進路相談、君等の道２【体育科編】｜リアクション

進路相談、君等の道２【体育科編】

●プロローグ

　ある秋の日の夜、猫鳴館の一室で、後木真央は親を見失った仔猫みたいに喚いていた。
　電話の向こうは、頼りにしている叔父である。
「叔父貴～、真央ちゃん明日進路相談なのだ理学療法士になりたいのだ調べてるけどどこに行ったらなれるか分からないのだ～」
　理学療法士というのは病気やけが、高齢などによって身体の運動機能が低下した人に対し、運動をさせたり電気刺激やマッサージを施して回復の手助けをしたりする専門家である。真央は人を助けるそんな仕事に就きたいと思っているのだが、如何せん、どうやったらなれるのか、ということがパソコンで調べてもよくわからない。それで叔父に泣きついたのだ。
　電話の向こうからは叔父の呆れたような声。
　検索ワードに『進学』とか『理学療法士』とか入れたか？　と聞かれ、真央は「……あ゛」と言葉に詰まる。
　言われた通り検索してみると、出てくる出てくる。
　理学療法士は国家資格であり、免許が必要であることとか。
　その資格はどの学校に通えば取れるのかだとか。
　どういう場所で働けるのかだとか。
　月給はどのくらいになるのかだとか。
　……すばらしきネット社会。ちゃんと検索ワードを入れさえすればいろいろ出てくるのである。
　ここまでわかれば、他に必要なものも見えてくる。ずばり『家族が納得して学費を出してくれるか』だ。
「叔父貴、あとはこうさり気なーくおじぃやパパたちにも話しておいてほしいのだ」
　すると電話向こうの叔父、おじぃ（叔父にとっては父親）には話してもいいが、パパ（叔父にとっては兄）には自分の口から言え、という。俺から言ったら拗れるだろう、と。
「……叔父貴～」
　いけずなのだ～と真央は唇を尖らすが、叔父の言う通りなのはわかっていた。
　祖父に話をしてもらえるだけでもありがたいことだ。
　進路相談のあとすぐにまた電話すること、今度帰る時に叔父のために寝子島のアイドルグッズを買い占めて持っていくことを約束すると、真央は何度も礼を言って電話を切った。

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