梅雨の晴れ間の清々しい朝。
椿 美咲紀は、ご機嫌な様子で寝子島高校への通学路を歩いていた。
毎朝かかさずにチェックしているテレビの占いで、今日は上半期最高の日だと太鼓判を押されたのだ。
おまけに、ラッキーカラーの赤い花模様のハンカチも持っている。
「これで、良いことが起こらないはずないよね♪」
ばこっ!
「きゃう!」
浮かれた先から、電信柱に顔をぶつけてしまう。
「いたたたた……」
思わずしゃがみこんだ美咲紀の視線の先で、三毛猫があきれたように彼女を見つめていた。
「かわいー」
動物好きの美咲紀はすぐに痛みを忘れて、三毛猫に声をかける。
「おいでー。どこの子なの? 飼い猫かな? 赤い首輪可愛いね。綺麗な毛並み」
しかし、親しげに手招く美咲紀にそれ以上の興味を示さず、三毛猫はくるりと背を向けた。
ちりん。
首輪につけられた鈴の愛らしい音とともに、猫の背中に見事な錦鯉が現れた。
正確には、錦鯉に見える模様だ。
「あれは!」
美咲紀はすぐに噂を思い出した。
『錦鯉模様の猫の写メを撮って待ち受けにすると、幸運が訪れる』
美咲紀は急いで鞄から携帯を捜した。だが、焦るほど携帯は見つからない。
「やだ、早くしないと逃げちゃう」
そうしている間にも、三毛猫は悠々と狭い路地を奥へと歩いて行く。
「待って、行かないで!」
ようやく携帯を見つけた美咲紀は、カメラを構えて三毛猫を追った。
鈴の音を手がかりに角を曲がり路地を抜けると、小さな空き地で三毛猫を見つける事が出来た。
「チャンス!」
しかし、撮影ボタンを押そうとした美咲紀の手がぴたりと止まる。
「あ、あれ? どの子だっけ?」
空き地は猫の集会場だったようで、十数匹の猫が久しぶりの日差しを満喫していた。
首輪をつけた三毛猫だけでも5匹はいそうだ。
とりあえず、全部の三毛猫の背中を写そうと空き地に足を踏み入れた美咲紀は、別の噂を思い出す。
『ハートが破れた模様の猫を写メで撮ると、不幸が訪れる』
たしか、その不幸の猫も三毛猫だったような……。
その猫がこの中にいたらと撮影を躊躇う美咲紀の気配に気付き、猫達は空き地から逃げ出した。
千載一遇のチャンスを逃し、がっくりと肩を落とした美咲紀の脳裏に、今朝のテレビの映像がよみがえる。
『今日のあなたは、上半期最高の運勢です。ラッキーカラーのアイテムを身につければ、向かうところ敵なし!』
最高の運勢! 向かうところ敵なし!!
「そうよ! 一度くらいで諦めたりしない。放課後、また探して、今度こそ絶対に幸運の待ち受けを手に入れるんだから!」
なんたって、今日の美咲紀は最強なのだ。
「そうだ、皆に幸運の猫の事、教えてあげよう!」
協力者の目が増えれば、猫の発見率もあがるかもしれない。
美咲は学校への道を急いだ。
初めまして。
なのにPCさん使わせてもらっちゃいましたよきゃー!><
美咲紀さん、ごめんなさい、ありがとうございます。
改めまして、よし乃と申します。
これから、皆さまの寝子島生活のお手伝いをさせていただきます。
よろしくお願いします。
さて、錦鯉三毛猫のあやかり待ち受けについてですが、
三毛猫の背中の錦鯉模様がきちんと写っていればいるほど、効果があるという噂です。
写メは自分で撮ったものだけに、ご利益があると言われています。
ハートが破れた模様の猫は、撮るだけで効果があります。
ただし、自分で撮ったものだけに効果が出ます。
特に恋愛関係に打撃を与えるという噂です。
猫の行動範囲は、寝子島高校周辺の住宅街です。
イラストは校庭になっていますが、学校の敷地には出没しません。
噂の幸運の待ち受けを、あなたも手に入れてみませんか?
皆様のご参加、心よりお待ちしています。