星ヶ丘教会の中は、静かでした。
他に誰もいない中、1人の男性が長椅子の端に座っています。彼は、沈鬱な表情をしていました。
一緒に年を越せるとあたりまえに思っていた相手が、もうどこにもいないからです。
世間がクリスマスだ、年越しだと湧き立っていても、明るい気分にはなれません。
「まさか、君とクリスマスも年越しもできなくなるなんて、思っていなかったよ」
もうどこにもいない君に向けて、彼は言います。
その時、背後から声がしました。
「ごめんね」
「……!」
男性が驚いて振り向くと、そこには、会えるはずのない彼女が立っていました。彼女も、驚いた顔をしています。
「どうして……」
「え? 分かる……の?」
ほぼ同時に声を発した2人は、そのまま黙り込みました。やがて、彼女の方が口を開きます。彼女は、微笑んでいました。
「私は、いつもそばにいたよ。いつも、あなたのそばにいた」
「俺の、そばに……?」
「ただ、見えなかっただけ。聞こえなかっただけ。どうしたんだろうね? 突然……」
何度か目を瞬かせてから、彼女はまた微笑みます。
「私はあの時から――死んだあの日から、あなたのそばを離れたことはない。見えなくても……年を越す時も、一緒にいるよ」
∞
「あら~?」
小鳥カフェ&ホテル『TABE=TYA=DAME』では、
小鳥遊 風羽がガラス壁向こうの鳥部屋を見て首を傾げていました。それを見て、森宮 檎郎が訊きます。
「どうしたんですか?」
「なんだか、鳥さんが増えている気がして~」
「増えてる?」
檎郎も鳥部屋に注目します。よく分かりませんでしたが、そういえば鳥密度が高いような気もします。そう考えていたら、腰の辺りでしわがれた声が聞こえました。
「守護霊じゃよ」
「!?」
突然の声に、檎郎は飛びあがらんばかりに驚きました。
視線を移すと、いつの間にか、隣に老人が立っています。
「……じいちゃん!」
見間違うわけもありません。老人は、檎郎の曾祖父でした。彼は、檎郎が子供の頃に他界しています。
「理屈は分からんが、わしら守護霊が人の目に見えるようになったようじゃな。外を見てみい」
言われるままに外を見ると、曾祖父は通りを歩く何人かを指し示します。
「あやつも霊。あやつも霊じゃな。見えるじゃろ?」
「見える……」
檎郎が呆然とする一方、話を聞いていた風羽は鳥部屋に目を戻します。それから、訊ねかけるように言いました。
「……めろん? れもん? もひかん?」
呼び声に反応し、止まり木にいたインコ達が彼女へと次々飛んできます。
ガラスを、すりぬけて。
「みんな……」
たくさんの鳥達に囲まれた風羽は、目に涙を滲ませました。
「……まあ、いつまでこの状態が続くかは分からんがな」
老人は、ぼそりと言いました。
こんにちは、沢樹一海です。
年の瀬のある日、寝子島に異変が起こりました。
「守護霊」が見えるようになったのです。
「守護霊」と一口に言っても、彼等は皆が同じ行動をしているわけではありません。
誰もが守護対象の近くにいるとは限りません。
ふらふらと自由に過ごしている「守護霊」もいるでしょうし、
全然守護対象に近付かない「守護霊」もいるでしょう。
それどころか、「守護霊」というものが誰にでもいるのかということも断定できません。
いないかもしれません。
それは不明です。
その為、近くに「守護霊がいない」と落ち込むアクションも可となります。
さて、今回は、その「守護霊」とのひとときがテーマです。
その為、今回のシナリオでは、「いる」場合の、「いつもいた」「たまたまいた」ケースを扱うパターンが多くなるでしょう。
その辺にいる誰かの「守護霊」と話すのもいいかもしれません。
・霊達自身、自覚していませんが、「守護霊」は日付が変わると共に見えなくなります。
・アクションには「守護霊」の設定や台詞もお書きください。ただし、「守護霊」はあくまでNPC扱いとなります。アドリブが入る可能性もありますのでそこはご了承ください。
・霊はあくまで霊ですので、飲食はできません。物理干渉はできないということですが、ただ、椅子に座ったり、壁によりかかったりとかは任意でできるようになるようです。
・「守護霊」は人間だけではありません。ガイドのように鳥とか、猫とか、ひまわりとかイルカとか色々な「守護霊」がいます。
・ご希望があれば、こちらで守護霊を作成することもできます。ただし、とんでもない展開になっても良いという方のみの限定です。希望としてその旨をアクションに書いてください。
・『TABE=TYA=DAME』に来る場合は、店に守護霊がいますので、新しい「守護霊」を作成いただかなくても大丈夫です。
それでは、皆様のアクションをお待ちしています。