「鷺来先生、ちょっとお願い事があるんですけど……」
「ん? 何でも言っていいぞ」
生徒の誰かが、
鷺来 瑞毅に向けてちょっとしたお願い事をしてみた。
彼は生徒から気楽に話しかけてもらえたものだから、内容も聞かずに「いいよ」と返答してくれた。
まさか、それが彼にとっての地獄の始まりだなんて誰が想定しただろうか――。
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「いや肝試しとか一言も聞いてないんじゃが!!??」
そう。現在、瑞毅は肝試しに挑戦させられており、唐突に森の中を進むことになってしまった。
あろうことかオカルト嫌いの第一人者で
以前テレビ番組にまで出たほどの彼が、肝試し。
ちょっと生徒から話しかけられたのが嬉しかったので、ほいほいと気軽に請け負ったらまさかのオカルト案件。こんな不条理が許されてよいのだろうか。
「うう……。よりによって神社に向かえって、なんなんだよぅ……!!」
半分以上涙目な彼は手に渡されたランタンを片手に、寝子島高等学校の裏から伸びる落神神社に繋がる森の道を進む。
途中でルートが変えられて道なき道を歩いたが、それも参加者による肝試しの一興。
カサカサと風に揺れる木の葉が瑞毅の隣を通り抜けるだけで、彼は大いにビビっている。
それもそのはず。今回の肝試しのために辺りの明かりは全て消されており、今ある明かりは瑞毅の持つランタンと月明かりだけなのだから。
今日のお月様はとてもまんまるで、辺りをしっかりと照らせるほどに明るい。
だから彼は多少の怖さは低減出来るだろうと思っていたのだが、それでもやっぱり怖いものは怖い。
「頼むから……頼むから、俺をビビらせるのだけは来るんじゃねえぞ……頼むから……」
「マジで、今回変なこと起こったら、俺だけ(個人的に)夏休み延長とかあるんだからな……!!」
そんなことを適度に呟きながら、瑞毅は神社への道を目指す……。
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一方で、少し前の
肝試しの現場には複数人の生徒や町内会の人々が集まっていた。
その中には喫茶店『猫の宮』のマスターである猫乃宮ヤマトもいて、今回の諸々について説明してくれた。
というのも、今回の発端はヤマトが「そうだ、肝試し(を企画して瑞毅を驚かせる計画をついでに実行)しよう」と閃いたことがきっかけ。
夏場なのだし、肝試しをしない理由がないよね! ということで企画し、参加者を募ったところまではよかった。
そう、参加者を募ったまでは良かったのだが1つ、ヤマトにとって最大の誤算が出た。
――脅かし役が、足りぬ!!
「はいはーい、脅かし役の方はこちらから順路まで向かってくださいねー。どんな脅かしをするかここに記入して、定位置についてくださーい」
今回、肝試しの参加者は複数人いるが、脅かし役がどうにも少ないためこのように公募する形となった。
様々な仕掛けも準備しているが、脅かし役の少なさから起動しづらいものなどもあり、急遽公募形式をとったという。
どんな人でもいい。とにかく怪我をさせること無く脅かすことさえ出来れば、何をしてもいいそうだ。
そんな中、
吉住 獅百合と
吉住 志桜里の2人は通りすがりにこの肝試し会場に気づいて近づく。
最初は脅かされる側に回るのかと考えていたが、ところがどっこい、脅かし側に回っていいというのだから獅百合のほうが少し楽しそうな雰囲気を見せていた。
「えっ、これって飛び入り参加とか大丈夫ですか!?」
「はい、大丈夫ですよ~。脅かし役が足りなかったのですっごく助かるんです」
「でもこれ、道具とかの準備は……??」
「もう終わって配備してあるんで大丈夫ですよ。使いたい機材があれば、僕が追加で準備してきます」
「わ、そうなんですね。じゃあ、どうしようかな……」
悩むような声を出して、獅百合と志桜里は顔を見合わせる。
せっかく立ち寄ってみたのだから、参加するかどうかと悩み続いていた。
そんな2人に向けてヤマトはニコニコとした笑顔の中に翳りを見せて、少々不穏な雰囲気を見せて2人に告げる。
「少しでも楽しんでもらえれば、ええ、それだけで僕は十分です。……ええ、それだけでね」
クスクスと小さく笑うヤマト。薄ら寒い空気が2人の横を通り過ぎたような、そんな気がしていた。
夏の風物詩である肝試し。
何かが起こりそうで起こらなさそうな、そんな雰囲気の中で脅かし役は配置につく……。
お久しぶりです、御影イズミです。
夏、ということで肝試しです。
が、今回は参加する方ではなく「脅かし役」として皆さんにはお手伝いしていただきたいのです!
楽しく、そしてちょっと不気味な雰囲気の肝試しをぜひ盛り上げてください!
説明
現在、高校裏にある落神神社への道(地図でいうとF-8付近)で肝試しが行われております。
そんな中で肝試しに挑戦しているのは、オカルト大嫌いなNPC鷺来 瑞毅。
PCの皆さんの目的はずばり、彼を目一杯驚かせることになります。
また今回はヤマトもお手伝いとして参加するので、2人でやる必要がある脅かしに関して1名様でも無理なく出来るようになっています。
脅かし方について
基本的に傷つけない、やりすぎない程度であれば何をやっても瑞毅は驚きます。
多少は疑問に思ったりはするでしょうが、それでも死ぬほど嫌いなオカルトが散らばっているので完全に理解する前に逃げます。
以下は絶対に彼が驚く事象です。
・道具を使う
・木の葉を揺らす
・ちょっと前を通る
・尾行する
・何かが触れる
・その他、ここには書かれていないようなことがあれば。