●寝子島に襲来!? 悪魔娘!
深夜の寝子島。暗い雲に覆われ、どんよりとした天気の日。
シーサイドタウンの路地裏。小さなその空間に突如として亀裂が走った。
亀裂は徐々に広がり、割れた空間の先に妙な空間が揺らめいている。
すると、その穴から黒いもやのようなものが飛び出し、ばきばきと空間の亀裂を広げていった。
黒いもやはどさりと地面へ落ちると、辛うじて人の形を取る。それぞれの境目が判別し辛い不安定な姿だ。
「いつつ、あーもうっなんなのよ! こんなに壁を超えるのが大変だなんて聞いてないっつーの!」
お尻をぱんぱんと手で払いながら、黒いもやは高い女性の声を響かせながら揺らめいている。
ふと自分の身体を黒いもやは眺めた。そして、数秒の沈黙。
「…………何よ、これぇええッ!? あたしの美しい身体が妙なもやもやにぃ!? はぁ!? 意味わかんないーーっ!」
ひとしきり騒いだ後、黒いもやは冷静さを取り戻す。騒いでいても仕方がない、彼女のやってきた目的は何も路地裏で騒ぐことではないのだ。
「はあはあ、息も苦しいし……ここってラーシュが存在しない世界なの? あり得ないでしょ、そんなの! くぅ、身体を保てないとか、この序列72位【ロマリス】の名が廃るってもんでしょ」
そうはいうものの、彼女がどう力んでも体の構成は上手くいかない。
しばらく奮闘したがついには諦め、とぼとぼとロマリスは歩き始めた。何もない路地裏にいても何の意味もないからだ。
「何か、使える何かが……あればいいんだけど」
悩みながらロマリスが歩いていると、小柄な男を囲う女性数人が視界に入ってきた。何やらもめている。
「アンタさぁ? ウチの胸見たっしょ? めちゃくちゃ気分悪いんだけどさぁ?」
「ひぃいいい! 見てない、見てないですよっ!」
「嘘言うんじゃねえよッ! その汚ねえ瞳でがっつり谷間見てただろうがぁ! 慰謝料寄越せよ、金持ってんだろ?」
壁の裏から様子を窺っているロマリスはにやりと笑う。その目は狩人のようだ。
(いい素材見っけ、あは、あたしってば運がいいわっ)
男をひっぱたこうと腕を上げた女性の首が宙を舞う。くるくると跳んだ首が床に落ちてごろごろと転がっていく。
何が起きたかわからないのか仲間の女性が狼狽えるうちに、ロマリスが女性たちの背後に接近していた。
「あははは、面白いことしてるねぇ? あたしも混ぜてよ」
「えっ、なっ、首がっ……きゃあああ――ぐげぇえっ!?」
女性が叫ぶとロマリスは黒いもやの腕を伸ばし、女性の胸を貫いた。がくりと絶命した女性が力なくうな垂れる。
最後の一人となったショートカットの女性が腰を抜かし、がたがたと震えながらロマリスを見上げていた。
「いやあぁあ、来ないでぇ! し、死にたくないぃっ!」
「そんなに怖がらなくたっていいじゃない。大丈夫、痛いのはぁ……一瞬だから」
身体を引きずって逃げようとした女性をロマリスは片足で踏んで動きを止めるとその首をへし折った。びくっと女性は痙攣し、動かなくなる。
その様子を見ていた男性は戦慄の表情を浮かべ、身動き一つできずにいた。
「さぁて、良い素材だし新鮮な内に使わないとだよね。それじゃ……よいしょっと」
体を重ねる様に、ぐっとロマリスは絶命している女性に覆い被さる。じわじわと黒いもやが侵食するように女性の身体へと浸透していく。びくびくと女性の身体は痙攣した。
しばらく震えた後、ゆらりと絶命したはずの女性が立ち上がった。俺て曲がった首をごきっと元に戻すと女性はにやっと笑う。
「やっぱ身体はこうじゃないとねぇ。中々フィット感もいいし、うんうん見立て通りの良素材よね」
女性の死体を乗っ取ったロマリスは体の具合を確かめる様に伸びをする。
そんなロマリスに男は問いかけた。その顔から少し恐怖の色は失せている。
「えっと、あの……た、助けてくれたってことかな?」
だが、男の期待をロマリスは容易く打ち砕く。
にやりと笑った彼女は男の両腕を掴み、壁に押し付けてその足を踏み砕いた。男が声をあげる前にロマリスはその口をキスで塞ぐ。ごくごくと“何か”を吸い上げていくロマリスに男は抵抗できないようだった。
口を離すと男の瞳から光が消え失せ、彼の眼は虚空を眺めている。
「ぷはっ、あんまり美味しくないけどぉ、ラーシュがないわけだしぃ、栄養は必要だよねぇ。それじゃ遠慮なく……いただきまぁすっ」
男に体を重ね合わせ、彼をロマリスは貪っていくのだった。
シーサイドタウンのある場所。
悪魔であるダストが“平和的に”経営しているマッサージ店。
今日もその営業時間が終わり、ダストは閉店準備をしていた。
「今日も忙しい日でしたねぇ。後は、お風呂入って、お夕飯を……ッ!」
背後から飛んできた殺気に気が付いたダストは、咄嗟にその場から左へ跳ぶ。直後、ダストの店先が派手に爆発した。
粉々に吹き飛んだ扉や壁の欠片が舞う中、ダストは手に赤い剣を出現させると剣先を此方へ歩いてくる人物……ロマリスへと向ける。
「随分な挨拶ですねぇ? 新手のファンか何かですかぁ?」
「いやさ、随分と“アイツ”に似たような匂いがするから来てみたんだけどぉ……アンタさぁ、何者?」
彼女の言葉を無視し、姿勢を低くしながら疾駆したダストは剣を振るってロマリスの首元を狙った。だがロマリスは金色のコインを大量に出現させるとそれを壁代わりにしてダストの攻撃を防ぐ。刃がコインの波に弾かれ、キィンっと甲高い音を鳴らした。
「質問に質問で返すのは感心しませんねぇ。答える気はない、ってことですかぁ!」
「はぁ? あたしがアンタ如きの質問に答えてやる義理ないし」
まるで生き物のように蠢いた大量のコインが弾け、その衝撃でダストを吹き飛ばす。コインが弾丸のようにダストを襲った。
ダストは吹き飛ばされながらも、何とか空中で体勢を立て直し着地する。
「はい、おしまいっと」
「――――ッ!?」
コインがロマリスの前で円形に回り次の瞬間、それぞれのコインが細いレーザーを放った。無数のレーザーがダストの身体を貫いた。
「がはっ、ぐぁ……」
口から血を吹き出し、ダストはその場に倒れる。身体に力が入らず、立ち上がる事すらできない。ダストはそのまま意識を失う。
深い溜息をついたロマリスはやれやれといった感じで肩をすくめた。
「これすら避けられないとか期待外れもいいとこじゃん。あーあ、興が冷めちゃった……ラーシュの匂いも感じたのに、全然見当たらないし。はぁ、帰ろっかな」
くるっと背を向けると興味を失ったのか、ロマリスは掻き消えるように去っていった。
ロマリスが去ってから数分。ダストは意識を取り戻し、立ち上がろうと試みた。だが損傷した体はいうことを聞かず、立ち上がることはできない。
「あはは、だめ、です、かあ……」
ぼやけるダストの視界に誰かが歩いてくるのが見える。それは【
八神 修】だった。彼はダストの様子を見る為にちょくちょく、ここを訪れている。まあ、また悪さをしていないかという確認でもあるのだが。
八神は血の海に倒れているダストを見つけると、急いで駆け寄って抱き起こす。
「おいっ!? 一体、何があったんだ!?」
「いやぁ、はは……見知らぬ敵に、後れを取って、ごふっ、しまったんですよぉ。それで、お願いを……聞いて欲しいんです。いい、ですか?」
口から血を零しながらダストは一生懸命に八神へ言葉を伝えていく。八神はその言葉を黙って聞いていた。
「えと、ですねぇ、店の地下に、大きな水槽がぁ、あるんです、よぉ。そこに、新しい、身体がありましてぇ、この体から移動しなくては、ならないんですけど、そこまで行けないので、運んでくれ、ますかぁ?」
「わかった、そこに連れて行けばいいんだな?」
ダストをお姫様抱っこすると、八神は店の地下へと降りていく。
地下に降りるとそこには巨大な水槽が鎮座していた。その中には緑色の水がたっぷり入っており、悪魔の角や羽、尻尾が生えている女性のようだ。
八神はダストの指示通り、水槽に接続された手術台のような場所へ彼女を寝かせる。
「あとはぁ、時間を……稼いでくださいねぇ? 移動して同化する際、に、ラーシュという強力な力を周囲にまいてしまうんですよぉ、恐らく、襲撃した相手は……そこを狙ってくるはず、ですからぁ」
「……ああ、守ればいいんだな? 全く、世話の焼ける奴だ、お前は」
かつて敵同士として戦った者が、こうして協力している。そんな状況ゆえか八神は笑みを浮かべた。
「何を、笑っているんです、かぁ? 面白いところなんてぇ、ない、ですよぉ」
「懲らしめられた後から、お前を見てきたが……悪さもせず、きちんと寝子島に馴染もうとしていた。そんな風に変わったダストを嬉しく思っただけさ」
そうですかぁ、とだけ言うとダストは目を閉じる。恐らく新しい身体との同化に集中するのだろう。
八神はダストをその場に残し、階段を上がって店の外へ出ると携帯で片っ端から連絡の付く相手に救援を求めた。
「これでよし。後はどんな相手が襲撃してくるか、だ。あのダストを追い込んだんだ、油断はできないな」
同時刻。寝子島のどこか。
「この感じ……あいつ、やっぱりラーシュ隠してたじゃない! もう、二度手間とか嫌いなんだけど!」
悪魔の羽を羽ばたかせ、ロマリスは作り出したシモベの一人を蹴り飛ばす。身体を構成するコインをばら撒きながら、シモベは吹き飛んで壁にぶつかり粉々になった。ばら撒かれたコインは別のシモベがせっせと片づけている。
シモベの一人を椅子にしていたロマリスは立ち上がると腕を振り上げる。
「さあ、お前たち! あいつの所に行くわよ! 根こそぎラーシュを奪って、あたしはもっと強くなるんだからぁ!」
初めての人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
今回は寝子島に謎の悪魔娘がやってきたようです。
人の生気を求めている彼女の目的とは……。
八神 修さんガイド登場ありがとうございます。
勿論、ガイド以外のアクションもOKです。
寝子島のフツウを守れるかは、皆様に掛かっております!
それではよろしくお願い致します!
※アブナイ目にあうのはアブナイルートを選択した希望者のみです。
希望がない限り、アブナイ目にあうことはありませんのでご安心ください。
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◆勝利条件
:ダストの防衛、敵の撃退
◆敗北条件
:ダストを奪われる、店の地下施設の破壊
◆敵の進行ルート
敵性存在である【ロマリス】はダストを狙ってダストのマッサージ店へやってきた。
店の周囲を囲むようにシモベを配置し、本人は正面入り口を目指して進行中。
目的は謎の粒子【ラーシュ】を求めてダスト、地下の施設を奪取しようとしている模様。
◆予想される敵
ロマリス
:魔階からやってきた72柱の悪魔の一人。
コインや金品を操る能力を持っている。
死体に憑依し、元の身体を再現する為に生気を求めているようだ。
完全な復活ではないが、その状態でも人間の数倍の力を持つ。
ラーシュという力を求めているらしい。
コインシモベ
:金色のコインで身体が構成された戦闘用のシモベ。
ゆっくりとした動きで襲い掛かってくるが力は強い。
衝撃にとても弱く、殴られただけで身体が崩れる程に脆い。
なお、身体が崩れるとただのコインに戻ってしまう。
札束シモベ
:札束で構成されたシモベ。
どこかの紙幣だが、この世界の物ではない。
紙製なのでよく燃える。
なお、このシモベは触れた相手から生気を奪う力を持っているので
囲まれればきっと“アブナイ”目にあってしまうことだろう。
◆予想されるルート
1:ダストを守るために店の入り口を守る
このルートでは新しい身体に同化中のダストを守る為、店の入り口を死守するルート。
ロマリスが店の入り口を突破しようと、コインシモベを引きつれて襲ってくるので注意。
2:コインシモベを減らす為に陽動作戦
このルートはロマリスに従う大量のコインシモベを減らす為に陽動作戦を行う。
コインシモベの知能は低く、大きな音に反応する模様。
3:【アブナイルート】遊撃隊として札束シモベを倒す
このルートは店の周囲に沸いて出る札束シモベを撃破するルート。
札束シモベは数を頼りに生気を奪おうと襲ってくるので、囲まれないように注意。
※このルートを選ぶとアブナイ目にあってしまいますので、ご注意ください。
◆レンタル武器
下記の中から一つだけ持っていくことが可能。
A:対悪魔用ショットガン
通常のショットガンをダストが改良した対悪魔用のショットガン。
銀製の銃弾に聖水が詰め込まれており、着弾と共に炸裂、相手に大ダメージを与える仕様。
散弾を撃つタイプで、至近距離で撃たなければ弾が散開しダメージは大幅に落ちる。
なお聖水は人間には無害。
扱いが不慣れな人向けにロックオン機能搭載。側面小型スラスターの活用で対象の方を
銃口が向いてくれる親切設計。
B:試製銀鋼高周波ブレード
ダストが戯れに実験し、生成した特殊合金【銀鋼】を使用したブレード。
軽く耐久性も高く、柄に仕込まれた仕組みにより高周波を発生して切れ味が増す。
欠点としては試製の為、稼働時間が短く、柄にあるトリガーによって高周波の
発生を管理しなければすぐに内臓バッテリーが尽きる。その際の切れ味は普通の刀程度。
C:電磁式ハンマー
とても軽い素材で作られた長い鎖の先に鉄球が付いたハンマー。当たった対象に電流が流れる。
誰でも軽々と振り回すことができる優れものだが、手元の操作ボタンの操作を間違うと、
自分まで感電する欠点がある。
D:バスト自在錠
錠剤型の身体強化薬で、飲めば数分間だけ身体能力を二倍に強化してくれる。
ただし、その代わりとして感覚が鋭敏となり、風の動きにも反応するぐらい身体がとても“敏感”になる。
副作用として、男性は女体化し巨乳になってしまう。副作用は一日続く。
女性のみの特徴として、二錠飲めば巨乳に、三錠飲めば貧乳になる。
付属の【紫色ミルク】を同時に飲むことで体形はロリ化するので、飲む飲まないで体形を選択可能。
◆登場キャラクター
ダスト
:かつて寝子島の民に戦いを挑んだ悪魔。現在では懲らしめられ、監視の下、平和に暮らしている。
シーサイドタウンでマッサージ店を営んでおり、人気は上々。
自分の姿が不定形だったために姿が決まっておらず、これまではツクヨという女性の身体を
コピーして色を変え使用していたが襲撃により、修復不可能なまでに損傷してしまった。
その為、今回はマッサージ店の報酬で収集した生気を使用し製作した新ボディへと
同化作業を進めている。