空には雲がなかった。薄く引き伸ばしたような青色が広がっている。
九夜山に棲息している動物達は恵みの陽光を全身に浴びた。日溜りの中では数頭のシカが微睡んでいた。
それらを尻目に太った白猫が伸し歩く。たまに顔を洗うような仕草をして立ち止まった。
「今日はええ天気やのー」
白猫は関西訛で空を見上げた。前脚を揃えて大きな伸びをする。身震いするような動作後、再び歩き始めた。
前方の繁みから一匹の狸が現れた。白猫は訝しそうな目をして、おー、と再会を懐かしむような声を上げる。
「おまえ、久しぶりやないか。今までどこいっとったんや」
「久しいな、猫がみ。ちと天界を気ままに散歩しとったんじゃよ」
「冴えたボケかますやないか。ホンマ、おまえはおもろいやっちゃな」
白猫は狸の頭部を前脚で何度も叩いた。
「猫がみよ。その荒々しい挨拶はやめにして貰えんかのう。木魚になった気分になるわい」
「ぽくぽくチーンってか。成仏してどないすんねん。ホンマに秀逸なボケやな、おまえは」
白猫の激しいツッコミに狸は木魚と化して、されるがままに頭を叩かれた。
「やれやれじゃよ。このような歓待を受けるなら、洞窟の方がマシかもしれんのう」
「洞窟ってなんや?」
白猫は動きを止めた。狸は答えずに踵を返して繁みへと戻っていった。
「なんや、ワシをさそっとんのか?」
同じ繁みへと歩き出す。
白猫は不機嫌な顔を方々に向けた。時に地面に鼻を近づけて行き先を決めた。
「なんや、このごっつい扉は」
聳え立つ観音開きの扉の左右が開いていた。白猫は交互に中を覗く。
「左は洞窟やな。右はどこに続いてるんや?」
興味深そうに左右を見比べる。取り敢えず、白猫はでっぷりした尻を地面に下ろして毛繕いを始めた。
今回のシナリオは現れた扉の続編になります。
続き物ではありますが、皆さんのアクションで話を広げていく構造になっているので、
初参加のPCさんであっても問題なく活躍することができます。
前作では地震によって九夜山に観音開きの扉が現れました。その中を各々が調べる内容になっていました。
本作は明らかになった箇所が行き先となります。もちろん、全て(洞窟、集落)が明かされた訳ではありません。
未踏の地を求めて(アクション次第)新たな展開に持ち込むことも可能です。
注意点として扉の選択は一つ、行動は二つ以内とさせていただきます(時間的な制約で)。
以下の詳細を読んでアクションの参考にしてください。
扉の左側(灰色の洞窟ルート)
1:無機質な部屋
階段を下りた先にある。
2:アイオライトの扉
無機質な部屋を経由して、更なる地下に存在する青い扉。
3:星空の空間
迷路の先にある開けた場所。光を当てると鉱石が星のように輝いて見える。
4:地底湖
通路の壁が崩れて出来た湖。巨大生物が潜んでいる。通路は水没しているが能力によっては通行可能。
5:光の柱&影
迷路の奥深くにそそり立つ光の柱。
その中には影がいる。けたたましい声を発して相手の平衡感覚を奪う。
6:未踏破の横穴
数多く存在して迷路のようになっている。奥の方の詳細はわかっていない。
扉の右側(集落ルート)
1:木造の家々
外観は悪くなく朽ちた様子も見られない。
人が住んでいる気配は感じられなかった。
2:小さな社
階段を上った先にある。御神体は中で壊れていた。
3:その他のもの
詳しく調べることで新たな発見があるかもしれない。
※土地のせいなのか、携帯電話は圏外と表示される。
NPC
1:狸
人の言葉を理解して話す。自身のことを神と称する悪戯好き。
人を幻惑する術に長けている。
2:猫がみ
人の言葉を理解して話す。見た目は太った白猫で口が悪い。
がみがみとうるさいので猫がみの名で呼ばれている。狸とは旧知の仲。
※その他のNPCは登場不可。アクションに書かれていた場合はマスタリングの対象になる。
説明は以上になります。これらの行き先と新たな発見を合わせることで、全ての謎が解けるかもしれません。
ほんの少し残った謎は、謎のままで各PCさんの胸に秘められることでしょう。
シナリオ全体を揺るがすような大きな展開があれば、まだまだ話は続く、なんてことも考えられます。
全ては参加するPCさんの行動に掛かっています! 逆にあっさり終わるなんてことも。
開かれた扉は何を皆さんに語るのでしょうか。
そして何を胸に残すのか。冒険心と探究心を従えて、いざ開かれた扉の奥へ(参加をお待ちしています)!