背の高い本棚と分厚いカーテンに囲まれた図書室。わずかな光を受けて入り口に貼られた『おしずかに!』の張り紙が白く目立っている。室内では黒髪の女子学生がひとり、本棚の前に立っていた。『天才ツッパリ少女』と呼ばれる、1年3組の
桜崎 巴だ。いささか時代錯誤なロング丈に誂えたスカート、実際以上に高く見える背丈、鋭い目つきと外見は怖いが、中身は相当のインテリ。政治経済の指南書をはじめとして広い分野の本を読む読書好きだった。図書委員にも自分から立候補した経歴がある。
「あ~あ。もうちっと大事にしてほしいね。ほつれてるじゃねえか」
悪態をつきながら傷んだ本を取り出してはため息をつき、見当違いなところに置かれた本は十進分類法に従って正しい位置に戻していく。
「元の場所に戻せないなら、借りるなっての。ったく」
口は悪いが、本には優しい。本は巴に無限の知識をくれる師であり、信頼できる友なのだから。
「もうすぐ梅雨になっちまうぜ。あーやだやだ」
最後に手にした本をしまうと、キャスターにどっかりと座りこんだ。湿気は直射日光と並んで、本の大敵なのだ。しばらく頭を抱えていた巴は、一つの考えに行き当たり、やおら頭を上げた。
「そうだ。陽気が続いてカラッとしてる間に、あれをやっちまうのはどうだろうね」
その時がらりと扉が開いて、司書教諭の
早川 珪先生が入って来た。赤いシャツに黒のカーディガンをラフに羽織っている。いつもながら、高校教諭というお堅い肩書きとはギャップを感じる格好良いいでたちだ。ついでに言うと、顔もいい。
「おや、桜崎さん。どうしたんだい?」
「ああ、先生。話があるんですが」
「ん? なんだい?」
「曝書をやりたいと思うんですがね」
なぜか巴はそこで不敵に笑う。
「なあに、先生にご迷惑はおかけしませんって。監督を引き受けてくれりゃ充分ですから」
曝書。それは本来、書籍の敵たる日光を味方につける、メンテナンスの儀式であった!
【シナリオ概要】
桜崎 巴さんをはじめとする図書委員たちの呼びかけで、曝書(ばくしょ)が行われることになるようです。長年本棚に鎮座しきりの本たちを、リフレッシュさせてあげましょう。なぜかののこも参加しています(なんだか面白そうだから)。作業の監督は深城 和哉マスターのシナリオ『Search for lost books』で初登場のNPC、司書教諭の早川 珪先生が行います。
曝書とは、平たくいうと本の虫干しです。蔵書管理を含めた図書の総合メンテナンスを差すこともあります。和装本があれば日に干し、一般的には洋装本は日陰に干します。今回全部の本を対象にするのはさすがに無理がありますから、一日使ってやれるだけの量を曝書します。本を屋上まで持っていくのはかなりの重労働。図書委員以外の方のお手伝いも大歓迎です!
力仕事や直射日光が苦手な方は、図書室内で本の修繕や分類の手伝いをすることができます。修繕は手先の器用な人に向いています。長年本棚に寝かされていた本はほこりだらけ。噂では、歌う不気味な本や、羽ばたく本が眠っているとか……? ののこが気づきそうになったら、うまく注意をそらしてください! ののこはたくさんの本に興味を示し、作業開始時には室内に留まっていますが、その後は『一番にぎやかで面白そう』な方に向かいます。
曝書中でも図書室はオープンしていますので、図書室には出入り可能です。
作業に大わらわの図書委員を眺めながら、のんびり図書室で勉強するもよし。
趣味の読書にいそしむもよし。
ノリで作業の乱入するもよし。
屋上で日向ぼっこを楽しむことだって可能です。
自由な発想でご参加ください。
【場所】
図書室、屋上、その二つを繋ぐ廊下と階段です。これ以外の場所では基本何も発生しません。
【明記していただきたいもの】
・どこで何をやるか(屋上で曝書、図書室で本を修繕、図書室で勉強など)
・ご自分のやりたいことをできるだけ細かく
記述がない所は指定なしとして扱います。
アクションがまったくない場合は、描写ができなくなってしまいます。ご注意ください。
【行動指針と行動のヒント】
作業に参加される方は、エプロン、白衣など制服を汚さない工夫をなさることをおすすめします。ジャージもいいですね。
本の修繕にはカッターや針を使う場合があります。手のケガにはお気をつけて。