ある雨の日。
その少女は現れた。
何の前触れもなく、何の理由もなく。
雨の中にだけ存在するその少女は年の近い子供達と遊び、楽しく笑っていた。
だが時代が進むにつれ、子供たちの遊びは変化し次第に彼女と遊ぶ者は少なくなっていった。
小さな祠の前で彼女は訪れなくなった子供たちを待つ。
雨の日にだけ。
誰も通らなくなった道で。
時は流れ、現在。
寝子島ではある噂が広まっていた。それはよくある怪談話であり、雨の日に少女と出会った者は『連れていかれる』というものである。
北条 冬華もその噂を聞いた一人であった。
よくその少女が現れるというその場所にやってきた彼女は辺りを見回す。
すると小さな壊れた祠を見つけた。
かなり昔に壊れた物というよりは壊れ方から見ればつい最近壊れたように見える。
「祠……? ですか。どうしてこんな所に?」
そう、この場所に祠があるのは不自然なのだ。
九夜山の登山道より遠いこの場所は辺りには民家もなく、見渡す限り何もない。
あるのは森だけである。
その森も整備された入り口はなく、ただ森がそこから始まっている、といった風であった。
祠があるには少々不自然な場所であると冬華が考えたその時、ぽつぽつと雨が降り始めた。
「雨……傘、持ってきてないんですよね……」
その瞬間、彼女の頭に直接誰かの声が響く。
だがそれはノイズ交じりであり聞き取るのは難しいものであった。
「な、に……これっ!」
頭を押さえながら周囲を見渡すと黒く長い髪をした少女が立っているのが見えた。
彼女の背には羽があり、頭には立派な二本の角があった。
人に近いがその姿は悪魔と呼ぶには相応しい。そんな姿である。
「…………」
「ぐ、あぁ、頭が……痛い……っ」
強烈な頭痛がした後、冬華はフラッシュバックの様に何かを思い出しそうになる。
だがそれを考えることを許さず少女は冬華に襲い掛かった。
地を滑る様に滑空し両の手に鋭い爪を煌めかせ、悪魔の少女は冬華へとその爪を振り下ろす。
間一髪の所で冬華は転がり、辛うじて爪の一撃を避けるが右腕を軽く裂かれてしまったようで一筋の血が垂れている。
カウンター代わりに放った蹴りは躱されてしまったようで悪魔の少女にはダメージはないようだ。
「う、くっ……」
「あっぁぁぁっぁあああああああああああああああああああああああああーーーッ!」
少女が叫び声をあげると辺りに黑い稲妻が降り注ぎ、地面を砕いて裂いた。
この一帯だけが薄いもやに包まれている様で、これだけ激しい稲妻が落ちても遠くの車や歩く人々は不思議と何も気にしていないようである。
どうやらこちらの様子は見えないようだった。
身動きが取れない冬華目掛けて空中から少女は接近し、彼女の首をはねようと狙う。
「キリエ……ちゃ、ん……?」
「……っ!!!」
彼女の喉元まで迫っていた鋭い爪がその名を聞いた瞬間、ぴたりと止まった。
それはフラッシュバックする景色の中で幼い冬華が彼女をそう呼んでいたのである。
咄嗟に口から出たその言葉を聞いて悪魔の少女は苦しむ様に身悶えし始めた。
「アアァァァァアアアアア、グ、ア、ワスレ……ナイ……デ……ッ!」
それだけ言い残し、霧の様に彼女は消えてしまった。
雨はそれと同時に上がりその場には冬華だけが残される。
「どうして……一体何が……あったの……キリエちゃん……っ」
冬華は幼き日に笑いあった少女がどうして変わってしまったのか、それを確かめる事を決意し祠について調べる為、その場を後にするのであった。
「ずいぶんと面倒な事になってますねぇ……まあ、壊すべき物が見つかるまで……静観、ですかねぇ……」
金色の髪をしたわがままボディの女性は立ち去る冬華を物陰から見ていた。
彼女の名前はツクヨ。
この寝子島の世界の住人ではない。
彼女は食料の買い出しに来たらしく、目立たないように現代の一般人が着ているような服装となっている。露出が多めなのはいつも通りであるが。
手持ちの食糧の詰まったスーパーの袋を空間を歪ませ、どこかへ送るとスマホを取り出し誰かに電話をかけた。
「あーもしもし、ツクヨですぅー。帰るの遅れますからそのつもりで。大丈夫ですよ、食料は先に送りましたぁ。それじゃ」
「ちょ、ツクヨあなた、今ど――――」
そこまでで通話を強制的に切り、ツクヨはスマホの電源を落とす。
「あひゃはっ!……楽しそうな事があったらぁ……無視はできないですよネェ?」
狂気を瞳に宿し、心底楽しそうな笑顔を浮かべた彼女は一人どこかへと去っていくのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ! ウケッキです。
雨の中に佇む少女……実にホラーです。
このシナリオではろっこんが強力に描写されることがあります。
また、このシナリオの少女とは幼き日に面識があってもいいですし、なくてもいいですのでご自由に選んでくださいませませっ!
北条 冬華さん、登場していただきありがとうございました。ガイドはあくまでイメージなので気にせずまったく別のアクションでもOKですよ!
◆判明している情報
・雨の日だけ壊れた祠の周囲に出現する。
・名前は『キリエ』。
・悪魔のような姿をしている。
・鋭い爪と稲妻で襲ってくる。
・出現地域は薄もやで包まれ、周囲からは認知できなくなる。
◆目的
キリエの討伐
:彼女は徐々に出現エリアを拡大しており、薄もやの範囲も段々と大きくなっています。これ以上被害が広まり、フツウが壊れてしまう前に対処しなければなりません。
◆予想されるルート
※あくまで予想なのでこれ以外でも全然OKです。
・キリエの出現地域に赴き、雨を待つ。
出現するキリエと戦います。
倒す方法が判明しなければ彼女は何度も復活するので注意が必要です。
・キリエの情報を探る。
過去の資料を漁り、キリエに関する記述がないのか探ります。
もしかしたら討伐するきっかけやヒントが見つかるかもしれません。
・ツクヨと接触を図る。
金髪の謎の女性ツクヨと接触を図ります。
基本的には静観するようですが『壊すモノ』がはっきりしている場合、手を貸してくれるかもしれません。
◆登場キャラ
ツクヨ
:寝子島ではない世界から来たわがままボディを持つ金髪紅眼巨乳の女性。
自らの血を武器とするその戦闘能力は高く、一人で多数の敵を屠る事も可能。
基本的に戦闘狂であり、楽しい事には目がない。
寝子島ではいくらか能力が低下するらしく、本来のパワーの半分も出ないらしい。
なお、ポテチはコンソメ派。