からりと晴れたいいお天気。こんな日にまっすぐ帰るなんて馬鹿げてる。
放課後のシーサイドタウン、真新しい店舗がひしめくキャットロードに、
最上 るるかは来ていた。
「なに買っちゃおっかなー。やっぱり春っぽいアイテムが欲しいもんね」
ウィンドウショッピングは楽しくて、足取りが軽くなる。
「あれれ、猫ちゃん」
後ろから、そんな声が聞こえて足をとめた。
振り向くと、同じ学校の制服を着た少女が街路樹を見上げている。
同じ一年生で芸術科の
串田 美弥子だ。
(どこどこ?)
興味をひかれて見上げると、木の枝の上を猫が一匹歩いてる。
(ん? なんだろ?)
猫のせいで揺れる枝から、何か白い物がふわりと飛んで落ちてきた。
頭にぶつかりそうになって、慌てて両手でキャッチする。
(紙?)
よれよれになってはいるが、紙飛行機の形をしている。
「それなぁに?」
美弥子もるるかの手元をのぞきこむ。
「んーっと」
文字が書いてあることに気づいて、るるかは紙をひろげてみた。
『ふらりと姿を現して、いたと思ったらもういない。閉じ込めようとした手をすり抜けていく不埒なおまえ。心を乱すのはやめてくれ』
すかしの入った白い和紙に、マジックでこんなふうに書いてある。
るるかの目がきらりと光った。
「きゃああ、これってラブレターじゃないかなっ」
テンションがあがって、紙を持ってくるくる回る。
「そーだっと。みんなにも教えてあげなきゃ」
るるかはすかさず携帯を取り出し、文面を撮影した。
「見せて?」
手を出す美弥子に、紙を渡してあげる。
「んー、出来の悪い歌詞にも見えるよ?」
「ううん、ラブレターだよきっと。誰が落としたのかな」
「紙飛行機になってるってことは、とっくにフラれちゃったのかもしれないね」
「やだ、悲し-!」
見知らぬ誰かの恋の気配にそわそわして、るるかはメールを打ち始めた。
『キャットロードでラブレター拾っちゃった! 持ち主の心当たりがある人いない?』
(タイトルを『拡散希望』にして、写真を添付して、送信、っと)
「うわあ、携帯打つの速いね」
「女子高生だもん。ね、誰が飛ばしたんだと思う? 気になる-!」
「そうだね。あっ、見てここ、紙にキャットロードのロゴが入ってるよ」
「ホントだ。じゃあ、どっかこのへんのお店の人が書いたんだね」
「んー。この紙の模様もね、どこかのお店で見たことあるような……。買い物がてら、ちょっと探してみようかな」
「いいね! わくわくしちゃう」
「あれあれ、また猫ちゃん」
路地から猫が一匹二匹とさまよい出てきて、美弥子の回りをぐるぐる回る。
「あはは、面白いよ、この子たち。お鼻がひくひく動いてるよ」
くんくん匂いをかぐ猫に喜び、美弥子は紙をかかげて駆けだした。
「ほら、猫ちゃんたち、ついておいでー!」
「あっ、待ってよぉ」
ラブレターの持ち主が判明しないと、どきどきしちゃって眠れない。
(誰か見つけてくれないかなあ。もしかしたら、すっごく情熱的で最高にかっこいい人が書いたのかもしれないもんね!)
はじめまして。瀬野です。
初めてのシナリオでどきどきしてます。
個性豊かな面々で送る学園生活が楽しいものになりますように。
今回は放課後のキャットロードが舞台です。
キャットロードはアーケードタイプのショッピング街。地図でいうと、I−9、J−9の位置にあります。
飛んできた紙飛行機の持ち主を探すかたわらで、お友達とショッピングを楽しんだり、買い食いをしたりして、まったり過ごすのもいいですよね。
キャットロードには素敵なお店がたくさんあります。いくつか紹介しますね。
・コーヒーショップ:豆の購入もできます。クッキーも安くておいしいよ。
・ケーキ屋さん:おすすめはチーズケーキ。内装がピンクでかわいいの。
・アクセサリーショップ:いつ行っても欲しい品が見つかるカジュアルなお店。
・楽器屋さん:試しに弾いてみちゃう人たちで店内はいつもにぎやか。
・本屋さん:専門書も充実。店長さんが美人で巨乳!
・お寿司屋さん:店主は強面だけど、ネタが新鮮でおいしいよ。
・コンビニ:入り口付近が猫のたまり場になってるの。おこぼれがもらえるから。
どこに足を運ぶか迷っちゃいます。お買い物ついでに聞き込みなんていかがでしょう。
ラブレターなんかに興味がないっていう方も、それはそれで、気ままに店先をぶらぶらしちゃってください。
紙飛行機はどこかのお店の紙製シート(飲食店で、ランチョンマットの代わりに敷いてあるやつ)で、笹の葉っぱの模様がすかしで入ってます。
残念ながら、筆跡はあまりきれいじゃないようす。あふれる情熱がほとばしっちゃったのかもしれません。
ラブレターなのか、暗号なのか、ただの業務連絡なのか。うっかり紛失しちゃった物かもしれないので、持ち主に届けてあげたいものです。
どうも、ラブレターにはいい匂いが染みついているらしく、猫がそわそわ寄ってきます。
まとわりついてくる猫と一緒に、答えを探してみませんか。