ある休日の午後。
猫鳴館の住人、
真辺 伸幸は自分の部屋で読書の最中――いや、途中まではたしかに広げた本を読んでいたはずなのだが、今はうつらうつらと船を漕いでいる。
半分うつつ、半分夢の中にある意識の中には、さっきまで読んでいた本の中の世界が鮮やかに広がっていた。
――と。
どこかで鈴を転がすような笑い声が聞こえた気がして、彼はぱちりと目を開く。
まだ半分、寝ぼけていたのかもしれない。
誰かに呼ばれた気がして、ふらふらと立ち上がると、彼は部屋を出た。
どこをどう歩いたのか、イマイチよく覚えていない。
が、気づいた時には、猫鳴館の裏手の一画に立っていた。
「ふわ……っ!」
そこでようやく我に返って、目の前にあるものを見上げる。
そこには、桜の木が立っていた。
いや、桜そのものは、以前からある。
ただ、彼を驚かせたのは、その木に花が咲いていたことだ。
七分咲き、といったところだろうか。
周囲の木々はまだ枯れたままだというのに、薄紅色の花をいくつもつけている。
「……今って、一月だよねぇ……?」
ほけっと木を見上げながら、彼は思わず呟いた。
「桜に花が咲いている?!」
その背後で、突然、頓狂な声がした。
ふり返った彼の後ろにいたのは、同じ猫鳴館の住人で、二年生の五代 春香だった。
「すごいわね。こんな時期に桜が咲くなんて。……でも、ちょっと面白いと思わない?」
「え、ああ……まあ、そうだねぇ……」
テンション高く言う春香に、伸幸は再び桜の方に視線を戻しつつ、ぼんやりとうなずく。
その隣で、春香は小さく手を打った。
「そうだわ。せっかく桜が咲いたんだし、お花見しよう! 昼間もいいけど、夜だともっと綺麗よね」
「面白そうだねぇ。でも、冬に外でお花見なんて、寒いんじゃないかなぁ……」
ぼそりと返す伸幸に、春香は少し考え、言った。
「そうね。なら、いっそテントとか張って火鉢なんかも用意して、温かく過ごせるようにしてやるっていうのはどう?」
どうやら春香は、何がなんでも花見をやりたいようだ。
「うん……まあ、悪くはないとは思うけどねぇ……」
小さく吐息をついて、伸幸は再び桜を見上げた。
その日のうちに、春香はねこったーやらネコ島chやらで呼びかけを行った。
『猫鳴館の裏手の桜に花が咲いたよ~!
ということで、今夜、お花見をします。
開始は六時半ごろから。
誰でも参加できるから、よかったら来てね。
温かい服装推奨。食べ物・飲み物持参OK(ってか、むしろ推奨)。
懐中電灯とかランタンも各自、持って来てくれるとうれしいかな。
それじゃ、待ってるよ!』
むろん彼女は、猫鳴館の住人たちにも声をかけ、外部の友人たちにも連絡怠りなかった。
「みんな来てくれるかな。楽しみだね。……さて、私たちは、お花見用のお菓子やジュースの買い出しに行きましょ。あと、ランタンもいくつかあったと思うから、探しておかないと」
「はーい」
いつの間にか巻き込まれた形の伸幸だったが、まあいいかと、彼女の買い出しに付き合うことにしたのだった。
真辺 伸幸さま、ガイド登場ありがとうございました!
こんにちわ、マスターの織人文です。
いろんなイベントが目白押しの寝子島ですが、真冬に咲いた桜を肴にまったりのんびり楽しむのも、時にはいいんじゃないでしょうか。
こちらのガイドは、どなたでも参加できます。
お花見の開始は、この日の夕方6時半ごろから。
冬の夜の戸外ですので、温かい格好でどうぞ。
食べ物や飲み物、ランタン、簡易テントなどの持参はもちろんOKです。
その場合、アクションに持参する品を明記して下さい。
当日は、晴天ということで、桜だけでなく星を見ることも可能かと思います。
行動は、基本的に自由です。
お友達と誘い合って、あるいはお一人でも、お好きなように楽しんで下さいね。
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▼NPC情報▼
【五代 春香】
17歳。寝子高2年生。
猫鳴館の住人で、廃墟と星が好き。
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それでは、みなさまの参加を、心よりお待ちしています。