三月になりました。
半引き籠りで不登校の
東門 巧は、下宿で小テストを受けていました。
「まあまあかな」
出題者は
八神 修。近々行われる期末試験に備え、巧の家庭教師を買って出ています。
「青木くんのおかげかも」
青木 学は、ほとんど学校に来ない巧のために授業風景を録画して渡しているのです。おかげで、どうにか授業内容にはついていけているようです。
「いやいやいや、そんな」
学は照れくさそうに手を振りました。
「問題は、出席日数だな」
「だよねえ」
巧はばたん、と畳の上にうっつぶしました。
「たっくん?」
その顔を覗き込むのは、巧の前に突然現れ、預かっている赤ん坊、
光(ひかる)です。――いえ、もう赤ん坊ではありません。既に三歳ぐらいに成長しています。
学は修と目配せをすると、殊更明るく言いました。
「光ー! こっちおいでー。庭に出ようぜー」
「うんっ。でるっ」
ついこの前まで、片時も離れたがらなかった光も、今は巧がどこにいるか分かっていれば泣き出すことはありません。ただし、光の気が向いたときに、巧が「その場所にいる」ことが条件ですが。
「出席日数が足りない分は救済措置が取られるらしいが、それも理事長の気分次第だしなあ。どちらにせよ、まずは期末試験をどうにか突破しないとどうしようもないぞ」
学と光の姿が見えなくなると、修は言いました。
「だけど、半日以上、光が我慢できると思う? それも一日じゃないし」
「そこが問題だ。それに、もっと重大なのは、あの
リリーという女のことだ」
自称「別の国から来た戦士」リリーは、光こそが自分たちの敵であり、全てを滅ぼす恐ろしい存在だと言いました。
あれ以来、彼女の姿は見かけませんが、簡単に諦めたとは思えません。
巧はため息をつきました。
「おかげで外にあんまり出られないしさあ。光のストレス溜まっちゃって大変だよ」
近頃の光は、赤ん坊の頃と比べて簡単に泣きはしないものの、癇癪を起こすことがあります。そういう時は大抵、ガラスや電球が破裂します。危険を覚えて、パソコンなどは一階に移動しました。
「それも困るし、これ以上大きくなると、自分で外へ行くかもしれないしなあ……」
修も腕を組んで考え込みました。
果たして巧は、無事、期末試験を受けられるのでしょうか?
そして、光を狙うリリーは今どこに?
こんにちは。泉 楽です。
今回のシナリオは「降ってきた赤ん坊」「美少女戦士?の尋ね人」の続きとなります。
が、前回に参加していなくても全く問題ないため、お気軽にご参加ください。
メインとしては、巧が無事に試験を受けることですが、邪魔が入る予定です。
赤ん坊と巧に関わるもよし、リリーに関わるもよし、他のことをするもよし。自由度は割と高めです。
皆様のご参加をお待ちしております。
注意点
・今回のシナリオは、期末テストを扱っていますが、「期末テストシナリオ」等別のシナリオに影響を与えたり、
こちらで整合を取るために調整したりすることは基本的にはできません。
両方に参加しても全く問題はありませんので歓迎ですが、別シナリオでテストを受けているはずのキャラが、
同時刻に光の面倒を見ている、といったことがありえます。
そのため、ご自分でアクションのコントロールを取る必要があります。
ただ、アクションに「テストは受ける」などとあれば、受けられるように配慮します。
(テストを受けながら光の面倒を見る、となればそれなりの工夫が必要ですが)
・シナリオで扱うのは、期末テストが終わるまでですが、これは皆さんのアクションによって多少のズレが生じます。
NPC
東門 巧(とうもん・たくみ)
光(ひかる)
赤ん坊。成長が速く、今の外見年齢は三歳ほど。ちょこっと喋るように。巧と離れてもすぐには泣かないようになった。
感情が高ぶると、周囲の物を壊す癖がある。かなり気が強い性格のようだが、子供らしく素直な面もある。
リリーによれば、その正体は琥珀(こはく)という名の恐ろしい男だというが……?
城之内 小百合(じょうのうち・さゆり)
59歳。
巧の下宿のおばさん。家事が得意で面倒見たがり。派手なフリフリのワンピースをいつも着ている。巧曰く「古風」。
現在は赤ん坊の世話で、念願のイングリッシュガーデン作りが止まっている。
リリー
別の国からやってきたという美少女戦士。光を狙っている。ただし現在は、武器を持たない。
水着のような鎧を着ているが、今はジャージの上着を羽織っている可能性が高い。
人目を憚る――タイプではないので、目撃証言を辿っていけば見つけやすいが、空を飛んですぐ逃げる可能性も。
彼女を説得するには、それなりの内容が必要。