕陽に照らされた、シーサイドタウンの通り。
その通りを歩く人々の中に、二人の女子高校生がいた。
彼女らがする会話は、いつも通り他愛のないもの。勉強のこと、部活のこと、友人のこと。そんなごく普通の、そしてどこか青臭い話をしながら、二人はゆっくりと道を歩く。
しかしやがて、片方の少女の言葉をきっかけに会話の内容が普段とは少し違うものになり……。
「あっ、そういえばさ、マヨイカって知ってる?」
「マヨイカ? 何それ? マヨネーズつけたイカ?」
「違うよ。このあいだ友達に聞いたんだけど、最近流行ってる都市伝説なんだって。誰もいない家の中に迷い込んじゃう話」
「……それ、マヨイカじゃなくってマヨイガじゃないの? 『迷い家』って書いて、マヨイガ」
「あっ、そうそう、マヨイガ」
「それなら最近どころか、かなり昔からある話じゃない」
「えっ、そうなの?」
「東北あたりに伝わる民間伝承よ。山奥に無人の家があって、そこから物を持ち出すと幸運が訪れるって話。たしか、そうとう昔に書かれた本に出てくる話よ」
「山奥? 私が聞いた話だと、夢の中だったけど」
「夢の中?」
「うん。その友達が言うには、夜寝てたら、見知らぬ古い家にいる夢を見るんだって。その家には誰もいなくて、それなのに家具とか装飾品とか色々な物が置かれてる。そしてその中には、自分がずっと欲しかった物があるの。目が覚めるまでにそれを見つけることができると、夢から覚めた時に枕元にそれが置かれてるんだって」
「何それ。サンタクロースじゃあるまいし」
「だけど、友達の友達がその夢を見て、本当に欲しい物を手に入れたんだって。ずっと欲しいって思ってた限定物のブランドバッグ」
「古い家にブランドバッグって……。それに友達の友達とか、嘘つく時の常套句じゃない。馬鹿馬鹿しい」
「でもさ、最近おかしなことが起こるって話よく聞くよ。もしかしたら、その夢もその一つなのかもしれない。ねえねえ、もしその家に行けたら何が欲しい?」
「さあ、ね。起きたあと、朝御飯に食べるためのパンあたりがいいかしらね」
「えー、そんなのつまんないよ。だって欲しい物がなんでも手に入るんだよ。普通じゃもらえない物じゃないともったいないよ」
「見つけられたらの話でしょ。そういうあんたは何が欲しいのよ?」
「うーんとね。服とかアクセサリーもいいけど、やっぱり素敵な彼氏かなあ」
「……物じゃないじゃない。それに無人の家なんだから、人は見つけられないでしょ」
「うーん……それもそっか。あっ、じゃあさ、一緒に夢に迷い込んだ人と手を取り合って家を探検してるうちに……って展開はどうかな? 夢の中で自己紹介とかしてれば、目覚めたあとに現実でも会えるし。それで仲良くなって、いつか恋人になるの」
「そんな都合のいいことがあるわけないでしょ」
「えーでも素敵じゃない? 夢で心を通わせて、それをもとに現実で結ばれるなんて、超ロマンチック」
「まったく、あんたは相変わらずの夢見る乙女ね」
「あっ、今うまいこと言った」
夕方の道に、あはは、という楽しげな笑い声が響く。
笑う少女たちの頭上では、相変わらず夕焼けが鮮やかに空を染めていた。しかしもうすぐ、この空も色を失う。暗い夜がきて、眠りの時間がやってくる。
そして眠りについた人々を覆うのは、様々な形の夢……。
こんにちは、北見直弥です。
とてつもなく久しぶりなシナリオになりますが、よろしくお願いします。
舞台となるのは夢の中、古い日本家屋の屋敷です。屋敷はとても広く、玄関、客間、台所、書庫、着物の間、人形の間、座敷牢、地下室、屋根裏など様々な部屋があります。
その屋敷の中にあなたは迷い込んでしまいます。そのうえで、自由にお好きな行動をお取りください(屋敷のどこで目覚めるかも自由。指定がなければこちらで決めます)。
人を探すもよし、勇んで探検するもよし、欲しい物を手に入れるために奔走するもよし、置かれていた甲冑で侍ごっこをするもよし。
また、夢と認識した上で探索するのも、していなくてただウロウロするのもどちらでも構いません。当然、屋敷の噂を知っている知っていないも自由です。
その上で、欲しい物をうまく手に入れられるかどうかは、本人の探し方と情熱しだいです。
ただ制限として、架空の物、危険物、あまりにも高価な物、生き物、 版権の関係で出すのが難しい物(実際の芸能人やキャラクター、商品名が入った物など)、その他シナリオおよび『らっかみ!』の世界設定的に合わない物は獲得不可とさせていただきます。制限が多く、なおかつ少し曖昧で申し訳ありませんが、なにとぞご了承ください。
ちなみに、夢の中での記憶は目覚めても失われません。なのでうまく人と出会うことができれば、親密な関係になれるきっかけを得られるかもしれません。
なお、基本的に私のシナリオでは三人称主観視点でキャラクターを描写していきます。
詳しくはゲームマスターページに書いておりますが(担当ゲームマスターの項目の私の名前をクリックすればページに飛べます)、キャラクターの主観視点で場面を描いて、随時視点変更しながら進めていくというものになります。
この書き方ではキャラクターの内面を深く描写することになるので、アクションにはキャラクターの性格把握の助けになることを書いていただければ助かります(できる限りで構いません)。
それ以外にもキャラクターが何をしたいか、こいつは、この子はこういうキャラクターなんだというものを思うままに書いていただければと思います。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。