「……どこだ、ここは?」
風雲児 轟は、見慣れない景色に怪訝な顔をした。さっきまで、ジョギングをしていたはずだが……いつの間に、こんなところに来たのだろう?
周囲はもう暗い。辺りに見えるのは軍隊の野営地のようなテントと、読めない漢字が書かれた旗。
「まるで古代中国みたいだけど、まさかね?」
戸惑いよりも好奇心がまさった轟は、辺りを歩いてみる。すると、ひとつのテントから話し声が聞こえた。
覗いてみると、ろうそくの灯りの元、古代中国風の衣装を着た男と、現代人の格好をした少年が話している。
「本当に、東南の風は吹かないというのか!」
「ええ、間違いありません。曹操の水軍への対処を考えないと……」
「私の完璧な献策は台無しではないか! 曹操軍は80万……我が軍はおしまいだぁ……」
「ちょっと、泣かないで! 落ち着いてください!」
男は少年がなだめるのも聞かず、泣き崩れてしまった。
「おいおい、大の男が泣くなよ。事情は知らないけど、何か力になれることがあったら―――」
見かねた轟は、中に入って男に声をかけた。少年が轟を見てほっとした顔をする。
「良かった、今回も加勢が期待できそうだ。すまない、言葉に甘えさせて欲しい」
「その前に、詳しい事情を説明してくれよ」
「ああ、僕は
築地 哲という―――歴史の転換点で、大筋の歴史を変えないようにするのが僕の役目で……ほら、落ち着いてください」
哲と名乗る少年は、まだ取り乱している男に言う。
「まだ希望を捨てちゃいけません! 力を貸してくれる人も出てきてくれたんですよ! しっかりしてください、孔明さん!」
聞き覚えのある名前に、轟は一瞬止まる。
「え……? そいつが、孔明?」
皆様こんにちは、三城俊一です。
ガイドには、風雲児 轟さんにご登場いただきました。ありがとうございました。
さて、「悠久の時の彼方へ」シリーズもおかげさまで4作目となりました。今回は「三国志」の世界にご招待。高名な「赤壁の戦い」に参加していただきます。
○舞台・背景
時は西暦208年の冬、舞台は長江南岸にある赤壁です。
中国統一を目指す魏の曹操は、南に80万もの水軍を派遣。呉の孫権、蜀の劉備の勢力が同盟を結び、迎え撃ちます。タイムスリップするのは、魏の大軍が布陣を終えた時点。呉・蜀の命運は風前の灯となりました。
○何をしたらいいのか
蜀の軍師・諸葛孔明は、次のような作戦を立てました。
「呉の老将・黄蓋が魏軍に偽りの降伏を申し出、数隻の小舟とともに近づく。小舟にはわらと油が積んであり、魏の軍船に近づいた時に火を放つと、密集した魏の水軍は火にまかれる。作戦決行は、季節はずれの東南の風が吹いた夜」
ところが、歴史を歪めようとする悪意が働いたのか、以下のような問題が生じてしまいました。
1.呉の老将・黄蓋は、「自身が主君に鞭打たれる」という芝居まで計画して作戦を実行するつもりでしたが、持病の腰痛で無理できなくなってしまいました。偽装降伏作戦は見直しです。
「魏の水軍に、どういう口実で燃料を積んだ小舟を近づけるか」
これが第一のミッションです。
2.孔明の作戦の要は、「普通はこの時期に吹かない東南の風が、一晩だけ吹くことが予知された。この風によって、魏の水軍に放たれた火は燃え広がる」というもの。
しかし、築地 哲は「東南の風は吹かない」ことを察知。
「魏の水軍に対し、どうやって火を広がらせるか」
これが第二のミッションです。
火攻めにこだわらなくとも、魏軍に大損害を与えて撤退させることができれば、それで構わないのですが……
※ゲームクリアの条件は、「第一」「第二」のミッションがともに成功すること。
残念ながら「第一のミッション」がクリアできなかった場合は、「第二のミッション」の描写は空想として描かれることになります。
○NPCについて
1.築地 哲
PCたちに情報を与え、歴史を変えないための助力を求めてくる謎の少年。情報を必要としている時などに、手を貸しに来ます。彼自身には戦闘力はないのでサポート中心の行動をとります。アクションで彼に絡む必要はありません。
自身の任務に対しては冷徹に臨んでいますが、ジャンヌ・ダルクをめぐる物語(「オルレアン編」と「ルーアン編」)を通じて、多少人間味が現れつつ……あるかもしれません。
2.諸葛孔明
蜀軍の軍師。極めて優秀な頭脳を持っていますが、メンタル面が弱く、想定外の事態への対処を苦手としています。今回も魏軍を打ち破る完璧な作戦を立てたはずだったのですが。あと、孔明ファンの皆さんごめんなさい。
※「実在の人物と関わりを持ちたい」とご希望の方は、アクションに書いていただけると可能な限り取り入れます。ただし歴史上の人物と関わるのは1PCにつき1人までとさせていただきます。
※過去に飛ばされたPCは、時間が経てば自然に現代に戻ることができます。
※現代にある物を持ち込むアクションは、マスタリング対象となります。
基準としては、「オーバーテクノロジーすぎて難題がすぐ解決してしまうような物は認められない」というもの。
感覚としては、「PCの活躍は知力・体力を働かせることがメインで、あくまでその補助としてマッチを使いたい」と読めるアクションは通る可能性が高いですが、「火炎放射器で焼き尽くしちゃおう!」は駄目、という感じです。
それでは、作戦の成功を願います!