「ごきげんよう、皆さま。『ミッドナイト・フリーキー・リポート』へようこそ!」
「今夜もまた、わたくし胡乱路 秘子が、この寝子島へひっそりと秘匿された神秘・怪異・異形の影を解き明かしてまいります。んふふふ、どうぞ最後までお付き合いくださいませ♪」
「さて、この鬱蒼とした森が見え……暗いですね。あまりにも。明かりはどうやって点けるのでしょう、わたくしすまーとふぉんの扱いにはまだ慣れておりませんもので……ああ! これでよし♪ さて、見えますでしょうか?」
「ここは星ヶ丘地区の北へずずいと進み、天宵川を渡りまして少しばかり山裾へ踏み込んだところ。この先に建つとある洋館が、今回わたくしがお邪魔する怪奇スポットなのです」
「『旧赤坂邸跡』」
「そう呼ばれている古い建物は、星ヶ丘が今のように発展するずうっとずうっと以前から、そこに建っているのだといいます」
「今は住人もない廃墟となっている洋館が、いつ造られたのか? なぜこんな人里離れた場所に建てられたのか? 誰が住んでいたのか? などなど、当時の記録はほとんど残っていないようです」
「しかし今、好奇心にかられてこの場所を訪れた人々は口を揃えて、こう言います……魔女の森、と」
「さあ、進んでまいりましょう。魔女の森……んふふ、わくわくしてしまいますね」
「噂によりますと、かつてここに住むひとりの女性が黒魔術に傾倒し、奇怪なまじない、おぞましい儀式や実験を繰り返したのだそうです」
「その結果なのでしょうか? 住人たちはやがて変死・狂死・失踪など、いずれも非業の最後を遂げてしまったのだといいます」
「この森には今もなお、魔女の残した呪いや実験の産物が闇の中、蠢いているのだとか……恐ろしいですね、んふふ♪」
「あら、さっそく見つけてしまいました。あそこになにかありますね、行ってみましょう」
「……まあ! ご覧ください。これは……」
「樹々の枝から吊り下げられた、この奇妙なお人形たちはいったい……? いかなる魔術の儀式に用いられたものでしょうか?」
「あちこちに散見される、赤く刻まれた不思議な図形や、呪文のような文字の羅列はいったい、なにを意味しているのでしょうか?」
「んふふ。楽しくなってまいりましたね。番組をご覧の皆さんも、お楽しみいただけておりますでしょうか」
「あっ。お人形の首が取れてしまいました。わたくしうっかり! 失礼いたしました」
「元に戻しておきませんと……あら? お待ちください。あちらでなにか……動いたような?」
「……? あれは……?」
「なんでしょう……暗くてよく見えませんけれど」
「あっ。明かりが? すこうし、スマホの調子が悪いようです」
「んふふ、困りましたね。真っ暗です。なにも見えません」
「なにかが……」
「なにかが動いて……あれは、人? 犬? 鹿? それとも」
「それとも、そのどれでもない……見たこともない、奇妙な、なにかが」
「……燃えて」
「────」
ネット上へと投稿された映像は、そこでぷっつりと途切れています。
オカルト系生配信番組の中継を行っていた
胡乱路 秘子が消息を絶ち、3日が過ぎようとしています。
森に息づく魔術の残滓が彼女を洋館へと連れ去り、閉じ込めてしまったのだと、ねこったーなどではまことしやかにささやかれています。
森に住みついた変質者の仕業?
危険な野犬や野生動物に襲われた?
あるいは……魔女の呪い?
『あなた』は今、件の洋館へと続く森の入り口に、仲間たちとともに立っています。
あなたは秘子の足取りをたどるべく、自らここを訪れたのかもしれません。そうでなければ、奇妙なことに、気が付いたときにはここへ立っていたのかもしれません。
洋館はあなたの訪れを待っています。
深く暗い森の中、ひっそりと。ぽっかりと、口を開けて。
墨谷幽です。よろしくお願いいたします~。
不定期連作シナリオ、『彼女の曖昧な考察』の第三弾になります。
このシナリオの概要
星ヶ丘近辺の山裾に建つ、『旧赤坂邸跡』と呼ばれている洋館、
およびその周辺の森が舞台となります。(B-7付近)
周囲は暗く、星明かりと手持ちの光源が頼りです。
洋館はずいぶんと古いもので、現在は誰も住んでおらず、ほとんど廃墟と化しています。
入り口の鍵は壊れて空きっぱなしなので、侵入すること自体は簡単ですが……?
森や洋館のあちこちには、物語に登場する『魔女』が好んで用いるような、
奇怪な人形、護符やタリスマン、無数の書籍、図形や呪文の描かれた紙などの飾りつけが見られます。
そしてこの周辺では、さまざまな怪奇現象や、異形の生物の目撃証言などもあるようです。
胡乱路 秘子は、洋館のどこかにいるのではないかと思われます。
彼女を助けに行くもよし、怖いもの見たさで不気味な洋館へ足を踏み入れるもよし。
なぜだかいつの間にか巻き込まれていて、怖い思いをするもよしです。
どなたでも、お気軽にご参加くださいませ!
アクション
皆さんは洋館のある森の入り口に立っていますが、
なぜかどちらへ進んでも、森の奥へ奥へと進んでしまうようです。
残念ながら後戻りはできません。覚悟を決めて先へ進んでください。
森、および洋館について、
ねこったー等では以下のような目撃証言が散見されます。
<目撃情報の一例>
・散乱する鳥や小動物の骨。
・樹上からこちらを見つめる、カラスの群れ。
・おびただく散った血の痕。
・燃え上がる人影。
・人、犬、鹿など無数の動物の特徴を持つ、燃え上がる異形の獣。
・泥の詰まった井戸から現れる何か。
・在りし日の洋館の幻覚。
・あちこちに残された歯型。
・開かない扉。
・ネット上の発言「生き物の動きじゃない。生き物の形じゃない」
・ネット上の発言「あれはなんていうか……中から燃えているみたいだった」
・ネット上の発言「フクロウが鳴いている。本当に、フクロウか?」
・ネット上の発言「月の光をなにかが遮っていた」
情報の真偽は不明。別の現象の情報も混ざりこんでいるかもしれません。
このほかにも、なにかが起こるかもしれません。
洋館について、散らばっている物や状況から推測して、真実を追求する。
ただただ怖がったり、何かに追いかけられたリ、ホラー体験を満喫。
などなど、自由にアクションをおかけください。
NPC
○胡乱路 秘子
かつては謎の深夜番組で司会進行役を務めていましたが、今はフツウの学生です。
動画サイトにて、深夜のオカルト系生中継番組のリポーターとして活動中。
ねこったー等を通じて、皆さんに協力を求めています。
めったなことでは動じず常に笑顔を絶やしませんが、特になにかお役に立つわけでもなし。
どちらかというと撮影とリポートがメインで、解決は皆さん頼りです。
『#彼女の曖昧な考察』とは
胡乱路 秘子が、動画サイトの生番組の中継を通じて、不可解な現象や謎を追いかけていく、
単発シリーズです。
タイトルにあるように、この一連のお話で描かれる結末は、時に曖昧で、要領を得ないかもしれません。
真相は結局闇の中で、結果は判然としないかもしれません。
つまり、『信じるかどうかはアナタ次第』です。
以上になります。
それでは、皆さまのご参加をお待ちしておりますー!