今日は、新月。
明瞭な光源のない空に鋭い光の星々が瞬く、とても綺麗な夜だった。
TVでは、今日はどこかの星座の流星群が、この寝子島でも観測可能と言っていた。だが、数時間後には画面に映る気象予報士は言っていた。
『今日は急激な気候の変化で、日本列島は各地で曇り。残念ながら流星群は──』
しかし今、現に空はこうして晴れている。まるで寝子島の上空にだけ雲に穴が空いたかのようだった。
今日は、流星群が間近で確認できる。
鬼河内 萌は、それを見る為に少しだけ外に散歩に出た。広場辺りの開けたところで少し星を見て、それで帰るのも乙だと思って。
家を出て、星を見上げる。チカリ、何かが光って額に落ちた。
「ん?」
こつん。
空から降ってきた硬質なもの、なのに額の痛みは全く無い。
額から転がり落ちた飴玉程度の丸い玉。それは地面に落ちると、虹色の光を散らして粉々に砕け散った。
「わっ、わ……っ! なにこれ?」
不思議に思うまもなく、一つ落ちれば立て続けに。
流星群の流れ星が始まり、無数の星が流れると同時にこちらにも無数の虹色の玉が降り注ぐ。
地面に落ちる前の玉を一つ手にして。視界を正面に戻すと……そこには全長30cmくらいの、二本足で立った『うさぎ』が、あちこちでチマチマと動き回る光景があった──
過去、萌が知っているうさぎよりも、それらは一回りか二回りほど小さく、黒かったり赤かったりする瞳には子供らしいあどけなさが伺える。
「ねぇ、キミたち何してるの?」
うさぎ達は、一所懸命に空から降ってくる玉と、既に落ちて道路に砕けた光滲む砂を集めて回っているようだった。
萌が声をかけると、シンプルな服を着た数体のうさぎが、二本足でも器用にとてとてと傍に近づいてきた。
「
『光のもと』を集めているんだよ」
「
『光のもと』? 調味料みたいなの?」
萌が尋ねると、うさぎ達は耳が後からついてくる勢いで元気に首を横に振った。
「ううん。これは街の灯りのエネルギーにするんだよ」
「ぼくらの世界には光がないから。灯りがないと何もできないんだよ。
これには、星を見たひとの感情がたくさんこもってるんだ。それをエネルギーにしてるの。
だから、流星群のことを調べて、その度にみんなで『遠足』で拾いに来てるんだ」
「うさぎにも、遠足があるんだね……!」
ひとの身でありながらも、不思議な現象をたくさん目撃してきた萌が、さっそく『これはMMR(萌ミステリーリポート)のネタになるかも知れない!』と、思わず心に好奇心のスイッチが入る。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんも手伝ってよ」
「え? いいのっ?」
「うん。大歓迎だよ。
ぼくら小うさぎは、特別にこの瓶に一杯に貯めると山の入り口で、大人のうさぎから『トッピング付き、にんじん味のソフトクリーム』に換えてもらえるんだ。
手伝ってくれたら、ひとにも分けてもらえるようにお願いするよ。美味しいんだよ?」
MMR(萌ミステリーリポート)のネタはもちろんのこと、明らかにこの世界の生き物ではない存在の食べ物を味わって、さらにそれもリポートできるこのチャンス。
萌は、しばし『むむむ……』と考えてから、大きく決意したように強く首を縦に振ったのだった。
初めましてこんにちは。冬眠と申します。
この度は、シナリオガイドに鬼河内 萌様にご登場頂きました。誠に有難うございます。
ご縁を頂けました際には、是非ご自由にアクションを掛けて頂ければ幸いで御座います。
それでは、以下より状況の説明を行わせて頂きます。
状況
▼今までの状況
寝子島で流星群が見られる日ですが、天気予報では曇天で見えないと昼のテレビで流れました。
しかし夜になると、まるで寝子島の上空の雲だけが抜き取られたかのように綺麗に晴れて、流星群を見るにはこの上ない良い天気となりました。
○流星群
十数年に一度とも言われる、真夜中12時からの数時間、落ちていない星が無いと錯覚するほどの、かなりの大規模な流星群です。
見るだけでも、とても壮大な気分になれそうです。
▼現状
流星群が始まり、空の星が一つ落ちるごとに、虹色をした光るビー玉くらいの玉が、寝子島中の各地に降ってきています。
しかし体に当たっても痛くなく、地面に落ちれば綺麗な光を散らしつつ砂になります。
同時にそれを拾おうと、二本足で歩く『うさぎ』(兎ではなさそうなので単位は匹とさせて頂いております)が島中に現れています。
○小うさぎ
九夜山の麓に繋がってしまった別の世界の空間から現れた、全長30cmほどの子供のうさぎです。
生活に必要な灯りのエネルギーとなる、流れ星に込められた人の願い(通称:光のもと)の結晶でもある、流れ星の玉を空中でキャッチしたり、地面で砕けた光る砂を集めたりしています。
しかし、小うさぎ達の目的は、エネルギー源確保よりも、手に持っている小瓶一杯に集めると交換してもらえる、にんじん味のソフトクリームが目当てのようです。
空瓶は、あちこちに山になって置かれています。
○大うさぎ
九夜山の麓に、器用にも小さなテントを張って『光のもと』を集めてきた小うさぎ達に、トッピング付きのにんじん風味のソフトクリームを配っています。
ソフトクリームは普段は小うさぎサイズですが、人が希望すれば人サイズで出てきます。
・シナリオ
○おとなになりたいお年頃
○『 コロシアイ 』
と一部衣装は違いますものの、完全に同種族のうさぎとなります。しかし、今回は人にとっての悪さを働くつもりはないようです。
○テオ
寝ています。起きません。
何ができるのか?
今回のシナリオに触れる範囲でしたら、ご自由に行動して頂けます。
星空と、光が散って滲んでいる地面を楽しむもよし。
うさぎと一緒にそれを集めてソフトクリームを食べるもよし。
ソフトクリームは、全てスプレーチョコのトッピングで、種類は豊富。
以下の色は、人が食べるとちょっとした特殊な効果が発生します。
・赤のトッピング
唐辛子味。振りかけた量で辛さ倍増。元気になるが体温も上がり、ソフトクリームが溶ける時間も倍速。
・青のトッピング
塩味。ソフトクリームなのに、まるでフレッシュなニンジンサラダを食べているような気分に。
美味ですが、後からしばらく心が鬱々しくなります。
・緑のトッピング
ミント味。思いの外合う風味。爽快感で悩みが吹き飛びます。
どうやったら収束するのか
流星群が終了すると同時に全てが元通りになり、うさぎ達は帰って行きます。
それでは、一時の不思議な空間を、のんびりとお楽しみ頂ければ幸いです。