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秋も深まりつつある、ある日の放課後。
寝子島高校の特別教室棟は二階の隅の空き教室に、黄色い法被姿の人影があった。
ののこ様親衛隊、謎の親衛隊隊長――
愛猫 萌々子である。
がらんとした教室の片隅に座る今の彼女に、道行く人を親衛隊に勧誘していた頃のようなテンションはない。この姿の時は緩みがちだった表情は、むしろ普段のソレより大人しくさえある。
正体を隠すための黄色いマスクも、今は別の何かを隠すものとばかり見えた。
「……皆さん、今日はよく集まってくれました」
呼びかけた先は、彼女の携帯。そこには今、オンラインで集った同志たちが居る。
「親衛隊長のお呼びとあらば!」
「しかし、一体何があったんですか? 緊急のリモート会議だなんて」
「まさか、風紀委員による取締が……?」
風紀委員。
親衛隊の誰かが口にしたその単語に、ほんのつかのま萌々子の瞳が揺れた。
「隊長?」
我に返る。
小さく咳払いをし、画面の向こうの親衛隊メンバーに呼びかける。
「今日は皆さんに、大事な報告があるんです」
親衛隊長の時とは思えないほどに、こわばった声だった。画面の下に隠れた手は、いつの間にか固く握りしめられていた。
強い風が吹きつける寸前の空白のように、リモート会議の場が静まり返る。
仮面の奥の瞳を画面に釘付けにしたまま、萌々子は告げた。
「今日をもって、私は親衛隊長を引退します」
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同じ頃、普通教室棟から北へと伸びる渡り廊下。
首から提げたホイッスルを揺らして、
笛吹 ぴりりが足早に特別教室棟へと向かっていた。
「黄色い法被……間違いないのです!」
怪しい黄色い法被、すなわちののこ様親衛隊の目撃情報を耳にしたぴりりは息巻いていた。
今日こそは親衛隊を捕まえる。
被害が出ているわけではないが、奇妙な噂をいつまでも放置していれば風紀にかかわる。
割れ窓理論のようなものだ。例え本人たちが無害だとしても、その存在を許容すること自体が、害を招くかもしれない。
そうなる前に、取り締まらなければ。
そして、理由はもう一つ。
親衛隊の活動をつかめないことについて、風紀委員内に内通者が居るのではないかという噂があった。
そんなはずはないと、親衛隊を捕まえることで照明したかった。
だからぴりりは、特別教室棟へと向かう。
そこに居るのが、黄色い法被を纏ったただの不審生徒だと信じて。
愛猫 萌々子さん、大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
このたびはリクエストありがとうございます、プライベートシナリオのお届けです。
シナリオ概要
放課後の空き教室でひっそりと始まった、ののこ様親衛隊のリモート会議から始まります。
隊長の突然の宣言に親衛隊が騒然となる中、笛吹 ぴりりも現場近くへと向かっているようです。
会議をどう乗り切るのか、ぴりりとどう対峙するのか。
アクションにて、ご存分にぶつけて頂ければ幸いです。
なおアクションを書かれる際は、ガイドから諸々の状況を変えて頂いて問題ありません。
ご自身のされたいことを最優先にして頂ければと思います。
最後に
愛猫 萌々子さんの決意と思いを込めたアクション、心よりお待ちしています。