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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
さあ、封印されしものよ、その身をうつし世に現せ
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放課後の、夕日射す寝子島高校。昼間に較べると格段に人気のない、学校の敷地。
その北校舎の裏手へ、二人の生徒が、せっせと机を運び出していた。
外へ出て、植え込みの傍へ机を下ろすと、教室から持ち出されたそれへ覆うようにクロスを掛ける。しわを伸ばし、その中心にゴトリ、と重たい金属を載せる。 黙々と作業を進める彼らは、定められた衣服を纏い、道具の用意を終えると、揃って長いローブを羽織った。
「準備はいいか」
「……はい」
言い伝えられてきた手順、受け継がれた用具、相応しい衣装。
人も物もそれらでない何ものも、全てが茜の色に染まって行く黄昏時の中。二人の内、段取りを主導していた少年の方が、鞄から一振りの刃を取り出して構えた。
机中央の金属の塊を鷲づかみにして、しっかりと固定する。
完全なる真円。金属光沢を放つ天面。なまらかな側面に巻き付けられた紙には、異国の文字——。
それは、円筒形の、缶。
「さあ、封印されしものよ、その身をうつし世に現せ！」
主導者は高らかに謳い上げると、一振りの小さな刃——『缶切り』を、缶へと突き立てた。
プシッ。
「………………うっ」
「うぉおおおおおお。くさぃぃぃぃいいいい」
小さく開いた缶の穴から、勢い良く封じられていたものが飛沫を上げる。
一歩下がって見ていた女生徒の方は、鼻を押さえて後退り、缶を開けた男子生徒は、中に詰まっていた液体を直に浴びて、ごろごろと地面を転がって呻いていた。
二人はフードつきのローブ————前もきっちりしまる、裾の長いビニールカッパを、寝子高指定ジャージの上に着込んでいたため、液体の直撃は免れている。が、臭いだけは避けられるものでは無い。
破れた封印から飛び出した液体は、塩漬けのニシン——缶詰めの中身——をとりまく腐敗……いや、発酵液だった。
「ひゃ、ひゃから嫌だったんですよぉ。『シュールストレミング』の開缶なんて」
「しかし、押し入れに溜まっていく一方にしていく訳にもいくまい」
じりじりと後ろに退がろうとする少女の腕を、いつの間にか起き上がった少年は、がっしと掴む。臭気に鼻を押さえたままの少女は、この先を考えてか、あるいは強烈すぎる臭いのためにか、涙ぐんでいた。
「ひゃいたい、にゃんで『世界一臭い』食べものをこんなに溜め込んでるんですかぁ」
「仕方なかろう。いらないと言っても実家から送られて来るのだ！」
「……実家さんの方でも、処分に困っていらっしゃるんですねぇ」
「いいから！ お前もこの、魔王のような瘴気を放つニシンの塩漬けに倒されたくなかったら、手伝え」
「はいひゃい……」
少年は魔王の缶詰めの開封作業に戻る。彼の足元には、鈍く銀色に光る、いくつかの缶が積み上げられていた。
少女は、開缶が進むごとに酷くなる臭気にそっと離れながら、それでも『魔王退治』に協力すべく、鞄から携帯を取り出す。
【急募】魔王を退治してくれる勇者さん。【ニシンを食べるだけの簡単なお仕事】
場所：寝子高北校舎裏
報酬：ニシン食べ放題！
注意：魔王＝シュールストレミング です。戦いは困難を極め、傷跡は尾を引く事が予想されるため、汚れても良い格好でご参加下さい。（※つまり、服に臭いが染みつくから、制服だと大変な事になっちゃうかも！？）
『ねこったー』にログインして、いくつか文を打ち込むと、少女は携帯を閉じた。彼女の視線の先では、少年がきりきり缶詰めを開封している。
「………………まったく、先輩ったら」
溜め息の向こうで、最初の魔王シュールストレミングは解き放たれ、増した臭気に少女は涙目になる。
（これ、臭いの元凶として、むしろ私たちが粛正されちゃうんじゃ……）
ひとりの少女の心配をよそに、新たな戦いに缶切りの刃が入った。
その北校舎の裏手へ、二人の生徒が、せっせと机を運び出していた。
外へ出て、植え込みの傍へ机を下ろすと、教室から持ち出されたそれへ覆うようにクロスを掛ける。しわを伸ばし、その中心にゴトリ、と重たい金属を載せる。 黙々と作業を進める彼らは、定められた衣服を纏い、道具の用意を終えると、揃って長いローブを羽織った。
「準備はいいか」
「……はい」
言い伝えられてきた手順、受け継がれた用具、相応しい衣装。
人も物もそれらでない何ものも、全てが茜の色に染まって行く黄昏時の中。二人の内、段取りを主導していた少年の方が、鞄から一振りの刃を取り出して構えた。
机中央の金属の塊を鷲づかみにして、しっかりと固定する。
完全なる真円。金属光沢を放つ天面。なまらかな側面に巻き付けられた紙には、異国の文字——。
それは、円筒形の、缶。
「さあ、封印されしものよ、その身をうつし世に現せ！」
主導者は高らかに謳い上げると、一振りの小さな刃——『缶切り』を、缶へと突き立てた。
プシッ。
「………………うっ」
「うぉおおおおおお。くさぃぃぃぃいいいい」
小さく開いた缶の穴から、勢い良く封じられていたものが飛沫を上げる。
一歩下がって見ていた女生徒の方は、鼻を押さえて後退り、缶を開けた男子生徒は、中に詰まっていた液体を直に浴びて、ごろごろと地面を転がって呻いていた。
二人はフードつきのローブ————前もきっちりしまる、裾の長いビニールカッパを、寝子高指定ジャージの上に着込んでいたため、液体の直撃は免れている。が、臭いだけは避けられるものでは無い。
破れた封印から飛び出した液体は、塩漬けのニシン——缶詰めの中身——をとりまく腐敗……いや、発酵液だった。
「ひゃ、ひゃから嫌だったんですよぉ。『シュールストレミング』の開缶なんて」
「しかし、押し入れに溜まっていく一方にしていく訳にもいくまい」
じりじりと後ろに退がろうとする少女の腕を、いつの間にか起き上がった少年は、がっしと掴む。臭気に鼻を押さえたままの少女は、この先を考えてか、あるいは強烈すぎる臭いのためにか、涙ぐんでいた。
「ひゃいたい、にゃんで『世界一臭い』食べものをこんなに溜め込んでるんですかぁ」
「仕方なかろう。いらないと言っても実家から送られて来るのだ！」
「……実家さんの方でも、処分に困っていらっしゃるんですねぇ」
「いいから！ お前もこの、魔王のような瘴気を放つニシンの塩漬けに倒されたくなかったら、手伝え」
「はいひゃい……」
少年は魔王の缶詰めの開封作業に戻る。彼の足元には、鈍く銀色に光る、いくつかの缶が積み上げられていた。
少女は、開缶が進むごとに酷くなる臭気にそっと離れながら、それでも『魔王退治』に協力すべく、鞄から携帯を取り出す。
【急募】魔王を退治してくれる勇者さん。【ニシンを食べるだけの簡単なお仕事】
場所：寝子高北校舎裏
報酬：ニシン食べ放題！
注意：魔王＝シュールストレミング です。戦いは困難を極め、傷跡は尾を引く事が予想されるため、汚れても良い格好でご参加下さい。（※つまり、服に臭いが染みつくから、制服だと大変な事になっちゃうかも！？）
『ねこったー』にログインして、いくつか文を打ち込むと、少女は携帯を閉じた。彼女の視線の先では、少年がきりきり缶詰めを開封している。
「………………まったく、先輩ったら」
溜め息の向こうで、最初の魔王シュールストレミングは解き放たれ、増した臭気に少女は涙目になる。
（これ、臭いの元凶として、むしろ私たちが粛正されちゃうんじゃ……）
ひとりの少女の心配をよそに、新たな戦いに缶切りの刃が入った。
運営部より
【追記】10月23日
大変お待たせしておりまして、誠に申し訳ございません。
都合により、本シナリオの担当は、花村翠マスターに変更させていただきます。
リアクション公開は、11月5日頃を予定しております。
ゲームマスターより
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年09月03日
- 参加申し込みの期限
-
- 2013年09月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年09月10日 11時00分
はじめまして。新たにマスター登録させて頂きました、ネコイチです。
みなさまの寝子島ライフをサポートする事ができれば幸いです。
さて。今回は、二人の生徒が高校で、『世界最凶の発酵食品を食べよう：シュールストレミング祭』へ参加する人を求めています。「ねこったー」で情報拡散中です。
もちろん、苦情を述べに行っても良いし、直接現場に居合わせて頂いても構いません。むしろその方が手っ取り早いかもしれません。
＜補足＞
シュールストレミングとは：世界一臭い、と言われる食品。
ニシンの塩漬けを缶の中で発酵させたもの。殺菌処理をしないため、缶の中でもどんどん
腐敗発酵が進む。つけあわせと一緒に食べるのが一般的ですので、持ち寄っていただければそちらを使います。持ち寄りが無ければ、こちらで用意していた事にします。
シナリオガイドに登場しているNPC二人の内、女子生徒の方は、「壇塚 なにぬ（だんづか なにぬ）」1年3組で桜花寮住まいです。
缶を開けた方の少年は「八茶女 立志（やちゃめ たつし）」。2年7組で猫鳴館住まいです。
知り合い〜友人の範囲であれば、シナリオに参加する動機として、「寮でたまに見かける」「友達の友達」などと接点を結んでいただいて構いません。
初めてのシナリオでは、PLのみなさんがわいわい賑やかに楽しめる場所を提供できれば良いな、と思っています。