「——ハイ、そうなんですね。ここ数日で風邪が爆発的に流行しているようです。今年の冬の風邪は、長引いて咳も残り易いです。
ですからご帰宅の際はうがい手洗いを忘れずに、風邪の予防を心がけて下さい」
朝の情報番組で若い女性キャスターが「行ってらっしゃい」と手を振るのが画面に映った瞬間、
イリヤ・ジュラヴリョフはリモコンの電源ボタンを押した。
ソファの肘掛に引っ掛けていた詰襟を着込んで、普段なら家を出発する時間だが、今日は階段を降りずに一つ上の階へ三階へ向かう。
ノックをしつつも返事を待たずに扉を開くと、早速ごほごほと篭った咳が二つ分聞こえてきた。向かって手前のベッドで次兄の
レナート・ジュラヴリョフが、そして間にラックを挟んだ向こう側のベッドで長兄の
エリセイ・ジュラヴリョフが、分厚い毛布の中で虚ろな目をイリヤの方へ動かした。
二人の兄は唾を飲み下すのすら喉が痛むらしく、今朝は食事もとれなかった。スポーツドリンクを渡しながら顔を覗き込むと、聞くまでもなく熱が高そうな紅い色だ。
「レーナ、調子は?」
「頭痛い……あとダルい」
「リーセはどう?」
「ゲロ吐きそう……あとダルい」
「あんまり酷いならお医者様にかかった方が良いよ。
僕はもう学校へ行かないと。帰りに薬買ってくるけれど、他に何か欲しいものはある? 食べたいものは?」
「「いちごー」」
二人の枯れた声が重なるのを聞いて、イリヤは苦い笑顔で頷き、いつも兄達が自分に言う調子を真似て「いい子にしてなね」と扉を静かに閉めた。
ミルクホールの三兄弟のうち、二人が罹ってしまった今年の風邪は、ちょっとタチが悪いようだ。
あまり歓迎出来ない厄介な一日は、どんなものになるだろうか——。
皆さんこんにちは、東安曇です。
今回のシナリオは『PCが風邪をひいてしまった』、或いは『友人や恋人や家族が風邪をひいてしまった』と言うストーリーでアクションを掛けて頂くものです。
旧市街の外を舞台にしても構いません。
風邪をひいてしまった人を想うだけでも、彼らの為に何かをしようと奮闘する姿でも構いません。自由にアクションを掛けてみてください。
登場パートが別になってしまう程複数に渡る行動(PC1とPC2をお見舞いして、買い物をして……など)は、リアクション反映の際にカットされる可能性が有りますのでご注意下さい。
また、お見舞いなどは基本的にGAで、『PC1をPC2とPC3で見舞う』形式を推奨しますが、常識の範囲であれば、NPC(親や兄弟など)を登場させても構いません。しかしながら登録済みのキャラクターはNPC化出来ない他、登場出来るキャラクターも、あっさり描写になる事を予めご了承ください。
【シナリオに登場するNPCについて】
*ミルクホールの二階へ行くアクションについて
状況やNPCとの親密度によっては、アクションで申し出ても上の階へ入れない場合が有ります。
『イリヤ・ジュラヴリョフ』
兄二人が風邪をひいたので、学校帰りに薬や夕食の材料を買いに出かけたり、夕食作りなど家事に勤しむようです。
『エリセイ・ジュラヴリョフ、レナート・ジュラヴリョフ』
共に風邪をひきました。学校を休み、ミルクホールの上の自宅で、留守番しています。
喋る事は出来るものの、喉が荒れて咳も酷いようですので、余り近づくことはお勧めしません。
『寺島 康子』
昼以降に仕事に出てくるようですが、甥二人の状況はまだ知りません。
『大道寺 紅緒、伊橋 陽毬』
お見舞いに誘う、買い物を手伝って貰ったり、会話をしたりする事が出来るNPCです。