ここは富士山の麓にある、夜のゴルフ場。すでに営業は終わり、敷地の端にあるクラブハウスのぼんやりとした明かり以外、人工的な光は一切ない。月の光が芝生をかすかに照らし、夏を目前に控えながらも、湖面をくぐる夜風は、冷たくひんやりとしている。
ショートコースの5番ホール、グリーン手前のバンカーに一筋の光が落ちた。
立ちこめる砂ぼこりの中から、ブリーフケースを抱えた黒服の若者が姿を見せた。
「ウオエーっ! ゲホッ、ゲホ!」
“転送”による吐き気と、砂を吸い込んだ咳で、涙目になる。
「うぅ……やっぱり転送には慣れない……てかなんでよりによって、砂の上なの……」
彼は地球から何百万光年も離れたラパーマ星の、いわゆる公務員。上司に命じられ、地球へと無理くり転送されてきた。
「はあ。仕事仕事」
闇夜に浮かぶ富士山や、生えそろった芝生が風に揺れる様、自星では見ることのできない景色に心を奪われながらも、淡々と仕事をこなす。
まずは黒い缶詰型装置の設置。缶詰の蓋にはタイマーがセットされている。この作業を、いくつかのホールにまたがって行う。
「これでよし、っと」
缶詰を置き終え、つかの間の休息後、
「さて、帰りますか」
腕に付けた端末をいじり出す。
「!」そこではたと気づき手を止めた。「まずいまずい、肝心なことを忘れるところだった」
ブリーフケースから最後に取り出したのは、タワー型の装置。
「これを設置しなきゃ、懲戒ものだ。危ない危ない」
フェアウェイの芝上に置くと、
「今回は……このくらいの人数でいいだろう!」
側面のパネルに適当な数字を打ち込む。
「よし、これで準備完了!」
パンパンと手を叩いた直後、
ピピピピ
背後の遠くで音がする。
「お、もうタイマー切れたか」
さっさと帰らないと。そう言いながら腕に巻いた端末を再びいじり出す。
「それでは地球の皆さん、今回もよろしくお願いしまー」
言葉が途切れ、地から空へと、光の筋が走った。ラパーマ星の公務員はもういない。
残された缶詰型装置のタイマーは0をカウントし、次々と蓋が開かれる。
ゴロン
中から転がり出てきたのは、丸い物体。ゴロンゴロンゴロン。一体どんな構造なのか、小さな缶詰から出てきた直後、それらは形を大きする。
次から次へと転がり出てくるその物体の正体は、ダンゴムシ。
節を湾曲させたそのフォルムはボールそのもの。ゴルフ場のコース上を、月の下で、たくさんのボールたちが縦横無尽に転がり狂う。
チュイーン……
その傍ら、ダンゴムシの回転をすれすれかわして立ち続けるタワー型装置が、静かに作動し始める。
毎度お世話になっております。小西秀昭です。今回はバトル、しかも舞台は寝子島外でございます。
前回のアリに続き、今回はダンゴムシ。腹側は気持ち悪いですが、基本丸まり続けているので、愛嬌はわりかしあると思います。……ないか。
それでは詳細について少しお話しします。お付き合い下さい。
【舞台】
富士山麓にあるゴルフ場。かなり広いです。
【ダンゴムシ】
地球の昆虫「ダンゴムシ」を参考にして、ラパーマ星が開発した戦闘兵器。その性能を調べるため、政府はサンプルを缶詰型装置に詰め、地球へと投棄したのが事の次第。もれいびを呼び寄せてデータを収集します。ダンゴムシは生物ではなく完全な人工物です。
弱点は外殻の内側、腹部にある赤いスイッチ。これを押すとダンゴムシは無害な物へと分解されバラバラになって消えるのですが、基本丸まって転がり続けているので、スイッチまで到達するのは困難。もちろんスイッチを押すだけでなく、物理的なダメージを蓄積させて機能を停止させることも可能です。
ダンゴムシにはいくつかの種類があります。攻撃パターンは、基本的には転がってくる攻撃しかしてきません。
巨大型
直径5メートルの巨大型。速度はないが轢かれたら痛い。動きを止めるだけでも一苦労。ある程度の衝撃を与えると丸まりを解く。10体前後がゴロンゴンロンゴロン中。
装甲型
サイズは運動会でよく見る大玉運びのアレ程度。外殻が硬く、ほとんどの攻撃を受け付けない。物理的な攻撃以外の方法が必要か。5体前後がゴロンゴロン中。
スピード型
サッカーボールサイズ。とにかく素早い。動きに追いつけさえすれば、ひと蹴りで丸まりを解き、気絶させることができる。高速なため正確な数は把握できませんが、20体以上はゴロンしているかもしれません。
彼らダンゴムシを一掃することが今回の目標になります。
【アクション】
参加者のあなたは、ダンゴムシと戦うため、タワー型装置によって夜のゴルフ場に召喚されました。装置のエラーという設定で“ひと”も参加可能です!
召喚先はゴルフ場内のドコカになります。目の前には“手紙”があり、状況と目標が事務的に伝えられます。腹にある弱点スイッチは、この手紙の中で知ることができます。
月の明るい夜なので、コース上は視界が利くでしょう。木々の中だと視界は悪いですが、ダンゴムシも自由に転がることはできないでしょう。また、これは前回と同様ですが、召喚時、身につけていたものや持っていたもの、周辺にあったものも一緒に転送されていることがあります。アクションで希望を出していただければ、できる限り活かしていきたいと思います。
どの種類のダンゴムシと、戦ったり、追いかけっこをしたりするか、もしくは全く関係ないことをするか、どんなアクションでもウェルカム! お待ちしています!