今日も今日とて、
寝子島少年科学団。
「「「……完成じゃあッ!!」」」
寝子島がすっかり寒くなっても、九夜山の中腹、アジトたるほったて小屋の屋根にうっすら白く雪がかかろうとも、彼らは相変わらずのようでして。
小屋の中でからからと笑い合うのは、揃いも揃って小汚い、ぼろぼろの白衣を着た三人組のおじいさんたち。小柄なリーダーの
アインシュタインさんが、機嫌良く言いました。
「いやあ
コペルニクスよ、お前が急に『
メイドロボットを作ろう!』なんぞと言い出した日にゃあ、耳を疑ったがのう。ちゅーか正直ボケたかと思うたワシ」
「ふふん、ワシはいつだって科学団のため、つまりはお前らのためにとな、役に立つ発明を考えておるんじゃ。散らかりっぱなしのアジトからも、これでおさらばちゅうモンよ……男ばっかりのむさ苦しさからものう。見よ、この完成された愛らしい造形を!」
ふっくらと恰幅の良いコペルニクスさんは、ずばっと手を振り回しまして、今しがた完成したばかりの発明品を誇らしげに示します。
肩からにょっきり伸びた、うねうねと動く蛇腹関節の
ウデはどこにでもするりと入り込み、奥まったところに溜まった汚れもカンペキにお掃除。先端、マニピュレータは五本指で道具だって器用に扱える上、各種
アタッチメントにもバッチリ対応。
胸元はふくよか、フリフリ可憐なエプロンドレスはイカニモ清潔感、荒んだ心を和ませてくれます。
バスト型コンテナの中には、色んな家事グッズだって内蔵!
下半身は幅広なスカートですけれど、足は無くて、どういう仕組みか
ロケットエンジンがシュゴーッ! 火を噴き、常に宙へと浮いています。
頭にはこれまた、フリルのカワイイヘッドドレス。顔には鼻も口もありませんけれど、
大きなカメラアイがふたつ、きゅぴーんっとエメラルドグリーンの輝きを放ち、内蔵された
陽電子頭脳は、ご主人様のどんなご要望にもバッチリ! 応じてくれます。
掃除洗濯、料理に買い出し、果ては老人介護のアレコレまで何でもござれ! これぞ寝子島少年科学団謹製、
メイドさんロボット!
「……っちゅうのがホントならの、そりゃええんじゃがの」
「なんじゃ
エジソン、ワシらの才能を疑うっちゅーんか?」
背高ノッポのエジソンさんはそんな中、盛り上がるおふたりへ、ぽそりと苦言を呈します。
「『電磁冷却砲』が暴走した時は凍え死ぬかと思うたし、『エーテル波動式偏光迷彩』も『反重力制御装置』も肝心なところで動かんくなる欠陥品じゃったろが。この前の『服飾透過銃(スケールガン)』なんぞ、若いモンに大ヒンシュクじゃったぞ? 今回の『
ポジトロン電子頭脳』は、大丈夫なんじゃろな……」
ごごごごご……その時、でありました。
メイドロボットの大きな目が、
びかーーーん!
「おおっ!? ちゃんと動きよったぞ!」
「えっいや、ワシまだスイッチ入れとらんのじゃが」
……実のところ、おじいさんたちがアジトと称するこの小屋の周辺には、
神魂がぽわわんっと影響を与えておりまして。彼らが作った発明品がいかにもそれっぽく動いたり動かなかったりするのは、実にそのためなのでした。
「おはようございます、ご主人様♪
何なりとご命令を、お申し付けくださいネ☆」(手でハート作りながら)
「ホレ見ろ、ワシらのよーな天才にかかればロボットのひとつやふたつ、造作も無いわい!」
「ちゅーか何じゃコペルニクス、こやつのこのブリッコは……」
「様式美ちゅうヤツじゃ、まぁ粗忽なお前らにゃ分からんかもしれんが。それはさておき、そいじゃひとつ、掃除でもしてもらうとしようかのうメイドさん!」
「…………はいっ、かしこまりました、ご主人様☆」
がしゃこん! メイドさんロボットはさっそく、お掃除用具を両手にがしーんと装備しまして、お仕事を開始します。
右手には
電動丸ノコ、左手には
火炎放射器、バストコンテナには
小型グレネード弾を内蔵し、両目には大出力の
ビーム砲まで搭載していて…………
んん??
「それではさっそく、世界中の小汚いジジイというジジイを、
この世からお掃除させていただきますねっ☆ まずは寝子島から、お仕事開始です♪」
「「「おわあああーーーっ!?」」」
この後、命からがら逃亡に成功した科学団の面々により、ねこったーにて切羽詰まったヘルプが拡散されたのでした。
『ワシらのメイドさんを、誰か止めてくれーーーい!!』
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
このシナリオの概要
今回は四度目の登場、寝子島少年科学団と一緒に、寝子島中を駆け巡るアクションシナリオになります。
科学団の面々が総力を結集して作り上げた、『メイドロボット』。(神魂によって)動き出したところで、さっそくお掃除などお願いしてみたら、何を取り違えたか、『世界中のジジイを根こそぎ抹殺する』というオソロシイお仕事を始めてしまいました。
その中にはもちろん、創造主たる三人組もまた含まれておりまして、このままではこの世から、おじいさんが綺麗サッパリいなくなってしまいます!
皆さんは科学団の要請に応じて(現場に出くわしたとかねこったーで見たとか)、あるいは盛大に巻き込まれて、世界中のジジイの命運を賭けた戦いへと身を投じてゆくことになるのでした……!
三人組と協力しつつ、ロボットの襲撃を防ぎ、おじいさんたちを守ってあげてください!
(あ、おばあさんやその他の人々は、そもそも狙われないので大丈夫みたいですが、一応気にかけてあげるとなおグッド)
もちろん、戦うのとかはちょっと……という方は、おじいさんたちのサポートに徹する、という形もOKです。
なお、メイドさんロボットがそのような行動に出た背景には、どうやら何か理由があるようです。
結末は大まかに、ふたつ。すなわちロボットを破壊することで決着を迎えるか、ロボットが欲する『何か』を満たして暴走を止めるか、です。
おじいさんたちはいつもの調子ですけれど、どちらにせよ、油断はされませんよう……このロボットはけっこー、強いです!
アクションでできること
アクションでは、以下の襲撃予測ポイント【1】~【3】から1つを選び、具体的な行動をお書きください。
ちなみに各ポイントでは、それぞれ状況に合わせて科学団謹製の各種グッズが提供され、自由に扱うことができます。
(といっても動作は神魂によるものなので、肝心な時に役に立たなかったり、ここぞというときにスゴイ効果を発揮したり、といずれも不安定な面は拭えません。過信は禁物)
自分たちをいっぱしの科学者だと思っている三人組のプライドを守るため、できればこれらの道具を活かしてあげると、彼らも喜ぶでしょう。とはいえもちろん、ろっこんや自前の道具等の使用もOKです。
【1】激震! 旧市街を襲う恐怖!
老舗の名店などが軒を構え、お年寄りも多く訪れる旧市街の参道商店街。
本日は、どこかの和菓子店にて『お買い物一度につき、大福ひとつプレゼントキャンペーン』を開催中だそうで、多くの人(おじいさんも)が集まっているようです。
皆さんは屋根の上に登り、なるべくお客に気付かれないよう、襲い来るロボットを食い止めてください!
<提供される科学グッズ>
○反重力制御ベルト:一時的に使用者周辺にかかる重力を制御して軽くし、高所へ浮かび上がることができる。
○エーテル波動式偏光迷彩改:一定範囲内の光を屈曲させて、外部から見えなくする。効果範囲は、
半径10メートル程度。
【2】迎撃! 星ヶ丘、船上での戦い!
星ヶ丘マリーナにて、セレブなお年寄りたちを招いた船上パーティーが行われています。
お客の中には、アインシュタインさんの彼女、高根 ハナさんも乗り合わせているようです。科学団の面々か顔見知りの誰かが連絡をつけて事情を話せば、同乗させてもらえそうです。
船上にて、空から襲い来るロボットを迎撃してください!
なおここに限り、多少派手に立ち回っても、大らかなお年寄りたちにはショーか何かだと思ってくれそうです。
<提供される科学グッズ>
○低周波電気銃改(スーパービリビリガン):電気ショックを与えて一時的に行動不能にすることができる。
銃の形状は拳銃型、ライフル型などいろいろある。
○中和振動境界発信機:光学式の盾。あらゆる攻撃を防ぐことができるが、バッテリー消費が激しく、
長時間の展開は困難。
【3】急襲! 寝子島高校を駆け抜けろ!
放課後の寝子島高校。多くの生徒は下校したあとのようで、部活動に勤しむスポーツマンがグラウンドで汗を流したり、文系部がそれぞれの部室で活動していたりするようです。
そんな中で、メイドロボットの狙いは、寝子島でもっともチャーミングなおじいちゃん(?)こと、雨宮 草太郎校長先生!
校舎内の長大な廊下を縦横無尽に駆け巡り、ロボットの校長室への襲撃を阻止してください!
<提供される科学グッズ>
○超電磁浮上滑走機:リニアモーターカーのように、床や壁面を高速で滑走できる装置。
インラインスケート型、ボード型の二種類がある。
○陽電子探知機:ロボットの電子頭脳が発するエネルギーを探知し、位置を特定することができるレーダー。
その他、
・おじいちゃんたちへ思うところ
(長生きしてね、いい年こいてメーワクかけんなよ! などなど)
なんてところも、もしありましたら、併せてお書きいただけましたら~。
ちなみに、必ずしも【1】→【2】→【3】の順番で襲撃されるわけではなく、ランダムで、あるいはアクションやロボットの思惑次第とかで変わったります。
『寝子島少年科学団』とは?
少年の折に、『将来は絶対に科学者になる!』と誓い合い、そんな夢を抱いたままフツーに歳を取ってしまった、三人のおじいさんたち。それぞれにアインシュタイン、コペルニクス、エジソンなどと愛称で呼び合うのは、その夢の名残です。
九夜山の中腹にあるほったて小屋を秘密基地と称し、日夜怪しげな実験や発明などを行っています。
最近は、小屋の周辺一帯に影響を及ぼした神魂のおかげで、彼らが適当な理論で作った大雑把かつ奇妙なメカが、いかにもそれっぽい効果を発揮するようになってしまいました。
そんなこととは露知らない科学団は、この歳にして科学者としての才能が開花した! と喜んでいるようです。
その他
●参加条件
特にありません。どなたでもご参加いただけます。
強いて言えば、【3】の寝子島高校は、生徒さんのほうが無難ではあるかもしれません。その他の方が敷地内に入るには、何かしら理由付けがあったほうが良いかも?(そんなに深く考える必要は無いですけれど)
●舞台
午後の寝子島、晴れ。
上記に示した場所と、九夜山の科学団アジト周辺あたりが舞台になります。
●NPC
○寝子島少年科学団
偏屈なリーダーアインシュタインさん、女好きなコペルニクスさん、シニカルなエジソンさんの、おじいさん三人組。
ロボットについては、『できることなら壊さず回収してくれい! せっかく作ったし』とのこと。
○メイドロボット
少年科学団の面々が作り出したロボットに、神魂が影響を与えて動き出したもの。
陽電子頭脳にインプットされた性格設定は16~8歳程度の女の子がベースで、明るく前向き、時々ちょっぴり意地っ張り。でもそこが愛らしい、だそうです(コペルニクスさん談)
ロケットブースターで自在に空を飛び、家事なら何でもござれなスーパーメイドさん! になるはずが、なぜだかこんなことに。
様々な家事グッズに加えて、火炎放射器やらビームやらの武器まで搭載しています。なぜか。
○雨宮 草太郎
寝子島高校の校長先生、ほっほっほ。今日もマイペースに、校長室でお仕事したり子猫たちとたわむれたりしています。
できれば、外での騒ぎには気付かないままにさせてあげてください。
●備考や注意点など
※上記に明記されていないNPC、及び今回のシナリオには参加していないPCに関するアクションは基本的に採用できかねますので、申し訳ありませんが、あらかじめご了承くださいませ。
以上になりますー。基本的にはコメディですけれど、相手は本気でかかってくるので、お気を付けを。
それでは皆様のご参加を、お待ちしております!