しばらく雨が降り続いたあとの、久しぶりの快晴の日。
羽生 碧南は、自室の机周りを掃除していた。その手がふと止まったのは、机の隅に置かれた写真に目が行った時だった。
写真に写っているのは、彼女自身と恋人の
鷹取 洋二の二人だ。
それを見るなり、碧南はニヤケ顔になった。
(私と洋二さんが恋人同士になって初めてのバレンタイン……。まさかその時の私たちの姿が、写真に撮られてたなんて)
彼女は胸に呟き、笑み崩れたまま、思い出すように目を閉じた。
その写真を碧南が目にしたのは、6月に入ったころだったろうか。
休日、シーサイドタウンで洋二とデート中、今まであまり足を踏み入れたことのない小路の奥の、小さな写真店の店頭にそれが飾られているのを見つけたのだ。
「これって……」
「僕たちだねぇ……」
碧南と洋二は、二人して目を見張ったものだった。
服装と、二人の間に写っているチョコ系駄菓子の詰め合わせセットの内容から、それが彼らが恋人同士になって初めてのバレンタインの時のものだというのがわかった。
ただ、詰め合わせセットを渡したのはデートの時だったし、もちろん写真を撮った覚えも撮ってもらった覚えもない。なのに、どうして自分たちの写真が、こんな所に飾られているのだろうか。
驚きが去ると、碧南は首をかしげてしまった。
洋二も同じ思いだったのだろうか。
「碧南さん、写真のこと聞いてみないかい?」
「ええ」
洋二の言葉に、碧南もうなずいた。
店に入って行くと、店主は二人の姿に驚いた顔になったが、すぐに頭を下げた。
「写真のことですね。申し訳ありません。お二人がとても楽しそうで、つい撮ってしまったのです。その場で声をかけるつもりが、たまたま知人と会ってしまって、その応対をしている間に声をかけそびれてしまって……。悪いとは思ったのですが、こうして店頭に飾っていれば、もしかしたら人づてにでもお二人の耳に入るかもしれない……と、こうして飾らせていただいていました」
そして店主は奥から二人それぞれにプリントした写真を持って来て、手渡してくれたのだった。
更に店主は、店頭の写真ははずして廃棄することと、二人が希望するなら写真のデータも消すと言った。
それを聞いて、碧南は尋ねるように洋二を見やった。洋二が小さく笑って、肩をすくめる。
「僕は、そこまで望んでいないよ」
彼の言葉にうなずき返して、碧南は店主に視線を向けた。
「データは消さなくても大丈夫です。店頭のも廃棄まではしなくていいですが……はずしてはほしいです。なんだか恥ずかしいので」
少し赤くなって言ったあと、続ける。
「それと、こんな素敵な写真を、ありがとうございました」
「僕からも礼を言うよ。本当にありがとう」
洋二も彼女の隣で言った。
こうして碧南と洋二は、思いがけず、記念になるような写真を手に入れたのだった。
そしてそれ以来、碧南はついつい写真を見てはニマニマする日々を送っている。
ちなみに、写真は最初、フォトフレームに入れたものの机の引き出しにしまってあった。だが、しょっちゅう取り出して眺めるうちに、机の上に飾るようになった。ただ、あまり人目につく場所に飾るのも恥ずかしく、それで机の隅っこの方に置いてあるのだ。
もっとも、部屋を訪ねて来る友人たちには、とっくに写真は見つかっていて、「アツアツだね~」とか「写真撮るとか、可愛い奴め!」などとからかわれることも、多くなった。
碧南当人は、それが恥ずかしくもあり、うれしくもあり……で、思い出してはまたもや、ニマニマしてしまう日々なのだった。
こんにちわ。マスターの織人文です。
今回のシナリオは、『おかしなイラストキャンペーン』で権利を獲得された、羽生 碧南さまのイラストを元に考えたものです。
羽生 碧南さま、ガイドへの登場ありがとうございました。
こちらはあくまでもイメージですので、アクションはご自由にお書きください。
概要
時の流れは、ねこぴょんの日のあとです。が、特に季節などは定めません。
ねこぴょんの日の直後だったり、数年後だったり、また春だったり夏だったりと、ご自由にお楽しみください。
本シナリオのテーマは、「思い出の写真」です。
写真が撮られた経緯や、その日の出来事、あるいは写っている人やものに関する思い出など、写真にまつわるエピソードを語ってください。
◇小学生のころ仲良かった子と、一緒の写真だ!
アイス落として泣いてる俺に、自分のをくれたんだよな……。
◇初任給で初めて買ったバッグの写真よ!
懐かしいな。この色と形が気に入って、ずっと使ってたのよね。
◇これ、死んだおばあちゃんの写真だ!
私が初めて撮った写真。上手だって褒めてくれたっけ。
など、自由にアクションをどうぞ。
NPCについて
登録済みのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、基本的に誰でも登場可能です。
Xイラストのキャラクターを描写する場合、
PCとXキャラの2人あわせて「1人分」の描写なので、無関係の行動などはお控えください。
※Xキャラだけで1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PCさん自身は描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
※Xキャラをご希望の場合は、口調などのキャラ設定をアクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
以上です。
みなさまのご参加、心よりお待ちしています。