民家が建ち並ぶ道をスーツ姿の青年が歩いていた。周囲に人の姿は皆無であった。すぐ近くで雨戸の開く音が聞こえてきた。
朝陽に向かって青年は大きな欠伸をする。
その時、靴が何かを蹴飛ばした。ゆっくり頭を下げると黒い物体が目に留まった。
「懐かしいな」
拾い上げた円錐形のベーゴマに目を細めた。直後に眉間に浅い皺が寄る。深い思考に囚われたかのように頭を不規則に動かした。
「どうやって回すんだっけ?」
目は路上に答えを見つけようとした。何も落ちてはいなかった。続いてスマートフォンを手にした。ネットに繋いで『ベーゴマ、回す方法、ヒモ』と入れて、即座に消した。
「あと少しなんだよ」
青年は立ち止まったまま、動こうとしない。自力で思い出そうと必死になった。
昼の時間帯を迎えた。星ヶ丘の商業ビルから一人の女性が足早に出てきた。歩きながら財布の中身を確かめる。割引チケットの日付は今日が期限となっていた。思わず、笑みが浮かぶ。
「……ちょっと待って」
険しい顔で女性は立ち止まり、急に後ろを振り返る。視線の先には白いマンションが見えていた。三階の東側に目を凝らす。
「何もないけど……」
昨晩のクリームシチューが大量に残った。女性は朝食の合間に弱火で鍋を温めた。その火を消した記憶がどうにも曖昧で気になる。今年から一人住まいになったので家族に頼ることも出来なかった。
「ああ、もう!」
女性は白いマンションに向かう。長い髪を振り乱して大きく腕を振った。気分的には全力疾走。実際はヒールのせいで小走り状態であった。
夜空に星が瞬く頃、程良く酔った状態で男性は電車を降りた。軽く頭を振って意識を保つ。やや蛇行しながらホームを歩き、改札を抜けた。
ポツポツとある街灯の下を気ままに進む。たまにガードレールに腰掛けて休んだ。
「今日はよく飲んだなぁ」
吐き出すように言った。ふらりと立ち上がると住宅街に向かって歩き出す。
ひっそりとした道の片隅には自動販売機があった。自然に喉が上下した。
男性は背広の内ポケットから財布を引っ張り出す。
「千円札がないなー」
小銭入れに目をやる。一円玉は無視して十円玉と五十円玉を次々と摘まみ上げる。合わせると百二十円になった。
「冷たい紅茶かなー」
投入口に硬貨を入れながら目はサンプルの缶を見ていた。そのせいで十円玉を入れ損ねた。地面に落下して涼しげな音を立てる。
「どこにいった?」
酔いのせいで反応が遅く、易々と見失ってしまった。
探す手間を惜しんだ男性は気持ちを切り替えた。百円で買える自動販売機に思いを巡らせる。
「この近くのはずなんだが……」
どうにも思い出せない。唸るような声で頭をゆらゆらとさせた。
今回はタイトル通り、気になることが起きます。
物語の舞台は寝子島で「平日、休日、時間帯」を自由に決めてください。
とにかく気になることが発生してPCさんの頭を悩ませます。結果は皆さんのアクション次第です。
シナリオガイドのように結末が明かされていない状態で、マスターに丸投げをしても構いません(脂汗)。
※丸投げの場合であっても切っ掛けの部分は書いて下さい。
説明は以上になります。ビクビクしながら皆さんの参加をお待ちしています(説明文が過去最少)。