4月初旬。
桜舞い散り新緑が芽吹く季節。期待と不安が入り交じる、初々しくて繊細で、ちょっぴりアンニュイで、とってもハッピーな季節。
義務教育を終え、オトナの庇護から離れたコドモたちが、自らも社会の仲間入りを果たす時……そう。巣立ちの季節!
「大丈夫、私、知ってます。寝子島高校に行くには、バスに乗るんですよね!」
星ヶ丘駅にて。こちらの初々しいお嬢さんもまた、新社会人のひとりです。
雛鶴 さゆり、この春から寝子島高校へ務める、ぴっかぴかの新人教師です!
名家の生まれにして箱入り娘のお嬢さま。ちょっと世間知らずなところがありますけれど、それでも頑張って、どうにか憧れの先生になることができました。
そんなさゆり先生の、今日は初出勤日なのです。
「……バスって、どうやって乗るんでしょうか?」
道路を走る無数の車たちを前に、さゆりは眉毛をへにゃっと曲げて、小首を傾げます。
これまでは運転手付きの黒塗り高級車で送り迎えしてもらってたそうで……どうにも先生、世間知らずにもほどがありました。
「困りました……どうしたらバスに乗れるんでしょうか!」
「やあ、君は新任の雛鶴さんじゃないか。どうしたんだい?」
と、後ろから声をかけたのは
黒崎 俊介先生です。
黒崎先生としましては、これからいっしょにお仕事する可愛い後輩へ、ちょっとした親切心のつもりだったのですけれど……。
ぽむっと肩を叩かれ、振り向いたその瞬間。さゆりの顔は一瞬にして、火にかけたヤカンみたいに真っ赤っか!
「いっ……」
「い?」
「いやあああーーーーーー!!」
なにを思ったかおもむろに黒崎先生の腕を取り、ぶおんっ! いとも簡単に投げ飛ばしてしまいました。
「わ~~~っ」
キレイな放物線を描いてすっとんだ黒崎先生は、ばっひゅ~~~ん。ずぼっ、と生垣に頭から突っ込んでしまいました。
「あ、あんなに近くに人の顔が……! は、恥ずかしいっ!」
イヤイヤをして恥ずかしがるさゆり。
実は彼女、超がつくほど気が弱くって恥ずかしがり屋さんでして。急にずいっと近づかれたりすると、護身術として覚えた合気道のワザがサクレツ! 手近な誰かをぶん投げてしまうという困ったクセがあるのでした。
「ううっ。やっぱりお外は怖いです! お父さま、お母さま……!」
生垣に突き刺さったままの黒崎先生はさておき、さゆりはよよよとよろめきます。
けれどもすぐに、ぬおおおっ! と立ち直りまして、
「でも私、負けません! 生徒の皆さんに慕われる、素敵な先生になってみせます……!」
いつでも前向き、健気に頑張るさゆりの瞳には、きらきら星が浮かび上がって、文字どおりに輝いておりました。
彼女は、夢を叶えることができるでしょうか?
てゆーかその前に、無事に寝子高へたどり着けるのでしょうか……!?
いっぽうこちらは、シーサイドタウンのショッピングモール内にある、ランジェリーショップです。
ひらひらふりふりのレースやフリルが踊り、色とりどりの鮮やかな女性下着が並ぶ空間に、
「んふふっ」
少々アヤシイ笑顔がひとつ。
「それじゃ、今日から正式にうちのスタッフってことで。よろしくね、胡乱路さん!」
「はい、こちらこそ。よろしくお願いいたしますね♪」
一年近くアルバイトしてきたこのお店で、
胡乱路 秘子は正式なスタッフとして採用されることになったようです。
やせぎすでひょろりと細長く、笑ったお顔はいささか胡乱ではあれど、勤務態度はすこぶるマジメ。きっと、うまくやっていけることでしょう。
けれどこの新年度に、彼女が始めたのはそればかりではありません。
「でもすごいわね、胡乱路さん。昼間はうちで働いて、夜は専門学校に通うんでしょ? 大変そうだけど、無理はしないでね」
「ありがとうございます。ええ、ずっとやりたいと思っていたことですから。できる限り、頑張ってみようと思うんです」
心配そうな先輩スタッフさんへ、いつものようにけろりとして微笑みます。
振り返れば、数奇な運命に翻弄されてきた秘子。多くの人を巻き込んで、振り回して……自分も振り回されて。
それでも最後には、彼女なりのフツウの生活と、素敵な友人たち。それに、夢が残りました。
きっと叶えるのは、とっても大変です。
けれど同時に、そうして叶えたい夢に向かって真っすぐ進んでゆくのは、とっても楽しいことでしょう。
だから彼女はやっぱり、笑うのです。
「んふふふふ♪」
さてさて。
そんなふうに、この春に学校を卒業した新社会人たちが華麗に羽ばたいてゆく姿ときたら、なんと愛おしいことでしょう!
やっぱり、応援したくなってしまうのです。
ほら。
あなたの背中にだって、今や立派な翼が生えているはず。
あなたはもう、守られるばかりの雛鳥ではないのですから。
さあ、勇気を出して。羽ばたいて!
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~!
このシナリオの概要
今回は、この4月から新社会人となった皆さんと、
それに関わる皆さんを描くフリーシナリオです。
初出勤の様子や、あるいはその準備に四苦八苦するところなどを描写します。
あなたはどんなお仕事に就いたのでしょうか?
ちょっぴりの不安、大きな希望を胸に社会へ飛び出した皆さんの輝かしい姿を、
自由なアクションで表現してください!
なお、新社会人以外の方も、新社会人のPCさんやNPCと関わるという形でご参加いただけます。
寝子高の新任教師の雛鶴 さゆりは道に迷っていて、胡乱路 秘子は意気揚々とお仕事に勤しんでいます。
ぜひ交流してみてください。
ちなみに本日は4月初旬で、学生さんはまだ春休み中です。
アクションでできること
◆新社会人の初仕事を描く
新社会人となった方は、
あなたがどんなお仕事に就いたのか、
どんな職場で、どんな先輩たちがいて、どんな業務に携わるのか。
どんな意気込みで臨むのか。どんな準備をしてきたのか。
などなど、自由にアクションをおかけください。
専門職の専門用語など、調べなければ分からないような事柄は、
補足や調べ方をあわせて教えていただけますと助かります。
◆雛鶴 さゆりと交流する
寝子島高校の新任教師、雛鶴 さゆりが道に迷っています。
彼女はバスの乗り方も分からないレベルの世間知らずで、どうにも世話が焼ける人のようです。
助けてあげたり、寝子高の生徒は今後のために顔合わせをしたり、
声をかけてあげてください。
なお急に近づいたり背後に立ったり、恥ずかしがらせたりすると、
ぶん投げられてしまうかも? お気を付けて。
◆胡乱路 秘子と交流する
シーサイドタウンのショッピングモール内にあるランジェリーショップで働いています。
このほど正式なスタッフとして採用され、やる気もじゅうぶんです。
女性は下着を買いに訪れたり、様子を見に行ったり。
男性はちょっと入りにくいかもですが、親切に案内してくれますよ。
過去に交流がある方はもちろん、初めての方も大歓迎。
◆その他
新社会人と関わるアクションでしたら、それ以外の方もご参加いただけます。
どなたでもお気軽にどうぞ!
NPCについて
上記の二名のNPに加えて、その他のNPCも、登録済みのキャラクターでしたら誰でも登場可能です。
新社会人の方が、お世話になった寝子高の先生に街中でばったり、なんてシチュエーションもアリ。
また、墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、登録・未登録問わず登場OKです。
ただし、不自然でないシチュエーションに限ります。
Xキャラクターも登場可能です。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いてもらえれば大丈夫です。
以上になります。
それでは、ご参加をお待ちしております~!