「今週末から、南風 草子(はえ そうこ)の特別展示が始まるんですよ」
来場者にパンフレットを手渡しながら、森繁美術館の学芸員、箕輪 亘(みのわ わたる)が告げた。
南風 草子は、寝子島出身の彫刻家だ。
動物と自然をモチーフとした作品を多く発表することで、近頃名を上げてきた人物である。
「今回の目玉は、『前進』という作品です。触れると前向きな気持ちになれると評判の作品なんですよ」
南風 草子の作品にしては珍しく、天を仰ぐ女性像なのだという。
「対になる『停滞』という作品と同時に公開されるのは、このたびが初になります」
箕輪の話に、来場者はうなる。
「『前進』に『停滞』とは、また極端だねえ」
「はい。しかし『停滞』も、前に進むための力をたくわえているのだという解釈もございまして」
「ふむ、なにやら元気がもらえそうだね。また週末に見に来るとしようか」
「ええ、ぜひともお待ちしております」
箕輪はきれいなお辞儀とともに来場者を見送った。
こんにちは。
今回は、美術館に行きませんか? というお誘いです。
森繁美術館は、地図でいうと、K-5のあたりにあります。
中は常設展示と特別展示とに区切られていて、
常設展示には、寝子島由来の絵画や出土品、彫刻等が展示されています。
どちらも入場可能となっていますが、どちらか片方、または両方をご覧になりたい方は、その旨を明記していただいたほうが安心です。
また、展示内容に関してはアクションで自由に記入していただいて構いませんが、
内容によってはそのままの描写とはならずに、こちらで調整する場合もございますのでご了承ください。
とはいえ今回の目玉はガイドにもありますように、寝子島出身の彫刻家の作品群です。
ダイナミックな動植物を表現するので有名な南風 草子の作品が多数展示されています。
特別に、『前進』と『停滞』のみ、手で触れることができるようになっています。
『前進』は、天を仰いで立つ女性の裸像。
『停滞』は、膝をついてうつむく男性の裸像。
『前進』に触れると、前向きな気持ちになるという噂があります。
『停滞』に触れると、内省的な気持ちになるという噂もあります。
気持ちに区切りをつけたいという方は、触れてみるのもいいかもしれません。
もちろん、深く考えずにうっかり触れてしまうのもいいでしょう。
そこはスルーして、ご自由に過ごされるのも大歓迎です。
展示場には、学芸員の箕輪 亘(35歳。独身。草食系)がいます。
解説や館内の案内は彼がしてくれます。
お気軽にお声がけください。
(ただし、あまり騒々しくしていると叱られてしまうでしょうけれど。)
なお、南風 草子(36歳。既婚。肉食系)が来場する予定はありません。
(上記二点の彫像に関しては、制作者のろっこんの影響を受けているものと思われますが、
気のせいで済む程度なのでわざわざ追求する必要はないと思います。)
もし誰かと待ち合わせをしたい場合や、美術館への行きや帰りの道中の描写を希望される方で、
むしろそちらに重点を置きたいのだという方がいらっしゃいましたら、
アクションに記載していただければ極力対応いたします。
ご自宅を出てから帰るところまでの間なら、対応可能だと思います。
土曜日の午後を、美術館でゆったりと過ごしてみませんか。
高校生の皆さまばかりでなく、社会人の皆さまも、お友達や恋人、ご夫婦(?)またはお一人で、お気軽にお越しくださいませ。