「おや?」
寝子島の旧市街、ぽかぽかの陽気の中で
ヴェルト・レトランジェはふと足を止める。その視線はどこか遠くにあった。
「何か気になるものでもありましたか?」
傍らにいた
メーベル・コルテージュも足を止め、ヴェルトの隣に並ぶ。ヴェルトは首を横に振って、視線を戻した。
「いいや、なんでもない」
そうして、眼前に定食屋があることに気付く。ヴェルトはメーベルに向き直り言った。
「ところで昼食にしないかい?」
「いらっしゃーい! 好きなとこに座りな!」
快活な女将の言葉のまま、二人は席につく。メーベルの手が机を撫で、お冷を置く店員を見た。
「失礼。メニューはどこに?」
「本日は特別メニューとなっております」
「特別メニューですか。何がありますか」
「しらす丼です」
店員の言葉を聴き、メーベルは苦笑する。
「……はは、まさか。他にもあるでしょう。もう一度伺っても?」
「ですから、本日はしらす、しらす、しらす……」
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しらす、しらす、しらす……♪
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すると先程まで席についていた屈強な男たちが立ち上がり、野太い声で歌い出したではないか!
※画像はイメージです。モデルのNPCとは何も関係ありません。
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おいしいしら~す♪
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「あんたらうるさいよ!!」
女将が鳴らすけたたましい音が店内に響く。ヴェルトの手がポケットを探っては戻った。
「彼らは常連なのかね?」
「いいや? 気付いたらいたんだよ」
女将にもわからないという、この男たちはなんなのか……不可解な現象にヴェルトも、メーベルも、店員も首を傾げた。
「あんなあ、スペイン人がみんな算数出来ひん言うたら大間違いや」
コンビニの中、
マリベル・ロイスが店員にそう言った。目の前には冬の名残を残したおでんコーナー。店員の持つカップにはしらすが山盛りにされている。柔らかい関西弁を喋りながら、声の主マリベルは困惑したように眉をハの字に歪めていた。
「もう一回確認しよ?」
「ええ、ですから……しらす、卵、ソーセージ、しらす、しらす、しらす……」
店員がこう言っていると、飲料コーナーから、雑誌の並べられた片隅から、トイレから、スイーツコーナーから、コピー機の置かれた場所から、外から、屈強な男たちが!!
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しらす、しらす、しらす……♪
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お世話になっております。六原紀伊です。
ガイドに登場してくださったヴェルト・レトランジェ様、メーベル・コルテージュ様、マリベル・ロイス様、ありがとうございました。
もしご参加されるようでしたら、ガイドの内容に捕らわれず自由にアクションを書いていただければと思います。
寝子島の飲食店に突如現れた、ヴァイキングのような屈強な男集団。
その正体は食べられずに処分されてしまった釜揚げしらすの怨念かもしれないし、イギリスから流れてきたヴァイキングの末裔なのかもしれない……。
神魂の影響で、彼らの出現した店では店員がとにかくしらすをオススメしてきます。
客もなぜかしらすが食べたくて仕方がなくなるようです。
男たちは客が美味しそうにしらすを食べると満足して消滅します。
男たちが消滅しきると同時に神魂現象も収まるようです。
寝子島名物のしらすが海から無くなってしまう前に、男たちをなんとかしましょう。