「お前と飲む酒は……うまいな」
過去の残照。
戻らない過去。
それは戦場に生きる傭兵にとって、当たり前のように常に傍にいる隣人ともいえる程……近しいものであった。
命の輝きは一瞬である。
昨日笑っていた顔も。
昨日泣いていた顔も。
失われる瞬間は――ほんの一瞬。
取り戻せない時間は……亡くしてから気づくものなのである。
死んだ傭兵団が森をうろついている……そんな噂話がとある村近くで囁かれるようになったのは、ほんの一月前。
森を通過しようとした商人達が襲撃され、それを皮切りに通過する者は誰かれ構わず、どこからともなく現れる死者で構成された傭兵団に襲撃されるようになったのである。
噂を聞き付けた腕に覚えのある者達が森へと何人も入っていったがその全ては帰らぬ人となっていた……。
そして……月が映える夜。
逞しい筋肉に身を包んだ
尾鎌 蛇那伊は焚き火の前に座り、温かいお茶を木のコップに注ぐと隣に座っていた小柄な少女、
白 真白へと渡す。
「今夜は冷えるわ、飲んでおきなさい」
「うん、ありがと」
「傭兵さん仕込みの夜を安全に越す特性のお茶だから効果は折り紙付きよ」
息を吹きかけ、よく冷ましてから一口お茶を口に運び真白は尾鎌に尋ねた。
「えっ、傭兵さんと知り合った事があるんですか!?」
「ええ、少し昔の話だけれどね……ナスデンっていうとても強い人と知り合ったのよ」
尾鎌は上空に輝く少し欠けた月を仰ぎ見ると目を細めて言葉を続ける。
「ちーあちゃんの依頼でね、呼び出された時に手伝ってくれる傭兵団だったの。何度か助けられたこともあったわ……それで戦いが終わった後、飲み物を傾けながら……よく、こうやって月を眺めていたわねぇ……彼は今頃はどこで何をしているのかしら」
ちーあとは異世界の人物を助ける為に彼らをこの異世界に召喚した張本人である。
水色髪の元気いっぱいの少女だが今回は体調不良という事もあり、召喚したもののこの場に同行はしていない。
ナスデンを想い、少し寂しそうな尾鎌の横顔を見て真白は大丈夫ですよ、と言葉を紡ごうとしてその言葉を飲み込んだ。彼女もまた知っていたからである。傭兵という稼業は危険と隣合わせであるという事を。
必ずしも存命である、とは言えない……安易な言葉はかけられないという事を。
辺りに静寂が訪れたその時、二人の後方から誰かが歩いてくる音がした。
二人が振り返るとそこには月明かりに照らされた大柄な軽装の戦士が立っている。
彼は肩や腕、脛などを軽装な鉄製の装甲で覆ってはいるが他の部分の防具は布製や革製であり、肌の大部分が露出している。
尾鎌に勝るとも劣らない筋骨隆々とした筋肉の持ち主であったが、肌はまばらに剥がれ落ちており、剥がれた部分からは骨が見えていた。明らかに生者ではない。
その場で、咄嗟に誰よりも早く行動したのは真白であった。
彼女の視線は焚き火の傍にある剣に向けられた。それはちーあの仲間で同じく異世界の者である金髪の少女ツクヨから借り受けた武器で鋭い切れ味が特徴の赤い剣だった。
(今ならあれで……先制できる!)
彼女は焚き火の傍に置いていたツクヨの加護を得る赤い長剣『血潮の刃』を拾い上げると突きの体勢で謎の戦士に先制攻撃ともいえる突進を試みたのである。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「…………」
謎の戦士は無言のまま彼女の突きを篭手を使って防御する。刃の切っ先が鉄製の装甲部分に当たり、金属音を響かせながら弾かれた。
だが謎の戦士が反撃動作に移る前に真白は素早く弾かれた剣を斬り返し、彼に二回ほど斬撃を浴びせる。
真白の鋭い斬撃を受けながら謎の戦士はゆっくりとした動作で片手に持っていた身の丈以上の大剣を振り上げた。
後ろに飛びのき、直撃は避けた真白であったが強い剣風に吹き飛ばされてしまった。
「きゃあぁぁーーっ!」
あわや木に叩きつけられる所であったが寸前の所で尾鎌が真白をキャッチし、彼女を守った。
吹き飛ばされ、目を回している真白を地面へ下ろすと尾鎌はイザナの加護を受ける雷の二本の長剣『二刀一神』を抜き、振り下ろされた謎の戦士の大剣を刃を交差させて受け止める。雷で生成されている刃が大剣とぶつかり合い、火花の代わりに小さな稲妻を放つ。
「ずいぶんと、男前になったのね……ナスデン団長っ!」
「……邪魔者には死を」
「聞く耳持たずってわけね、上等だわ」
二人は同時に少し飛びのいて距離を離すと、数度刃をぶつかり合わせる。
お互いの剣速が互角なのか、どの斬撃も決定打には至らない。
それが数分程続いた時、ナスデンはぴたりと動きを止めた。
尾鎌は戦闘態勢を解かずに言葉を投げる。
「あら、もう息があがったのかしら?」
「……任務変更、撤退する」
遥か上空までナスデンは跳躍すると、ふっと溶ける様にその姿を闇に消した。
尾鎌は剣を下ろすと、月を見ながら呟く。
「ナスデン団長……死んでまでも貴方は何をしようというの……」
◆
「……あなたが仕留めそこなうなんて、随分と珍しいですね」
「申し訳ありません。ですが撤退しなければ――――」
「いえ、いいのです。どの道、あのままでは決定打に欠け事態を長引かせただけでしょうから。さて……思った以上の手練れが集まっている、それなら……」
跪くナスデンに目もくれず考えに没頭する背の低い黒髪の少女は手を広げて幾重にも重なった魔法陣を空中に開いた。
見た事も無いような文字が魔法陣に浮かび上がり、上から下へと凄まじい速さで流れていく。
それを目で追い、少女は更にぶつぶつと考えを垂れ流す。
「まあ、いいです。強ければより強いアンデッドが作れます。彼らには……この死霊術師イアの実験体になって頂きましょう。それに……」
魔法陣にはモニターの様に真白の映像が薄く映っていた。その映像は真白のたゆんとした豊満な胸がズームされている。
イアはその胸を見た後、自分の絶壁と言ってもいいほどの胸を見て恨みの籠った視線を映像の中の真白の胸に向ける。
「あんな脂肪の塊が世界に存在している事が許せません! いいでしょう、ふっふっふ……そんな塊を持って生まれた事を後悔させてやりますよ! ちっぱいこそ、正義です! あーっはっはっはっはっは!」
起伏の無い胸を一生懸命に張りながら、イアは笑う。
彼女の高笑いが部屋に木霊していた。
お初の人もそうでない人もこんにちわ! ウケッキです。
シリーズ物には関連しない単発ですのでお気軽に参加をどうぞっ。
尾鎌さん、真白さん、ガイドに登場していただきありがとうございます。
ガイド本文はあくまでもイメージなので、傭兵との関係や使うアイテムなど、すべて自由に設定してお楽しみください!
※ろっこんが通常よりも強力に描写される場合があります。
※一部に過激な表現がされる場合があります。
さて今回は異世界のとある森に突如出現した死者の傭兵団が相手です。
異世界の少女『ちーあ』により、皆様は事態を解決する為にこの異世界に召喚されました。討伐後はちーあによって元の世界に送還されます。
死者の傭兵団には痛覚がなく、倒れても塵になってもしばらくすると土から蘇ってくる厄介な相手。
彼らを完全に討伐するには元凶である『死霊術師イア』を倒す必要があります。
彼女がいる限り、死者の傭兵団を倒す事はできません。
なお、下記に記された情報は事前に誰かに聞いて得たというのでもいいですし、全く知らないという設定でもOKです。
また、団長のナスデンとかつて共に戦ったことがある、知ってはいるが会ったことはない、などして頂いてもOKです。
◆進行ルート
●傭兵達と戦う
小屋の周囲に展開している傭兵団を誘き出し、彼らと一戦交えるルートです。
このルートでは制限無く湧いてくる多数の強敵と戦う事になるので継戦能力が重要となります。
・予想される敵
死霊傭兵
:肌の一部が剥がれ骨の見えている傭兵。力のリミッターが外れており、
傭兵時代の技もそのまま使ってくる為に非常に危険。
鍛えられた筋肉に支えられた体は亡者と言えど意外と丈夫でもろくはない。
武装は剣や弓、鎧を装備している。
集団戦闘、ゲリラ戦闘、単体での戦闘いずれの場合でも高い戦闘力を誇り侮れない相手。
無策で突っ込めば返り討ちにあうので注意。
ナスデン
:傭兵団の団長。
大柄な体格で筋肉の鎧で守られていると言っていい程、筋骨隆々で逞しい。
簡素な肩当や腕当てを纏っており、上裸。
だが鍛えられたその筋肉には並の剣や拳、銃弾は通じない。
身の丈を超える巨大な大剣を軽々と振り回す。
●色気の異空間に乗り込む
死霊術師イアのいる小屋の唯一の出入口である扉に仕掛けられた罠に乗り込み、破壊するルートです。
小屋の扉には精神の罠と呼ばれる空間魔術が施されており、
中に突入した誰かが色気の異空間にある水晶を破壊しないと小屋に入ることができません。
一度破壊されれば、扉は通常の扉に戻り誰でも出入りができるようになります。
※精神の罠に突入せず、扉に攻撃を与え続け破壊して強行突破する事も可能ですが、
その場合イアが強化され彼女と戦うメンバーが不利な状況となってしまいます。
・色気の異空間
:薄っすらとピンク色のオーラに包まれた空間で入った人物が負けてしまいそうな
アブナイ誘惑やアブナイ罠を仕掛けてくる空間です。
誘惑や罠に打ち勝ち、誘惑に見事打ち勝った者の前にのみ、水晶が出現します。
●イアと対決する
このルートでは色気の異空間が破壊されるのを小屋近くで隠れて待ち、
体力を温存して異空間の破壊の後、小屋の突入してイアを倒すルートです。
強力な死霊術と上級魔術を扱うイアと戦うにはある程度の備えや作戦が必要でしょう。
無策では彼女の魔術の前に圧倒されてしまうと思われます。
なお罠を解除せず扉を破壊する事にした場合、
扉が頑丈な為に異空間に乗り込む予定だったメンバーとこのルートのメンバーが総攻撃を仕掛けますので、
疲労してしまいイアとの対決時にメンバー全員の能力が半減します。
・予想される敵
死霊術師イア
:小柄なちっぱいの黒髪少女。
豊富な死霊術のほか、火炎や氷雪系統の上級魔術も扱う。
遠距離ダメージを無効化するイヤリングを装備している。
人間の事は実験対象程度としか思っていない模様。
スケルトン
:イアによってほぼ無尽蔵に呼び出される骨の魔物。瞬時に召喚されるが、
数秒で崩れて塵に帰る為、耐久度はない。
スケルトンを津波の如く放出する、彼らを集めて巨大な骨の爪を形成するなど、
主にイアの攻撃手段として使用される。
◆支給品
今回、ちーあがインフルエンザの為、皆様を彼女が手助けする事が難しいです。
ですが送り迎えのゲート端末と支給品はなんとか用意できたようです。
下記のアイテムは一人一つだけもっていく事が出来ます。
●ツクヨの加護水晶
金髪巨乳娘のツクヨさんの加護を受けられる水晶のネックレスです。
戦闘中に一度だけツクヨさんを召喚し、必殺技を使用してもらえます。
『ブレイジング・ブラッド』
:ツクヨさんの必殺技の一つです。
広範囲を血の鎖で薙ぎ払ったあと炎の長剣を神速で複数回抜刀し斬りつけた回数分だけ爆破します。
何人かでネックレスを同時に使用して召喚する事で斬りつける回数が変化します。
『血潮の刃』
:ツクヨさんの加護水晶を選ぶと借りる事ができるツクヨさんの血液から生成された長刀です。
驚異的な強度と切れ味を誇っており、刃こぼれせず何度も斬りつける事が可能です。
●イザナの加護水晶
黒髪ちっぱい娘のイザナさんの加護を受けられる水晶のネックレスです。
戦闘中に一度だけイザナさんを召喚し、必殺技を使用してもらえます。
『フルボルト・フィニッシュ』
:イザナさんの必殺技の一つです。両手に構えた雷の長剣で単体の対象を斬り刻み、
最後に極太の雷ビームを零距離で撃ち込みます。
何人かでネックレスを同時に使用して召喚する事で雷ビームの威力が上昇します。
『二刀一神』
:イザナさんの加護を選ぶと雷神、風神と呼ばれるイザナさんの二本の長剣を借り受けます。
それぞれ雷と風の属性剣であり重さも軽い為、軽々と振り回せます。