寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

第二部　制服は翻る

　すっかり飾り付けられた講堂。薄暗い場内には低く音楽が流れている。
　三年に一度、制服の着こなしを競い合うコンテスト。
　今年はいったい誰が受賞するのか。
　期待と噂話で、観客たちはざわめいている。
　
「――みなさま、たいへんお待たせいたしました！」
　マイク越しの剣崎エレナの声に、一同大いに拍手を送る。
「それではこれより、寝子島高校創立６０周年記念、『寝子高制服☆トリエンナーレ』を開催いたします！
　たかが制服。されど制服。
　制服とは、人びとを装いで型に嵌めるものですが、その型の中でいかに楽しくアレンジするかという醍醐味もあります。この制服文化は、江戸時代の根付文化同様、日本人の心意気として世界に誇れるもののひとつではないでしょうか。
　さて、今年の寝子高生は、制服をどのように着こなしているのか！
　そのあと私服、アダルトパートと続きます。
　それではさっそくご覧ください！
　エントリーナンバー１番、財前華蓮さんの登場です――！」

第二部　第一幕　制服パート

●制服：エントリーNo.01　財前華蓮
　
　彼女を迎えたのは、女王の登場を思わせるような荘厳なクラシックだった。
　この世に、自分より美しいものがあろうか――いやない！
　そんな気迫を感じさせる、威風堂々たる歩き。
　黄金の髪なびく財前華蓮、普段の自信は伊達じゃない！
　

　華蓮は、スカートの裾を摘まむと軽く膝を曲げ、社交界の令嬢がするような麗しい一礼をした。
「清潔感、清楚さをイメージしてパフスリーブシャツ、チェックのスカートにしましたわ。
　同系色でまとめるのもつまらないので黒のカチューシャとソックスでバランスを取ってみましたの。
　これで全身の一体感が出たと思うのですけど、いかがかしら？　私の美しい髪とも調和しているでしょう？」
　ふるり、肩にかかった髪を払えば、香しい花のかおりが漂ってきそうだ。
　ただならぬ迫力に、観客はおおーっ！と拍手を送る。
「今日も目立って輝いてるよー！」と宿敵２－１０の中では良い人そうな佐々寿美礼が、
「さすが今日もカッコイイアルー私も先輩みたいになりたいアルー」
　と後輩の畑中華菜子からも応援の声が飛ぶ。
　そんな声が耳に届いた華蓮は気持ちよさそうに、
「この制服を着てから殿方の視線が矢のように突き刺さって困ったものですわ」
　と口元に手をあて、
「……あ、それはいつもの事でしたわオーッホッホッホ！」
　と高笑いをした。

（――さあ、どうかしら！　これがこの財前華蓮の実力ですわよ！）

　ちらりと会場の端に立つエレナに視線を送る。
　エレナは――腕組みをしたまま、他の実行委員となにやら次の段どりの打ち合わせをしていた。
（ちょおおおおっとぉ！　見てなさいよね！！！！）
　

●制服：エントリーNo.02　後木真央

　ぶるぶると拳を震わせる華蓮の退場を待たずに、２番手の後木真央がテッテカ駆けてきた。

　この真央ちゃん、今回のお祭りは大忙しで陸上部と新聞部とトリエン出場を掛け持ちだ。
「陸上部６：新聞部３：トリエン１配分で頑張るのだ。夜は完徹、授業中寝るのだ。人間完徹３日はいけるらしいのだ」
　と頑張った結果、すでにフラフラ状態。
　案の定、足をもつれさせ派手に転び、かわいい猫柄パンツが丸見えに！
　と思いきやその勢いで前転してパッと立ち上がったので、観客はやんやと拍手をした。
「１年９組後木真央なのだ！　部活楽しいのだみんなも兼部お勧めなのだ！　陸上部は走りたい焼き、新聞部は合成特集記事やってるのだ是非来て見て買ってなのだ！」
　この真央ちゃん、友人が多いのも取り柄のひとつ。
　陸上部仲間からの応援が熱い！
「かわいいー」と十文字若菜が、
「がんばれー！」と鴇波羽衣が、
「今日も可愛いな！　なでなでしてぇ！」と冴木竜司が、
　それぞれ観客席から声援を送ってくれている。
　それに「ありがとうなのだー！」と手を振りつつ、真央はテッテカ帰っていった。

「ちょ、待ちなさいよ！　私より先に退場しないで！」
　財前華蓮も最後にすこし笑いを取りつつ、退場である。