それは何の変哲もない日のことだった。
いつものように、何の変哲もない日になるはずだった。
けれど、それは何の前触れもなく、何の伏線もなく、突然、寝子島を飲み込んでしまったのだ。
ふと、君が意識を取り戻した時、寝子島の様子は一変していた。
町は荒れに荒れ果て、空は不気味な色に染まり、まるでこの世の終わりのよう。
寝子島によく似ているけれど、何かが違う。なんだか別の島のような気がする。
けれど、君が何よりも驚いたのは、君自身を襲うもののことだった。
『ギュイイイイイイイーーーーン! ジャガジャガジャーン!!』
頭の奥でけたたましくヘビメタのギターが鳴り響いた。
その途端、身体がカッと熱くなり、メチャクチャ暴れたい気分になった。と言うか、暴れていた。
目の前の誰だかわからない人をボコボコにして、その辺の民家に石を投げまくる。
なにがなんだかわからないが、どうにも止まらない。
『チャーラーラーラーラー♪ チャララランラーン♪』
しばらくすると、音楽が変わってクラシックが流れ始めた。
今度は途端に穏やかな気持ちになって何をする気も起きなくなる。
ようやくまわりに目を向けられるようになって、辺りを見てみると、同じような人がたくさんいる。
頭の中に突然、流れてくる音楽に振り回され、皆とても戸惑っている。
何かがおかしい。こんなの普通じゃない。
きっとろっこんだ。誰かのろっこんの仕業に違いない。しかもとんでもなく強力なろっこんだ。
けど、一体誰のろっこんなんだろう?
君のまわりでは、このろっこんの犯人探しが始まっていた。
「これはきっと、音楽に関係ある人のろっこんだよ。
僕はキャットロードにある
楽器屋のおじさんが怪しいと思う。
最近、なんだかこそこそしてるし、よく店が閉まってることが多いんだ。
何してるのか聞いてみたら『今にわかるよ。驚かしてやるから』って。これはおじさんの仕業だよ」
「犯人は
ビジュアル系バンドマンだよ!
三日前に、バンドの他のメンバーが全員、そいつに愛想付かして辞めちゃったらしくて。
どうせ、オレとバンドやってくれるやつなんてこの世にはいないんだーってすげぇいじけてんの。
きっとこのブッ飛んだろっこんはそいつの悲しみが引き起こしてるんだよ。
辞めた原因? 実はそいつがヴォーカルなんだけどさ、めちゃくちゃ音痴らしいんだよね」
「わ、わたし、見ちゃったんだ。たぶん
津止先生の仕業よ。
昨日の放課後、先生が一人で音楽室に入っていくのを見たの。
しかも、部屋に厳重に鍵かけて、カーテンも閉めてんの。外から声かけても、なんか怒られるし。
その時は、変な先生もいるもんだなぁ……って思ったんだけど、絶対、変だよね!」
「怪しい奴……。
あ、そう言えば、さっき
ヘッドホンで音楽聞いてる寝子高生が歩いてたんだ。
不思議なことにそいつ。まわりがおかしな事になってんのに気付いてないんだよ。
音楽に夢中になっててさ。あれは怪しいと思うぜ、うん」
「最近、様子がおかしいと言えば、ラジオの……ほら、
n.k.FMの『ねこねこ放送局』。
あのパーソナリティの
DJ招き猫の様子が変なんだよ。
もともとネガティブな人なんだけど、最近、リスナーからのメールがあんまり来ないってふさぎ込んでてさ。
選曲とかめちゃくちゃなの。ちょうどこんな感じにさ」
どんどん島はおかしくなっていく。早くこのろっこんを止めないと。
普通を取り戻すために……!
ゲームマスターの梅村象山です。
プレイヤーの皆さんと一緒に楽しいシナリオを作れればいいなと思います。よろしくお願いします。
シナリオの舞台になるのは、寝子島ですが、どうもいつもと様子が変です。
謎のろっこんの影響下にあるので、お店や交通機関はまともに利用出来ません。
ある意味、カイメツ状態にあります。
犯人候補となっているのはこの5人です。
とても気さくで猫好きな楽器屋のおじさん(お店はキャットロード)
音痴なビジュアル系バンドマン(シーサイドタウン駅前広場)
気難しそうな津止孝道先生(寝子高音楽室)
鈍感すぎてまわりに気付いていないヘッドホンの寝子高男子(シーサイドタウン駅周辺)
超ネガティブな女性DJ招き猫(スタジオはシーサイドタウン駅駅ビル一階)
頭の中に流れてくる音楽は、この5曲がリピートされています。
それぞれの曲に応じて、皆さんに与える影響が変化するようです。
ヘビメタ……とにかく暴れたくなる。
クラシック……穏やかな気持ちになって何もしたくなくなる。
ダンスミュージック……くたくたになるまで全力で踊りたくなる。
アフリカの民族音楽……裸になりたくなる。科学文明を恐れるようになる。
ジャズ……誰彼構わず口説きたくなる。
アクションをかける際は、どの曲のタイミングでそれをするかも重要になりますので、
自分のアクションにあったタイミングを考えてみて下さい。