力尽きた太陽が海の中に落ちていく。
空は茜色となった。そこに夜の気配が混ざり込み、濃厚な色で寝子島を包み込んだ。
個人の識別が難しくなる時間帯、誰そ彼時を迎えようとしていた。
その時を待っていたかのように黒い影がポツポツと姿を現した。
小さな影は誰よりも早く公園へと走る。見つけた滑り台に攀じ登り、両手を挙げて滑り降りた。
落ち着いた雰囲気のある影は書店に向かった。反応しない自動ドアを擦り抜けて平積みになった新刊の小説に顔を近づけた。
背を丸めた小さな影はゆっくりと歩く。散歩を楽しむ調子で島内を巡る。
そのような影の行動に島民は何も反応しなかった。しかし、皆無ではなかった。
大学生風の男性が足を止めた。長身の影の動きを目で追う。
「なんだろう?」
不思議な現象に首を傾げながらも近づいていった。
今回は夕方に起こる、少し不思議なお話になります。
逢魔時だと少し怖い印象を受けますが、誰そ彼時だと柔らかい感じになりますよね。
短い説明になりますが、下記をご覧ください。
☆★☆今回の舞台☆★☆
夕方の寝子島。
☆★☆ 黒い影 ☆★☆
黒い影は島民に紛れて自由に動き回っている。子供から老人まで色々なタイプが存在する。
正体は不明。悪霊に類する者ではない為、身の危険を感じることはない。
見た目通りの影なので触れることはできない。自発的に喋ることもできないが、話し掛けると動作で答える。
例1:あの影は去年、亡くなったおばあちゃんでは? 探し物をしているのかな。
例2:心臓が原因で天使になったあの子が戻ってきてくれた。影になって元気に庭で遊んでいるわ。
例3:一人でカラオケのつもりが、アフロの大野がいる。影でもわかる。歌に合わせて踊る生霊が何とも。
説明は以上になります。
例ではPCと関係のある人物で書きました。
ですが、偶然に影を見つけて戯れてもいいのです!
もちろん、PCの隠された背景を仄めかして意外な一面を見せることも、
それはそれで素敵だと思います。人物に深みが出ますよね。
暑い夏にほんの少し、涼しげでハートフルな物語はいかがでしょうか(ご参加、お待ちしています)。