7月も終盤に入っている。
寝子島高等学校の講堂では、第1学期終業式がしめやかに執り行われていた。
「あの人、誰だっけ?」と誰かの囁き声の中、教頭・
黒崎 俊介が開式の辞を終えると、校長・
雨宮 草太郎が壇上に上がり、いつものように長い話を始める。
「チャ……コホン。皆さん、おはようございます。月日が経つのは本当に早いもので、つい先日、桜舞う我が校の門を潜り、希望に瞳を輝かせた新入生の皆さんをお迎えしたばかりと思いきや、第1学期もとうとう本日で終業となります……さて、この1学期を振り返ってみて、皆さんいかがだったでしょうか。勉強に打ち込んだ人、部活動で汗を流した人、生徒会に参加した人もいるでしょう。新しく出来た友達、先輩や後輩とたくさんの思い出…………で、あるからして…………であっていただきたい、そう思います…………さて本日終業式を迎え、これから長い夏休みに…………哲学者シトラス・ガムダンは言いました、終わらせる事こそが次への始まりだと…………友達と花火をする機会などもあると思います。花火は人に向けて撃ってはいけません。あー……世界的に見ても日本人ほど、花火に親しんでいる国民は他に類を……例えば……海外では花火の購入自体が制限されている国もあり、一般市民も花火の購入が許可されるニューイヤーには、正しい花火への知識が広まっていないばかりに、互いに向けて花火を撃って新年早々眼科に駆け込む人も…………例え夏休みの間、本校の制服を脱いでも、皆さんには節度を保ち…………であっていただきたい、そう思います。さて、そんなワケであるからして…………哲学者シトラス・ガムダンは言いました、終わらせる事こそが次への始まりだと――」
……長い。
何も無い、普通の終業式。
耐え難い退屈の中、らっかみ
野々 ののこは舟をこいでいた。
シトラス・ガムダンはもういいから、頼む、誰か校長の話を終わらせてくれ。
ずっと校長のターン。
これじゃあ、いつまで経っても僕らの夏休みが始まらない――!
「あれ、校長また同じ話してない?」
何人かが、顔を上げた。
「校長の話がループすんのは、いつもの事だろ」
上級生のほとんどは、諦め顔だ。
\ 哲学者シトラス・ガムダンは言いました、終わらせる事こそが次への始まりだと /
「いや、でも……」
――いくらなんでも、同じ話が続きすぎじゃないか?
生徒達がざわめき始めた時、頭の中にあの声が響いてきた。
ののこに仕える従属神、らっかみ
テオドロス・バルツァ。
『よお、てめえら。また厄介な事になってるみてえだな。どうやら神魂の影響で、あのハゲ頭の校長の長話がループして、時間が前に進まなくなってるみたいだぜ?』
――な・なんだってー!?
『まあ、そう慌てるな。収拾をつけるには、誰かが あのハゲ頭に、タッチしてくりゃ、それでいい。簡単だろ?』
――簡単に言うな! 終業式の校長の話の真っ最中に、誰がんな事すんだよ!?
鬼のクマ公だって、にらみをきかせてるんだぞ!?
……とは言え、確かに誰かがやらなきゃ、始まらないよなぁ……。
誰が行く?
もれいび生徒達が腹の探りあいを始めた時、鼻に付くあの声が聞こえてきた。
『キャハハ、なにこれぇ~笑えるぅ~』
カラスの姿をした、らっかみ。テオとは犬猿の仲の、クローネである。
『クローネ!! てめえ、何しに来たんだよ』
『あ~ら、ご挨拶ねぇ。テオくんや皆がつまんなそーな顔しちゃってるからぁ~? あたしが面白くしてアゲよぉと思って~♪』
皆が目をむく中、乱入してきたクローネは、さっと羽を広げると校長の真後ろの緞帳に黒い羽根を突き立てた。
次の瞬間。
校長の頭部が光り輝き、誰一人まともに目を開けていられなくなった。
「う、うわぁ眩しい!?」
「何も見えないよぉ~」
『クローネ、てめえ何しやがる! くっそぉ~……』
そして、世界は切り分けられた。
眩しさに混乱する生徒達に向かって、テオは言う。
『おい、クローネは俺がどうにかする。てめえらがやる事は、さっき言ったとおりだ……あのハゲ頭に誰か一人でもいいから、タッチしてこい!』
『やぁだ、テオくんカッコつけちゃってぇ~。あたしを捕まえられるものなら、捕まえて御覧なさいよぉ♪』
追いかけっこをしながら、らっかみ達はさっさと講堂を後にした。
校長の頭部は変わらず耐え難い輝きを放ち、長話は相変わらずループしている。
\ 哲学者シトラス・ガムダンは言いました、終わらせる事こそが次への始まりだと /
やるしかない。楽しい夏休みを始めるために、この長話を終わらせる “勇者” になるんだ――!!
メシータです。
いよいよ1学期も終了というタイミングで、面倒な事件が起きました。
校長の長い話が、神魂の影響で、ループ地獄にハマってしまったのです!
このままでは時間が進まず、夏休みを迎えられません。
止めるには、終業式に壇上で話をする校長の、視界を奪うほど猛烈な勢いで光り輝くハゲ頭に、タッチして来なければなりません!
楽しい夏休みを迎えるために、皆で協力して、解決しましょう。
■終業式の流れ(予定)
・教頭による開式の辞
・校長の話 ←今ココ!
・希望者(生徒PC)によるスピーチ
・校歌斉唱
・教頭による閉式の辞
問題解決後の生徒によるスピーチでは、1学期に達成出来た事、思い出、2学期の抱負などを代表者に語って頂きます(どれか一つだけでも、全部でも構いません)。
立候補した、他薦された事にする、どちらでもOKです。希望者を募集しておりますので、奮ってご参加くださいね。
(アクションで他人を推薦する事は出来ません)
尚、神魂騒ぎに巻き込まれたくない人は、切り分けられた世界に行かなかったという事にも出来ます。
その場合は、基本世界に残るという事を、アクションに分かりやすくご記入ください。
■基本世界
基本世界では、別世界で問題解決にどんなに時間が掛かっても、一瞬です。
居眠りしている ののこや、校長以外の教師は、基本世界に残っています。
終業式の流れを参考に、アクションに自由にお書きください。
【例】隣の人とお喋り、ウトウトする、1学期の事を振り返るetc……。
ミッションに失敗してハゲ頭にタッチできなかった場合は、
校長の話の後のアクションは全て不採用となり、描写もありません。
■別世界(テオによって切り分けられた世界)
校長が、エンドレスに話し続けています。
眩しくて、ほとんど見えません。周囲は他の生徒で一杯なため、互いが邪魔でうまく進めません。
テオが慌てて切り分けたため、以下のような問題が発生しています。
・遠ざかる壇上。時間経過と共に、壇上が遠ざかっていきます。
・スピーカーの位置が不自然で、校長の声が全方向から聞こえます。
・イスがひとりでに動いています。
・エアコンが暖房運転に変わっています。
・他にも予期せぬトラブルが発生する可能性あり。
誰かが校長の頭にタッチすると、テオの ろっこんが自動的に解除され、基本世界に戻ります。勇者は校長の頭を叩いた直後を目撃され、即座に壇上から引き摺り下ろされ、クマに連行されます。
尚、テオはクローネを追いかけて、すでに講堂を出ているので、関わる事は出来ません。
皆さんは、校長のハゲ頭にタッチして話を止める事に集中してください。
ちなみに講堂は、2階にも席があります。
スタート時、1,2年生が1階に、3年生は2階席に居ます。
テスト時にあった長テーブルは、邪魔なので今は片付けられています。
エアコンは2階席の更に上に設置されています。
スピーカーは1階、2階全てに存在しています。
【PL情報】
校長の話がエンドレスになった原因は、校長が朝食べたハムエッグに宿った神魂のせいです。
校長の頭部が光っているのは、後ろの緞帳に宿った神魂のせいです。
(ハゲた人物が傍に立つと頭部を輝かせる効果を、クローネが暴走させて強化しています)
誰も校長の頭にタッチ出来なかった場合は、夏休みはやって来ません。
当シナリオ後、夏休みシナリオで何が起こっても、皆さんの気のせいとして処理され、後日おかわりシナリオで解決されるまでは、時間は進みません。
それでは、今回も張りきって参りましょう。