夜桜。
それは美しい風物詩でもあり、人々の心を癒すものでもある。
古来から夜桜を人は見てそれを愛で、大いに騒ぎ、楽しんできた。
それはこの寝子島でも変わらないものである。
夜桜が咲く寝子島のどこか。
そこでは様々な屋台が立ち並び、人々が行きかっている。
ある者は団子を食べ、ある者はからあげを口に頬張っている。
お面を付けた子供も走り回り、夜の花見というよりは小さなお祭りのようであった。
そんな場所に
八神 修と
常闇 月は小さな少女二人を連れてやってきていたのである。
その少女二人はそう、ちーあとチビナミだ。
ちーあは水色髪の少女であり、絶壁を特徴とし薄手の白いワンピースを着ていた。
対照的にチビナミは黒髪でぼいんでありまさにロリ巨乳といって差支えはない。彼女は谷間の見える着物を羽織っている。その着物の下部分は少々改造されているのか着物とはまた違った様相だが。
八神はチビナミの手を引き、どこへ行きたいかと聞いてみる。
「どこへ行ってみたい? 君にはきっとどれも新鮮で珍しい物に見えるだろうから。予算のことは心配しなくていいぞ、俺が二人分持とう」
「ほほう、どこがいいかのう……それもきらきらしておって目移りしてしまうのじゃっ。む、くんくん……何か良い匂いがするぞ! ヤガミ、あっちへ行くのじゃ! ついてまいれっ!」
何かの匂いに惹かれて走り出したチビナミに引っ張られていく八神の姿を見て常闇はふふっと笑った。
「ああしているとお父さんか近所の仲のいいお兄さんに見えますね」
「確かにそう見えるかもです、ヤガミは面倒見がいいですから。そこがいい所なんだとちーあは思うのですよ」
腕組をしながら私は別に匂いに誘われはしないのです、と落ち着いた様子を見せていたちーあであったがある屋台の前で足が止まる。
それはふわふわの綿あめを作っている屋台であった。
じっと綿あめが作り出されるのをみているちーあはちょっと涎を垂らす。はっとして常闇にばれないようにと拭くちーあだったが、勿論常闇には丸わかりであった。
「綿あめ、食べてみますか?」
「ふえっ!? べ、別にちーあはそういう子供っぽい物は……うう、でも……あうぅ……っ」
「私、久しぶりに食べたかったんですよ。でも一人では食べきれないので半分こ、してくれますか?」
「ふむっ!? そういう、ことなら……し、仕方ないですねっ! このちーあがしっかり半分食べてあげるのですっ」
そう言いながらも目をキラキラさせているちーあと一緒に常闇は綿あめ屋へと足を向けたのであった。
一方、別の屋台の前には食事を持ってきて食べられる食事スペースが用意されていた。酒も頼むことができ、夜桜を見ながら飲めるという粋なスペースであった。
そこで黒髪の少女、イザナは隣で突っ伏している
御剣 刀を見た。見れば青ざめた顔で財布を眺め、ため息をついているようであった。
「あんたさ、お財布厳しいなら奢らなきゃいいのに。食べ物の屋台がある時点でツクヨと来たらこうなるの、わかってたでしょ」
「……わかってたさ、でもな、アイツが美味しそうに笑って食べてるのが見たくてなぁ。大丈夫、バイト……またがんばれはいいんだ、うん」
「あ、そう……あんたも大変ね」
そんな会話をする二人の目の前ではツクヨがフードファイターもびっくりな勢いで食事をしていた。
彼女はイザナと同じくちーあの仲間であり、たゆんたゆんの乳房を持つ魅力的な女性である。今日はいつもの着物ではなく普通の女性のような普段着の服装をしていた。
これは御剣と出かけるようになってから着物姿では目立ってしまうという事があった為、彼と買い物に行き選んだ私服であった。
あまり知られていないかもしれないが、彼女は中々に食べるのである。それでいて太らないのだから恨ましい限り。やはり栄養は胸にいくのかもしれない。
焼きそばに始まり、串焼きを数十本……唐揚げは既に皿の上にはなく、いまはイカ焼きを頬張っている。
そのツクヨの表情は非常に嬉しそうで、御剣が彼女に色々と食べさせたくなるのもわかるようなそんな表情であった。
イザナは団子を口に運びながら普段着でも揺れるツクヨの胸と自分の全く揺れない胸を見比べた。
あちらが雄大な山であるとすれば、彼女の胸はなだらかな丘である。なくはない、だがあるとも言えない。
「……はあ、あほくさ」
そう呟きながら、やけ酒とばかりに焼酎をあおるイザナであった。
さて花見に屋台にと、ここまでは馴染みのあるものばかりである。
だがこの桜による集客をチャンスと見た者がいた。そう、マッサージ店の店主ダストである。
ツクヨの色替えとも言える彼女はほぼ見た目は同じだが、ツクヨと髪の色が違う。姿を自在に変えられる彼女は定期的に姿を変えるのだが、ツクヨの姿を気に入っているのか最近は色しか変えていないようである。
今日の髪色はピンクであり肌は褐色であった。どうやら今日はそういう気分らしい。
「はぁーいっお酒飲んだお兄さんやおじ様ぁ、ダストちゃんの出張マッサージ店はいかがですかぁ? 疲れも取れるし、別料金はかかりますけどぉ色々できますよぉー?」
商魂逞しいと言えばいいのだろうか。専用の大きな車まで用意し中の様子は見えないようになっている。マッサージ中のプライバシーに配慮してだとか。
そんなダストの客引きを遠目に見ながらイヴァは屋台で料理を作り続けていた。
元から寝子島の料理に興味があった彼女はこのお祭り状態となっている屋台の責任者に頼み、手伝わせてもらっているのだ。
「イヴァちゃん、こっちのもお願いするよー。じっくり煮込んでくれればいいから」
「あ、はいっわかりました。いい香りがするんですね……ごぼうにニンジン、こんにゃくに豚肉……これはなんという料理ですか?」
「これは【豚汁】って言うんだよ。まあ、海外から来たイヴァちゃんには馴染みがないかもだけどね。結構、日本では人気なんだよ」
「豚汁……これは覚えた方がよさそうですね、後でレシピを教えてもらってもいいですか。自宅でも作ってみたいんです」
「ああ、構わないよっ。紙にまとめて作り方書いといてあげるからね。あ、ナディスちゃんは私ときとくれ。あっちで串焼きの手伝いを頼みたいんだよ」
「はいっ、お任せくださいっ! ばりばり焼きますよーっ!」
彼女達はちーあと同じく異世界の人物だが寝子島の民には【海外からきた外国人】として見えるようだ。
大きな声で笑うおばちゃんと談笑しながらイヴァとナディスは屋台のお手伝いに精を出している。
これは戦う者の休息である。
羽を休め、自分の守るべき場所、守るべき人を明確にする。
それもまた次の戦いへの備えなのだから。
お初の人もそうでない人もこんにちわっウケッキです!
今回は箸休めシナリオということで日常系ですので戦闘はありません。
夜桜を楽しむもよし、屋台の料理を頬張るもよし、出張マッサージ店へいくのもよしです。
また、屋台では臨時お手伝いの募集もありますので手伝いたい方はそちらもどうぞ!
アクション
◆予想されるルート
・ちーあ、チビナミと一緒に屋台巡り 同行者:ちーあ・チビナミ
:このルートではちーあ、チビナミ、いずれかと屋台を巡ります。
チビナミは射的や風船釣りなど食に関係ない物がメインです。
ちーあは甘い物を食べる系の屋台がメインとなります。
・イザナのやけ酒に付き合う 同行者:イザナ
:彼女と一緒にお酒を飲みます。既にイザナは酔っており絡みながらの愚痴が零れると思われます。
焼酎、日本酒などお酒は色々取り揃えております。なお持ち込みもОKです。
・ダストの出張マッサージ店へ行く 同行者:ダスト
:ダストの出張マッサージ店へ行きます。疲れをしっかりとほぐすジェルによるマッサージの他、
別料金で色々とアブナイこともしてくれるようです。車中での施術となりますが、
外からは見えないのでご安心を。
・ツクヨと一緒に食べまくる 同行者:ツクヨ
:屋台を巡りながらツクヨさんと一緒にあらゆる食べ物を食べます。
お財布が心配になるかもしれないルートですが、出すよと言わない限りはツクヨさんも
ある程度の予算を持ってきているのでご安心を。
なおツクヨさんは本来、金髪に赤目ですが一般の寝子島民には【金髪碧眼の外国人美女】に見えるので人目は惹きます。
・イヴァと一緒に屋台を手伝う。 同行者:イヴァ、ナディス
:屋台の臨時お手伝い募集に参加し、各種屋台のお手伝いができます。
お手伝いできるのは【焼うどん】【串焼き】【からあげ】【団子】の四つです。
なぜ、焼うどんがあるかって? 作者のあったらいいなという趣味です。
なお、イヴァのやっている豚汁の屋台へ食べに行く、というのもアリです。
◆登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
最近、チビナミに様々な方法で絡まれる為、ちょっと煩わしく思うが内心楽しく思っている。
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所があったが、
寝子島の民との触れ合いにより、徐々にそういう部分は鳴りを潜めつつある。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
なお味の濃い料理が好みで、味噌や醤油を好む傾向。魚よりは肉派。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお胸は徐々に成長中。
イザナ
:ちーあの仲間で黒髪でツインテールの少女。
雷を扱う戦士であり中距離、近距離選ばず戦えるオールラウンダー。
なお料理は壊滅的な腕であり、どんな素材を使ってもこの世の物と思えない料理を作り出す。
最近お酒にハマり、色々な銘柄を試し中。
イヴァ
:ちーあの仲間の悪魔の少女。ツクヨには劣るがなかなかいいスタイルをしている。
癖のあるメンバーの中では一番の常識人であり、みんなのオカン的存在。
得意な事は料理家事全般と家庭的だが、ひとたび戦場に出ると身の丈程もある大鎌を高速で振り回す戦士となる。
寝子島の料理に興味があり、色々なレシピを覚えようとしている。