“迷子なう(涙)”
ねこったーにそう書き込んだ、
飯田 幸は方向音痴だ。
ただの散歩で、随分おかしな所に来てしまった。
犬のムクは大好きなお散歩が延長されて、喜んでいるが。
夜だし、早く帰りたいものだ。
砂と雑草を踏みしめながら、深い溜息をついた時、ピギャーと甲高い悲鳴がかすめた。
「え……? 豚?」
キョロキョロと見回すが、当然夜のシーサイドタウンに豚など、徘徊していようはずがない。
よくよく聞けば、豚の悲鳴に似た声に混じり、複数の男女の怒声が混じっていた。
そして悲鳴の主は、豚ではなく――子供だ!
「誰か、誰か助けてー!」
確かに、そう言っている。
助けを呼ぶ声の方へ、幸は走った。
そっと近寄って様子を伺えば、丸々と太った少年が暴れないように、三人のゴロツキが押さえつけている。
無理に少年の腕を伸ばさせて、何をしているのかと思えば、なんと女が握った刃物で少年の小指を切り落とそうとしているではないか。
「やめてー! 何でもするから、お願い切らないで!! パパー、ママー助けてー!!」
泣き叫ぶ少年の話など、ゴロツキは勿論聞いていない。
「キンキン、うっさい餓鬼だねぇ。
アタイらこれから、お前の親父に切った指を送りつけて、遊ぶ金欲しさに身代金を請求するんだから。
少しは静かにおし!」
「さっすがアネゴ! 説明的なセリフが超クールっすね!!」
「よっ、アネゴ! かっくいー!! シビレルー!!」
「あはっ、アタイにかかりゃざっとこんなもんだよ。お前達、もっと誉めてくれて構わないんだよ?」
何ということでしょう……!!
幸は驚愕した。
このままでは あのおつむの弱そうな連中に、いたいけな少年が小指をつめられて、心にも体にも消えない傷を負ってしまう。
一刻の猶予も無い。
意を決して、幸は前に踏み出すと、ゴロツキに向けて罵倒の言葉を吐き出した。
「ちょっとそこの貴方たち、バカでしょ!」
幸のろっこん<不幸体質>は、罵倒された対象に不運を呼ぶ。
「あぁッ? バカって言うほうがバカな……イデッ!!」
意表を突かれて顔をあげた手下のゴロツキが、手下仲間の鼻に頭を強打した。
「おまっ! 何すんだよ」
鼻血を出しながら、涙目のゴロツキ。
「お前こそ、よけろよ!」
頭を強打したゴロツキも、逆ギレしている。
「お待ち、お前達! まずは素数を数えて落ち着くんだよっ!」
「「素数って、何っすか? アネゴ」」
「そんな事……アタイが知るわけないだろう――!!」
ゴロツキがアホなやり取りで盛り上がっている隙に、大声で泣きながらも、少年は逃げ出した。
「こっちへ! 頑張って」
幸が少年の手を取って、走り出す。
「おい、逃げたぞ?」
「ははは、バッカだなー、そんなん見りゃ分かるだろ」
「こんのバカ共! 分かってるなら笑ってないで、さっさと追いかけるんだよ!!」
「あっ、そっかー」
ゴロツキが、逃げる二人と一匹を追う。
夜の追いかけっこが始まった。
僕を捕まえて御覧なさいよう♪ メシータです。
このシナリオは毎度バカバカしいコメディです、人死には出ません。
コメディです。大事な事なので2回言いました。
そういうノリでご参加くださいませ。
■場所・状況
シーサイドタウンの、寂しい松林です(地図E-11あたり)。
近場に人は住んでいません。
時間帯は平日の夜で、天候は晴れです。
PCの皆さんは、幸のねこったーでのつぶやきを見た(大まかな位置は、特定出来るものとします)、或いは偶然その場に居たなどなどの理由で、この事件に関わる事になります。
つぶやきからは、それなりに時間が経っており、寂しい松林までの移動時間について、考える必要はありません。
少年が誘拐されて居る事については、幸が少年を連れて逃げるのに手一杯で、まだ ねこったーに流していないため、現場に行かなければ、事情を把握する事が出来ません。
■登場NPC
・少年/丸田 真丸(まるた・しんまる)
塾が終わり、お迎えを待っている所を、身代金目的でゴロツキに誘拐されました。10歳の少年です。
見た目がとある家畜よろしく、丸々としています。重いので、力持ちさんじゃないと簡単には運べません。
(具体的な体重は比べて傷つく、おにゃのこが居るといけないので書きません)
足は遅いです。独特の声で泣き叫びながら逃げているため、近づけばすぐに居場所がわかります。
・ゴロツキA(自称:栄子)・B(備太)・C(志蔵)
Aがリーダー格で、BとCが手下です。
人として大事なものを失った悲しい大人達です、しかも清々しい程のバカです。
三人とも “ひと” なので、ろっこんの威力が状況に応じて制限されてしまいます。
Aのみ、果物ナイフを所持しています。扱う技術は、リンゴの皮とか剥けないくらいです。
Aは流し目セクシーおねえさん(男)です。Bはすばしっこく、Cは力持ちです。
・飯田 幸
寝子高生、もれいびです。
不幸体質という ろっこんを使用出来ますが、ゴロツキが全員 ひとなので、時々不発に終わるかも。
ペットとして座敷犬のムクを連れていますが、たまに吼えたり、威嚇する程度の役にしか立ちません。
以上、お気が向かれましたら、よろしくお願いします。