寝子島は連日、猛烈な寒波に見舞われた。人々は一様に震え、着ぐるみのような厚着となった。
朝の挨拶は「おはよう」から「寒いね」と変わり、今日の晴天を迎える。
九夜山に朝陽が当たる頃、雨梨栖 芹香は不貞腐れたような顔で登山道を歩いていた。僅かに息が上がる。視線は斜め下に固定され、頬に貼り付く派手な色の髪を鬱陶しそうに何度も手で払った。
「なんで休みの日に登山なんだよ」
三度目の言葉になる。舌打ちして目に付いた石を蹴飛ばした。デコボコの道に良いようにされて間もなく横手に消えた。
木々が密集したところを抜けた。火照った身体に程よい風が吹き付ける。芹香の表情が穏やかなものへと変化した。
「悪くないかもね。恐竜が故郷に帰る的な感じで」
前を歩いていた
吉住 志桜里が音もなく振り返る。瞬時に出された手は芹香の顔面を掴み、指先がこめかみに食い込んだ。
「どこのチェリーボーイだよ。早すぎるだろ。まだ何も言って――」
「わかっています。悪友にして宿敵なので、先の行動が手に取るようにわかります」
「ひどい言いがかりだな。まだパンTって……口が滑ったかな?」
「予想通りです」
鬼気迫る笑顔でアイアンクローを決めた。直後に芹香は脅威の回復力を見せる。何事もなかったように涼し気な顔で言った。
「呼ばれた理由はわからないけど、ま、ヒマだし付き合ってやるよ」
「今日は嫌というくらいに付き合って貰います」
どちらも凄みのある笑顔を見せた。
山頂に到着した。
「やっとだよ~」
芹香は立ち止まって伸びをする。志桜里は足を止めず、北に向かう。
「そっちに何があるんだよ」
「こちらが本命になります」
含みのある言い方に芹香はにんまりと笑って付いていく。
数秒と経たずに声を上げた。
「あれはなんだ! まさか、氷なのか!?」
「連日の寒波が作り上げた天然のスケートリンクですよ」
三夜湖は白く輝いている。全体が厚い氷に覆われているようだった。
「もっと早くに教えてよ! 行くよ、パンT!」
芹香は頬を上気させて駆け出した。
「楽しい一日になりそうです」
指を鳴らした志桜里が後に続いた。
今回は猛烈な寒波のおかげで素敵な場所ができました!
天然のスケートリンクだけではなくて、思い付いた様々な遊びを楽しんでくださいね。
シナリオガイドに登場していただきました、吉住 志桜里さん、ありがとうございます。
本シナリオに参加された場合、ガイドに縛られず、自由にアクションを綴ってください。
☆☆☆ 今回の舞台 ☆☆☆
寝子島にある三夜湖。湖全体がぶ厚い氷に覆われている。
普通に遊ぶ程度では決して割れない。相当な強度を誇る。
期限は一日。翌日には溶けて元の湖に戻っている。
たくさんの人が訪れることを見込んで業者の姿も。
例:熱いおしるこ、温かい飲み物、ホットドッグ等。
☆☆☆ アクション ☆☆☆
PCの希望で決まる。
例:人気の少ないところで穴を開けて魚釣り、
スケート靴を持参してスケートリンクとして活用、
友達と一緒に走って転んで大いにはしゃぐ等。
※他者に迷惑を掛けるような危ない行為はマスタリングの対象になります。
※本シナリオは、Xイラストのキャラクターも描写することが可能です。
キャラクターの細かい口調等、アクションに書かれていれば反映させていただきます。
Xキャラ図鑑の内容を伝えたい場合は「図鑑有り」の書き込みでお知らせください。
説明は以上になります。
スピードスケート並みの速さで駆け抜けました!
今回は運動がテーマのような話になっていますが、
もちろんカメラや写生のように芸術と捉えた参加もアリです。
素晴らしい瞬間に出会えるかもしれませんよ。
お弁当を持参して恋人や家族で楽しむ姿も目に浮かびます。
懐がとても深い三夜湖があなたの訪れを待っています(ご参加、お待ちしております)。