寝子島の昼下がり。
詠坂 紫蓮は同じ桜花寮の生徒、麦田 小豆(むぎた あずき)と一緒に、ソフトクリームを食べながら炎天下を歩いていた。
「今日は暑いわね」
「あっついですよねー! でも、こんなときだからこそアイスがおいしいんですよ?」
満面の笑顔で口を開けた小豆だったが、一口目を頬ばろうとしたとき、暑さのあまり溶け出したソフトクリームが地面にべちゃりと落ちてしまった。
「あっ!!」
ショックのあまり、ぽろぽろと涙をこぼす小豆を見て、紫蓮は慌てて自分の持っていたソフトクリームを差し出した。
「泣かないで、これ食べていいのよ!」
「あっありがと……ございまっ、すぅ~!」
小豆は慌てて涙を拭うと、紫蓮のソフトクリームを一口舐めた。
「おいし~ですねっ。ありがとうございます、紫蓮さん! ……あれれ?」
「どうしたの? 麦田さん」
くんくんと鼻を鳴らして、小豆が紫蓮に顔を寄せた。
「なんだか紫蓮さん、とっても甘~い、いい香りがしますよ~!」
「え、そう? ……あら、麦田さんこそ、甘い香りがするわ。ソフトクリームの香りかしら」
「う~ん、でも、今食べたのとは違う香りですよね? んーと、これは~……」
香りの元を探す小豆の鼻の先端が、紫蓮の頬にくっついた。
「うひゃ!?」
慌てて離れた小豆が、紫蓮の頬に手を伸ばす。
「え? どうしたの!?」
「冷たい! 冷たいですよ、紫蓮さんのほっぺた!!」
「冷たいはずないわよ、こんなに暑いんだもの」
「冷たいですってば! すっごく!」
いぶかしげに紫蓮は自分の頬と小豆の頬を触り比べて、目を丸くした。
「……驚いたわ、本当に冷たいわね。私の頬も、麦田さんの頬も冷たいわ。どうなっているのかしら」
「わあ、びっくりですね~! けど、冷たくて気持ちいーですね、アイスみたいですよー!」
紫蓮の頬にぺたぺたと触れていた小豆は、すぐにはっとして、ソフトクリームを紫蓮に返した。
「大変! 紫蓮さんのアイスが溶けちゃいます! 私、新しいの買ってきますねっ!」
「……ええ」
紫蓮に手を振ると、小豆は新しいソフトクリームを求めて、駆け出した。
夏です。暑いです。こんにちは。
今回は、ほっぺで納涼シナリオです。
ガイド本文にて、頬がアイスクリームのように冷たくなっていますが、それだけではありません。
味も、イチゴミルク味になっています。
甘い匂いもします。
シナリオ参加者は全員、頬が冷たく、味付きになっています。
ただし、普通に過ごしていて気づくのは、匂いだけです。
触れてみない限り、頬が冷たいと気づいたり、異常を感じることはありません。
味を感じるのも、直接舐めたときだけです。
偶然自分で触れてみたり、誰かと触れあうことで気づくことになるのではないでしょうか。
ご自由にほっぺで涼をとってください。
もちろん、気づかないまま暑さに参っちゃってもOKです。
頬が変質する原因は不明です。神魂の影響だと思われます。
原因の究明は行いません。日没の頃、勝手に元に戻ります。
頬が変質するのは、人間だけです。
誰もが、誰かに触れられる危険性をはらんでいますので、
触れられたくない! 自分のほっぺは自分だけのものだ!
という方は、アクションに明記なさってください。
あと、誰かの頬を舐めちゃうのは、GA推奨です。
(舐めても、本物のアイスのように溶けたりはしません、もちろん!)
場所は寝子島全域。アクションにて、場所を明記してください。
時間は暑い盛りの正午から日没まで。
夏休み中の平日の午後です。
予期せぬ交流をお望みの方は、場所や時間帯は明記せず、こちらにお任せください。
ガイドに出ていた小豆は、「お菓子が食べたい!」シナリオに登場していた高校生です。
悲しみにうちひしがれると、涙が止まらなくなってしまうろっこんを持っています。
この日はシーサイドタウン駅近辺でアイスの食べ歩きをしていますが、アクションでご指名のあった場合のみ、リアクションで描写されます。
また、小豆以外のNPCは登場しません。
それではよろしくお願いいたします。