歩いている。
どこを目指しているのかはわからないが、とにかく歩いている。
湿り気を含んだ土の感触が、ブーツの裏から伝わってくる。粘土をこねているときの、あの感じにちょっと似ている。
呉井 陽太は、ふと我に返った。
──ここ……どこだっけ?
見上げれば、空は淡い水色。雲は綿毛のような形をしていて、音もなく風に流されてゆく。行く手に見える街並みは、すべて焼き物でできているようだった。家も橋も街灯も、釉薬の光沢を帯びて、やわらかく輝いていた。
懐かしい、と陽太は思った。
まったく初めての場所なのに、それも絵本みたいにファンタジックなところなのに、以前にも訪れたことがあるような気がする。
ハンチング帽を押さえ、眼鏡越しに周囲を見渡す。
わかった。
口元がゆるんだ。
これ、夢かぁ。
「しかも、かなりご機嫌なやつだねぃ」
声に出してみる。口笛のひとつでも吹きたいところだ。
夢だとわかっているのに、まだ覚める気配がない。こんな夢なら、もう少し浸っていてもいいだろう。
陽太は街へ足を踏み入れた。
通り過ぎる人々が、声をかけたり、手を上げて挨拶したりする。どうやら陽太はこの界隈では、ちょっとした有名人らしい。反応はどれも好意的で、少しくすぐったいが悪い気はしなかった。
ところが。
陶器の路地裏から、甲高い警鐘が鳴り響いた。
「んー?」
がしゃん、と大きな音を立て、陽太の背後に何かが落ちた。
ブリキの……人形?
バッキンガム宮殿の近衛兵のような姿をした、三頭身ほどのコミカルな人形だ。ただし背丈は陽太よりはるかに大きく、丸い目は赤く輝いている。あまり愉快な相手ではなさそうだ。
「オ尋ネ者、ハッケン!」
兵隊は叫ぶと、右手の警棒を振り上げた。
「お尋ね者って、やっぱオレのことですかねぃ?」
どうやらその通りらしい。
「逮捕セヨ! 逮捕セヨ!」
兵はドタバタと駆けてくる。短足なので速くはないが、なんといっても勢いがすごい。地面がぐらぐら揺れるほどだ。
「こりゃご挨拶がすぎるわー!」
陽太は即座に身をひるがえした。走るのは得意だ。あっという間に距離を開ける……が、一難去ってまた一難!
空気をつんざくような甲高い音。ブリキ兵が警笛を吹いたのだ。
がしゃん、がしゃん、がしゃしゃん。
同じ姿の兵が目の前に、それから右に、ついでに左に、次々と落ちてきた。もちろんそろって、陽太目指し迫ってくるではないか
「人気者はツラいねぇ!」
陽太は走った。
兵の間をすり抜けブロック塀によじ登る。のばされた警棒を蹴って宙を返り、ひらりと陶器の屋根へ飛び乗った。
足をすべらせ、思わず声が出る。よく磨かれた屋根はつるつるで、おまけに朝露に濡れていた。
「ひゃー、屋根職人さん、いい仕事してるわー!」
冗談めかして言いながらも、陽太の動きに迷いはない。
屋根から屋根へと飛び移る。低いところは一足で、間隔が広い場所では助走をつけて跳ぶ。看板を踏み台にし、ランプシェードをつかんで振り子のように身体を投げ出す。
ブリキ兵たちも屋根に上がって追ってくるが動きはぎこちない。重たい金属の脚では、細かな調整がきかないようだ。
「ははは、ご苦労さんですよぅ」
帽子を振って一礼した。
そのとき、陽太は、ひとつの窓に気づいた。
……そうだ。
なぜだか、ここに来れば会える気がしていた。
夢の話ゆえ理解は一瞬、両開きの大きな窓へむかって、陽太は身を躍らせる。
ガラスが砕け散るかと思ったが、さにあらず。
窓は内側から、迎えるようにさっと開いた。
ふかふかの絨毯の上に転がり込み、勢いを殺して陽太は立ち上がる。
花の香りがした。ひろい部屋にあるのは天蓋つきのレースのベッド、白い家具におおきな鏡、それと、彼女の姿。
陽太はさっと帽子をとって一礼する。
「待った?」
「ううん、時間ぴったり」
にこっと笑って、彼女は言う。
さあ、デートに行こう。
彼女の顔は──。
「む……」
なんたること!
ここで陽太は目を覚ましてしまった。
視界いっぱいに広がるのは、明け方の薄明かりを浴びた自室の天井だ。
こっからがいいとこじゃないのかなぁ……。
陽太はぎゅっと目を閉じて、あの夢のつづきを、なんとか呼び戻そうとする。
◇ ◇ ◇
走ろう! 飛躍の年だから!
目の前にぶらさがったニンジンも、駆け出した拍子にがぶりとかじりつける! それでパワーアップして圧倒的独走! そんなウマい話が平然と起きちゃうが、おなじみ『らっかみ!』夢絵巻!
聞かせてほしい。待ってるよ。
今宵あなたが見た夢の話を。
あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします。マスターの桂木京介です。
やってきました走る年が! 今年も新春シナリオを担当します。
あなたのウマいお話を物語にさせてください。
ともに颯爽とまたがって、今年のスタートダッシュを決めませんか?
呉井 陽太さん、ガイドへのご登場ありがとうございました。
参加いただける場合はガイドのイメージにこだわらず、自由なイラストをご指定下さい。(もちろん、ガイドに描いた夢のつづきじゃなくたってウェルカムです)
概要
毎度おなじみ、イラストのイメージを元に、あなたの見る素敵な初夢を描くシナリオです。
参加方法は簡単、お好きなイラストをイラスト指定するだけ!
開けてみるまで何が飛び出すか分からない、まるで福袋のようなシナリオです。
さあさあ、素敵な初夢! 見てみませんか?
アクション
アクションを送信する際、「指定イラスト」に、以下のいずれかのイラストを登録してください。
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※必ず該当のXキャラクターの設定や必要情報を、【Xイラスト】キャラクター図鑑!に投稿してください
各アクション記入欄は、未入力だと投稿できないので、何か一言ご記入ください。
マスターへの激励、その他特に意味のない言葉など、何でも構いません。
※ご記入いただいた内容は、基本的にリアクションには反映されません。
複数人で同じイラストを指定する場合、GAを組むことで、
いっしょにリアクションで描写されることもできます。
※GA指定がない場合、個別描写となる可能性があります。
指定イラストに、シナリオに参加したPCさん(Aさん)とシナリオに参加していないPCさん(Bさん)が
いっしょに描かれている場合、Bさんは描かれず、Aさんのみにスポットライトがあたる描写となります。
この場合、イラストに描かれている場面・瞬間とは違うシーンがリアクションになるなど、
プレイヤーさんの想定している内容から外れてしまう可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
NPCについて
NPCとのイラストを指定することもできます。
特定のマスターが扱うNPCでなければ、基本的にはリアクションでも描写されます。
また、Xキャラクターも登場可能です。
※Xキャラだけで1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PCさん自身は描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
※Xキャラをご希望の場合は、口調などのキャラ設定をアクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
手綱を握りしめて、ご参加をお待ちしております!