「悩みごとがあるってワケさ、ちょっとしたヤツな」
男は苦々しい顔でそう言った。
そっちが相談するんかい、とあなたはツッコミたくなったが、ぐっと堪える。偶然ラーメン屋で隣に座った私立探偵であるこの四十男としばしラーメンについて語らったのはいいが、ややあって悩みごとを相談されたのには参った。
別におっさんの悩みごとなど聞いたところで楽しいワケではないからだ。
「悩みごとってのはまあ……俺には離れたところに娘がいるんだが」
あなたは驚いた。そのことは噂で知っていたが、この男が妻子のことについて自分から話すのはあまり聞いたことがないからだ。何らかの心境の変化があったのだろうか。
「……そいつがこの島に来るみたいでな」
その噂も聞いている。以前来たときにも結局あちこちと逃げ回って、会わずに帰ったのではなかったか。
「いや、今回は違うのさ。今度はもう歩けるって連絡が来て……」
男の弁によれば、前回は本当に本人かどうか分からなかったため、逃げ回っていたのだという。
「ああ、今度はとりあえず本物さ。ただ、問題はそんなことじゃないんだ……だがな……」
しばし押し黙る。
この男がここまで言い渋るのには、よほどの事情があるのだろう、とあなたは思った。
「そろそろそいつの誕生日でな。プレゼントを選ばなくちゃならんのだが、まったく浮かばねえのさ」
そんなに悩むことだろうか。二の句が告げないあなたを放っておいて、その男、
天利 二十(あまり にとお)は立ち上がった。カウンターに代金を置いて、ラーメン屋を出る。
「そんな顔すんなよ。俺にとっちゃ深刻な悩みなのさ……あんたもなんか悩みごとがあるなら、場所を変えようぜ。そこでゆっくり聞くからさ」
さて、ラーメン屋を出たあなたは――
みなさんこんにちは、まるよしです。
今回は『私立探偵の隠し場所』で天利が逃げ回っていた娘、フィリアが寝子島に再びやって来るそうです。今回は彼女が来るまでの日常系シナリオです。
『ひと』『もれいび』『ほしびと』関係なくお楽しみいただけます。
また、前回のシナリオは読んでいなくても大丈夫です。
どなたでもお気軽にご参加ください。
◆今回のシナリオではフィリアはほとんど登場しません。
ラストで寝子島を訪れるところがちょっとだけ描写されるかもしれない程度です。このシナリオに参加しなくても、次回以降フィリアが登場するシナリオに悪影響が出ることはありません。
天利は今までほとんど会うことのできなかった娘との関係に、今更ながら戸惑っているようです。もしみなさんが天利と出会ったなら、悩みごとを聞いてやってください。ラーメンでも食べながら。
今回、フィリアについて訪ねると以下のように答えることが予想されます。
「娘の年は……今度20歳になる。見た目は10歳ぐらいだが、確かに20歳なのさ」
「まあ病気……みたいなモンでな。ずっとアメリカを離れられなかったのさ」
「俺か……俺はこの島を離れられないのさ……ワケがあってな。さあ、ラーメンでも食おうぜ」
もちろん、みなさんが抱えている悩みごとを天利に相談しても構いません。ラーメンでも食べながら。
もちろん、天利以外の参加PCさまに相談などしても構いません。ラーメンでも食べながら。
あなたは何かと騒がしくなりそうな寝子島で、静かなひと時を過ごせるでしょうか?
◆NPCについて
私立探偵 天利 二十(あまり にとお)、フィリア(ふぃりあ)については、マスターページをご参照ください。
そのほかのNPCは今回リアクションに登場できません、ご了承ください。
◆アクションについての目安
アクションをかける際、PCの台詞や心情を交えて下さると、キャラクターの雰囲気を掴みやすいです。
そのPCが何をしたいのか、そのために何をするのか、という目的と手段をはっきりさせるとGMとしても行動を取らせやすく、その目的を叶えやすくなります(あくまでも目安、ですが)。
それでは、皆様の楽しいアクションをお待ちしています。よろしくお願いいたします。