ここは、シーサイドタウンに位置する会員制バー
BAR【Holländer】。
静かなジャズの波に揺れる店内で、この『船』の主たる
藤堂 静は「マスター」と声を掛けられた。
「この時期らしい、粋なサプライズですね。チョコレートの味がするカクテルだなんて」
目元を赤らめて、にこにこと微笑する初老の紳士の言葉に、静は胸中に眉根を寄せる。
(……チョコレート、だって?)
そういうカクテルだって、取り揃えていないわけではない。
けれど、静がかの客に出したのは、爽やかなミント・ジュレップで間違いなかった。
相手は心地良い酔いに身を任せてこそいるが、酒の味が分からないほどの様子ではない。
(どういうことだ……?)
訝しむ静の耳に、2人組の女性客のきゃらきゃらと明るい声が届く。
「ねえ、知ってる?」
「え、なぁに? 面白い話?」
「面白いかは、人によるかな。でも、すごく不思議な話だよ」
それは、『チョコレートの妖精』達の噂。
ふわり、甘い香りを纏って妖精達は人の世界に現れる。
そうしてこっそりと、辺りの食べ物をチョコレートの味に変えてしまうのだとか。
妖精のチョコレートを口にすれば、蕩けるような美味にたちまち幸せ気分。
だけど、食べ過ぎにはご用心を。
「あんまり美味しいから、妖精のチョコレートなしではいられなくなっちゃうんだって」
静は、ハッと我に返った。
気づけば、自分に声を掛けた客は、カウンターに突っ伏して寝息を立てている。
(さて……どうする?)
ふうわりと、心を絡め取るような甘い香が空気を揺らした、ような気がした。
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
藤堂 静さん、ガイドへの登場誠にありがとうございました!
なお、もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドは一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
このシナリオの概要
神魂の影響で、『チョコレートの妖精』の噂話が寝子島で現実になってしまいました。
甘い香りを纏った妖精達は辺りの食べ物・飲み物を手当たり次第にチョコレートに変え、
食べると幸せ気分になれる不思議なチョコレートを人間に振る舞って遊びます。
食べ過ぎると、妖精のチョコレートなしではいられない身体になってしまうとか……?
一口二口では、ハッピーな気分になれるだけで、それ以上の害はありませんが、
あまりに美味&幸せ気分で警戒心が薄れてしまうので、誘惑に抗うのは中々に大変です。
妖精のチョコレートを一口でも食べると妖精の姿が見えるようになります。
妖精達をどうにかしてチョコレートの餌食になった人達を助け出すのが一応の目的ですが、
それとは関係なしにこのシチュエーションを楽しむアクションも大歓迎です!
誘惑に負けてチョコレートを食べまくる、妖精とお喋りして仲良くなるのを目指す、等々、
ご自由にお楽しみいただけますと幸いでございます。
なお、時間は夜となっております。
巻き込まれた一般の人達(下記NPC含む)は、
事件解決の際はこの出来事を夢だと思うので、その点はご安心くださいませ。
妖精のチョコレートへの依存も、妖精達がチョコレートの魔法を使うのを止めればなくなります。
NPCについて
○チョコレートの妖精達
チョコレート色の衣装に身を包みチョコレート細工の羽を生やした愛らしい少年少女の姿。
悪戯好きな性質の者が多いですが、特に悪気はない様子。人の言葉も通じます。
寝子島中で食べ物をチョコレートに変えて回っていますが、
以下3箇所にリーダー格の妖精が位置しています(他の妖精達も辺りに沢山います)。
各地域の妖精達は、一応それぞれのリーダーに従っている形ですが、
基本的に自由な性質なので、気分次第で彼らの意に反する行動を取ることもあります。
・旧市街
参道商店街付近に、ミントという名前のミントグリーンの髪と瞳の少年の妖精がいます。
3人の中では理知的で、自分達は人間を幸せにしているのだから咎められる理由はない、という考えの持ち主。
また、寝子島駅前では、妖精達が白沢 絢子先生を甘い言葉で誘って、チョコレートを沢山食べさせようとしています。
ちなみに、先生は今のところ空腹ではない模様。
・シーサイドタウン
駅ビルmiao付近に、ハニーという名前の蜂蜜色の髪と瞳の少女の妖精がいます。
ふわふわおっとりながら思い込みが激しく、人々に幸せを配ろう! と意気込んでいます。
なお、駅近くのとある自販機前では、桐島 義弘先生が誘惑と戦っています。やや負けそう。
用事の帰りに温かい缶ドリンクを買った結果、妖精が見えるようになってしまったようです。
・星ヶ丘
星ヶ丘駅付近に、モカという名前の淡い茶色の髪と瞳の少年の妖精がいます。
やんちゃで生意気、子分を沢山連れて遊び感覚で人間にチョコレートを食べさせています。
また、スタイル維持の為ウォーキングに励んでいた剣崎 エレナが、
高級ホテルのステッラ・デッラ・コリーナ前で、チョコレート化したペットボトルの水の前に陥落中。
このままでは大量のチョコレートを摂取してしまうので、彼女の心(と体重)がピンチです。
それでは、チョコレートな戦い(?)、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!