「きゃっ!!」
例えばそれは、通学途中の曲がり角で憧れの先輩とぶつかってしまうような偶然から始まる。
「――おっと、前見て歩きな、危ねぇぞ」
乱暴な口調ながらも、一方的に衝突してきた女生徒が転ばないようにそっと両肩を支えてくれるような優しい先輩と。
「は、はい――」
それはひょっとしたら、ここから始まるラブストーリー。
「オークロード先輩……!」
ただし、相手が異世界のモンスターでなければ。
☆
「好きです!付き合ってください!!」
いつの間にか寝子島は島ごと異世界に召還されていて、そこには当然のごとく異世界のモンスターがいた。
住民たちは一時的にモンスター達に『魅了』されており、その存在に違和感を覚えることはない。
つまり住民たちとしては何の問題もなく日常生活を送ることが出来ている――今はこの状況こそが『フツウ』なのだ。
そしてそのモンスター達は、まるで最初から寝子島に存在していたような顔をして、寝子島の住民たちに猛烈にアタックをかけてきていた。
というわけで今、寝子島は空前の恋愛ブームなのである。
「きゃあああっ!!」
しかしながら、異世界のモンスターと一般の住民とは肉体的な能力に差がありすぎる。あまりに熱烈なアタックの際に、人間側に被害が及ぶこともしばしばあった。
しかし。
「――もう、ゴブリンシャーマン君。いつも言ってるでしょ、出会い頭にファイアーボールを撃つのはやめてって。また死んじゃったじゃない!」
「あ……ゴメン、つい……」
「もう!すぐ生き返るからいいようなものの!」
事もなげに校舎に入る女生徒。そう、召還されたこの世界の影響で寝子島の人は死んでもすぐ生き返るのである。
学校に行けばモンスターと人間との交流は盛んに行われている。
3年のオークロード先輩は応援団のエースとして一般オークとは一線を画していると人気だし。
2年のオーガレディさんは空手の全国大会で優勝したようだし。
水泳部の爽やかスポーツマンのダゴン君はまた自己新記録を更新しているようだ。
ほかにも1年のサキュバスちゃんは小さくてかわいいとか。
知性派イケメン、ゴブリンシャーマン君はちょっとおっちょこちょいなのがキュートだとか言われている。
特に生徒会室に入り浸っている魔王ライカーガスは特に顔立ちが整っていると評判だ。
勘違いしないでもらいたいが、モンスター達は一様に紳士的で、暴力を振るったりはしない。ただ人間相手の恋愛にはとことん不慣れなので、人間をどう扱っていいか分からず、アプローチの仕方を間違っているということなのだ。
しかし、一部の寝子島の人間の中には、この現状に違和感を覚え始める者も現れてきた。
さて、あなたは寝子島の『フツウ』を取り戻すことができるでしょうか……?
みなさんこんにちは、まるよしと申します。
今回は、前後関係なく楽しめるシナリオを目指して作成しました。
神魂の影響で寝子島がファンタジー世界に召還されました。日常生活にモンスターが入り込むことで生じるチグハグな日常を楽しむことができます。
『もれいび』『ひと』『ほしびと』関係なくお楽しみいただけます。
このシナリオでは、主に以下のような行動をすることができます。
◆事件を解決する?
寝子島の現状を解決するためには、そもそもこの召還の目的を知ることが重要となるでしょう。
その目的は、ズバリ跡継ぎ不足です。
モンスター達は常に冒険者や勇者たちとの戦いで危険に晒されています。
オークやゴブリンのような比較的弱い(人間程度の強さ)種族は、子供が育つ前に戦いの中で命を落とすことが多い。
悪魔やドラゴンなどの強力な種族は(群れを形成しないため)個体数が少なく、配偶者や子供ができにくいのです。
またそれらを支配、統治する魔王たちは長命種が多いためか婚姻や生殖、子育ての問題などに疎く、対策の立て方が分からないのです。
そこで現役魔王のひとり『ライカーガス』が、『異世界の能力者』と交流を持つことで優秀な子孫を残すことが出来るのではないか、と考えたのです。
しかしながら、異世界の相手と子を為すことができるとは限りません。そこで彼らが狙っているのは『スキルの伝授』です。
異世界の特殊な能力者であるみなさんの『スキル』――つまり『ろっこん』です――それをモンスター達が取得することで、次世代のモンスター達に引き継がせようというのです。
そしてみなさんは自分の『ろっこん』をとある方法でモンスター達にコピーしてあげることができます。その方法とは、口と口を数秒間接触させること――つまりキスです。ろっこんを伝授してあげるとそのモンスター個体がろっこんを使うことができるようになります。みなさんのろっこんが使えなくなるわけではありませんので、ご安心ください。
代わりに何か大事なものを失ったような気にはなるかもしれませんが。
現在は『魅了』の効果により寝子島の住民はモンスターがいる日常に違和感を抱いていません。ですがPCのみなさんのような一部の人間はそれに気付いています(気付いていなくてもかまいません)。時間の経過と共にゆるやかに『魅了』の効果は解けていくでしょう。
軽いショック(物理的、精神的)で一気に効果を解くことも可能とします。
その間にどうにかして異世界の能力者、つまり寝子島の住民と接触してスキル、あるいは特殊な素養を受け継ぎたい、というのが彼らの目的です。
彼らは好戦的ではありませんが、もし戦いを挑まれたらモンスターの誇りにかけてそれを迎え撃つでしょう。
あなたはどうにかして住民を守りながら、召還された寝子島を元に戻す必要があります。
◆モンスターとの交流(恋愛)を楽しむ?
モンスター達が好戦的でないことを幸いに、普段は味わえないような非日常感を楽しむこともできます。
もちろんあなたが望むなら、モンスターの誰かとひと時の恋愛を楽しんでもいいかもしれません。
参考までに、ガイドで紹介されたモンスターを挙げておきます。
『魅了』が効いている間は、頭が骸骨だろうが魚だろうが気になりません。
●魔王ライカーガス(悪魔)……骸骨が男子ブレザーを着たような姿をしています。過去の偉人たちの魂が寄り集まってできた悪魔族であり、骸骨の姿ですがアンデッドではありません。モンスター達の未来を憂いて、今回の寝子島召還に踏み切りました。
『……どうにか今回の召還でひとりでも我らに協力してくれる人間がいればいいのだが』
●オークロード(オーク)……オークの中でも特に強力な個体です。マントに学帽・学ラン・高下駄のバンカラスタイルで、応援団の中でも一目置かれています。魔術は使えませんが、鍛え抜かれた肉体はどのような攻撃をも跳ね返してしまうでしょう。
『魔王様も酔狂な……このような島に我らの未来を託すことができるような人材などいるわけが……』
●オーガレディ(鬼)……身長2mを超える角の生えた鬼族の女性です。寝子高女子の制服を着ていますが、その強靭な肉体を隠すことは出来ません。空手を始めとする格闘技に精通していながらも明るいさっぱりした性格で、クラスメイトからも人気があります。
『そうか?私は強くて面白い人間がいたら交流してみたいけど?それともいっそのこと連れて帰れないかな?』
●ダゴン(インスマス)……頭が魚型の魚人族の王です。水中の技能で右に出る者はいませんが、人間の文明にも興味があるようです。
『そうとも……少しでも我ら一族の役に立つものを持ち帰らなくては……それが人間であろうと、情報であろうと』
●ゴブリンシャーマン(ゴブリン)……モンスターの中では珍しく知性派のモンスターですが、当然人間とまともに会話もしたことがなく、どのようにアプローチでしていいか分かっていません。様々な魔術に精通していますが、ここでは使いどころが難しいようです。
『でも平和裏に交流するのはね……里では強ければよかったけどさー……人間は難しいよ』
●サキュバス(夢魔)……特に魅了の力が強い夢魔です。彼女自身は背の低い地味な外見ですが、魅了の能力により、それが対象者の理想の姿であるかのような強い錯覚を覚えるのです。魔術に多少の心得があり、背中の羽で空も飛べます。
『もともと人間との交流はあるけどさ……協力をとりつけるのは、ちょっと難しいんじゃないかなー?』
●もしあなたが『他にこんなモンスターとの交流を楽しみたい』という要望があれば、アクション終了までに『コメントページ』にてモンスターの設定を投稿してみてください。採用されれば、リアクションであなたが考えたモンスターが登場するかもしれません。
以下の注意点をよく読んで、ご利用ください。
※投稿したモンスターが必ず登場するわけではありません。
※登場したとしても、投稿された設定を元にGM側でリメイクしますので、イメージが変わる可能性があります。
※投稿したPCだけではなく、他のPCとのリアクションに使われる可能性もあります。他PCの投稿を見てそのモンスターにアクションをかけることも可能とします。
※PCのアクションではなく、あくまでコメントページでお願いします。アクションのみで設定されたものは原則無効とします。
◆死んでも生き返る?
この世界においては、寝子島の人間は死んでも生き返ります。
死の瞬間まで認識できますが、痛みはかなり軽減されます。死ぬ30秒ぐらい前の状態でその場で復活するイメージなので、服や持ち物の破損なども回復します。
ゲーム感覚の世界と捉えていただけると分かりやすいと思います。。
◆PC同士の交流(恋愛)を楽しむ?
モンスター側の『魅了』が効いている間は、人間対モンスターだけでなく住民同士の間でも『魅了』の効果があります。普段なんとも思っていない間柄でも、ふとしたきっかけで恋愛的感情が芽生えてしまう可能性があります。
もともと恋仲であったり、憎からず思っている関係であったりすれば、なおその感情が増幅されるでしょう。
異世界の召還に巻き込まれた中で、PC同士の交流を深めることができます。
もちろん、以上の行動に当てはまらないアクションも大歓迎です。
◆NPCについて
私立探偵 天利 二十(あまり にとお)については、マスターページをご参照ください。
どなたかのアクションが掛けられていれば、登場します。女性型モンスターに変な感じに言い寄られている(襲われている)可能性があります。
そのほかのNPCは今回リアクションに登場できません、ご了承ください。
◆アクションについての目安
アクションをかける際、PCの台詞や心情を交えて下さると、キャラクターの雰囲気を掴みやすいです。
そのPCが何をしたいのか、そのために何をするのか、という目的と手段をはっきりさせるとGMとしても行動を取らせやすく、その目的を叶えやすくなります(あくまでも目安、ですが)。
それでは、皆様の楽しいアクションをお待ちしています。よろしくお願いいたします。