アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～｜リアクション

アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～

「まあ……大変ですわ……！」
　惨状に天満七星は口に手をあてる。
『この世界で負った傷は、現実まで持ち越さねぇはずだから、心配は要らない。
　もっとも……精神面ではどうだか知らねぇが』
　テオは先ほどの、エレノア・エインズワースの進言を思い出したようだ。

　七星を伴い水のみ場にやって来た、音海なぎさはテオに切り出した。
「ねえ、テオ。そろそろ本当の事を話してくれないかな」
『本当の事？　何だそれは』
「キミは一体なんのために、ボク達を呼んだりして、時に納得出来ない理由でアラゴトを押し付けるんだい？
　だってキミは、ボク達に野々くんが落とした神魂を、集めて欲しいとは言わない。
　本当は、何をさせたいんだい？　テオに言えない理由があるなら、それでいいんだ。
　でもそれなら、今は言えないという回答が欲しいと思ってるんだ」
　なぎさはやんわりと、しかし真意を問うようにテオの瞳を覗き込む。
「ボクはキミを信じたい。だけどキミは少しずつ、もれいびたちの不信を買っているんだよ」

　テオは溜息を落とすと、口を引き結ぶ。

『じゃあ逆に聞くが、てめえらは自分の住む世界が荒れるのを、指をくわえて見ているだけが望みか？』

　厳しい物言いに、なぎさは表情をひきしめ、首を横に振った。

『あと、すげえ勘違いしてるようだから、言っておく。
　覚えとけ、この世界は何もてめえら人間だけのもんじゃねぇ！

　……だから、そうだな。てめえの質問に答えるならば』

　一呼吸を置いて、テオは唇の端を吊り上げた。

『何のため、だって？
　そんなの――俺のために決まってんだろ？』