「お前ら、餅は好きか?」
唐突に
如月 庚が切り出した。
あっけにとられた貴方に肩を竦めて見せると、
「いや、バイト先でさ……客に頼まれたんだ。たくさん餅を食えるヤツを、集めて欲しいってよ」
つい指を眉間に持っていきかけて、庚は思い直したように、その手を背中に回した。
発端は数日前。
最初はなんとなく違和感のあったギャルソン姿も、恵まれたルックスが手伝ってさまになり、接客も安心して任せられるようになった頃。
品の良い、なんだかちょっと浮いてる気もする年配の女性客が、出されたカクテルに口をつけながら言ったのだ。
「お正月のお餅がたくさん余って、困っているのよ」と。
聞けば、彼女は桜花寮の寮母さん。
つまりこれは、桜花寮で寮母として働くトシコお婆ちゃんが持ってきた話。
トシコの夫、トシゾーは、無類のお餅好き。
もういくつ寝ると、お正月? お餅がたくさん食べられる正月が、ウキウキ楽しみで仕方ない。
「あ~、早くこんかな、正月! これもトシコの雑煮がうますぎるからじゃ!」
「まあ、大げさなんだから」
元々、お餅に限らず、食べるのが大好きなお爺ちゃん。
いつもの事、とお婆ちゃんは笑って流したが。
年の瀬にお爺ちゃんが、大量すぎるお餅を購入してきた時は、驚いて入れ歯が飛び出しちゃったとか、なんとか。
しかし寄る年波は、トシゾーお爺ちゃんの食を細くしてしまっていて。
時は流れ、4月。
無情に迫る、消費期限。
「欲張るからでしょ、こんなにどうするの!?」
ただでさえ、最近腰が痛くて仕方ないのに。
お餅の詰まったダンボールの山に、自宅の家事動線を圧迫され、たまらず叫ぶトシコ。
愛する妻に、甲斐性の無さを追求されたトシゾー、とうとうムキになって、妻に負けない大声を張り上げ。
「どうするって、食うに決まっとる!!!!」
――頑張っちゃった結果、かっこんだ餅を、喉に詰まらせた……。
餅を詰まらせるとか、お約束すぎるだろ!
他人事とは言え、庚は心の中で盛大なため息をついた。
幸い、トシゾーは大事には至らなかったようだが。
「嫌よねぇ。年を取ると自分が食べたい物と、食べられる物が釣り合わなくて。主人なんて、最近は塩分も控えるようにお医者様に言われているのよ。だからかしらね? 私がお正月のお餅だけ、特別にちょっとお醤油を多目に使ってあげるから、あの人喜んじゃって。余計にお餅が好きになっちゃったみたいなの」
お年寄りの話は長い。
段々とりとめがなくなってきたトシコの話に、曖昧な相槌を繰り返す庚。
「ねえ、このままじゃあの人も危ないし、かと言って食べ物を粗末にするのもバチ当りでしょう? 良かったら貴方もお友達を誘って、あの人の心残りを解消するために、残ったお餅を平らげてもらえないかしら?」
「はい? 俺達で、ですか?」
「ええ、桜花寮(地図I-8)の女子寮に調理場があるんだけど、当日はそこを使えるようにするから。お雑煮でも磯部でも、好きに料理して食べてもらえれば、お婆ちゃんとっても助かるわ」
メシータです。
コメディ+ほのぼのな路線を想定しております。
が、場合によっては女子寮という事で、侵入騒ぎ(バトル)もありかも?
桜花寮の調理場には、トシゾー&トシコが来ています。
お餅を調理するのに必要になる、一般的な調理器具は準備してくれています。
何でも、ご自由にお使いください。
ただしあまり一般的でないものは、自力で入手してくださいませ。
毎度ながら、未成年の飲酒喫煙は禁止です。他のPCさんへの、甚だしい迷惑行為もご遠慮ください。
お仲間での行動を希望される方は、アクションにGA【グループ名】の記入をよろしくお願いします。
●場所 桜花寮(女子寮)調理場
管理棟の1Fにあります。
通常は男子禁制ですが、この日だけ特別に女子寮の調理場が解放されています。
参加したPCさんの中に、桜花寮の女子生徒が居た場合、現場の管理を任されるかもしれません。
●参加NPC
・トシゾー
お餅が大好き過ぎるお爺ちゃん。
食い尽くされようとする餅に、アワアワ言ってます。
「ワ、ワシの雑煮っ~~~!!!!」
・トシコ
桜花寮の寮母さんであり、トシゾーの妻。
そ知らぬ顔で、皆さんにお餅をすすめてきます。
お料理が苦手な人は、トシコと一緒にお雑煮を作って食べても良いかもしれません。
お腰が曲がっていて、あまり機敏に動けません。
「ホホホ。すみませんねぇ、うるさい爺さんで」
それでは、よろしければご参加くださいませ。