‐ふと気づいた時『俺』が居たのは暗い暗い…底が見えないほどの暗い空間だった‐
≪!!…っつ―――~…うぁ?…此処、はっ…あぐっΣ……つぅ、ぐっ…≫(激痛に頭を押さえ屈みこむ
‐まだ夢の中で意識がふわふわしていて現状を掴めない『俺』の頭に鈍い痛みが生じた‐
‐しばらくすると頭痛は収まったが今度は幼い、どこか聞き覚えのある子供の声が聞こえた‐
≪…この、声は…昔、どこかで?…どこだ…どこから聞こえるんだ…?≫(声を手繰るように辿って歩いていく
‐どこまでも広がって行っているような途方もない広さの空間を声だけを頼りに歩いていく‐
‐すると、僅かに聞こえていた子供の声が次第にはっきりと聞こえるようになっていった‐
≪…泣いている、のか…この泣き方は…≫(聞こえてきた声には嗚咽と咳き込む音が混じっている事に気づく
「…ぁ…、暗ぃ、…いょ…さ、い……ねぇ…誰か、誰か居ないの…?…さびしぃよ…怖いよ…誰かぁ…」
‐次第に目が慣れてきた『俺』が見たものは…‐
≪あれは…昔の…過去の俺…?…だが何故こんな事に…≫(首を傾げる
‐昔の幼い『俺』だった。よく見覚えのある暗くて広い何もない部屋‐
‐こんなに広いのに部屋主は『俺』だけだった。だから一人を感じたくないからずっと隅っこで震えてた‐
≪…この状況で俺はどうすれば…≫(何かアクションを起こしてもよいのか迷う
‐一人で泣きじゃくっていた昔の『俺』がこちらに気づきびくっとした後、恐る恐る声をかけてきた‐
「ぁえ??…びくっΣ……あっ、あのっ…あなたも「すれいゔ」ですか…?」
≪すれいゔ?…あぁ、slaveの事か……違うな、俺は奴隷じゃない。≫
‐そんな事を問われるとは思っていなかったが、自分の過去を想えば納得がいった‐
‐ただ、それを認識すれは認識するほど昔の自分がどうだったのかをありありを見せつけられる様だった‐
‐問いかけに対して否定を示すと過去の俺はあからさまに落ち込んだ‐
‐少し罪悪感を感じたから取り敢えず一緒に遊んでやるかなと思って過去の俺に提案することにした‐
«…なぁ、少し遊ばないか?»
「ぇ…あそぶ…ってどっち?」
‐始めは過去の俺も幼かったし素直に喜ぶかと思っていた‐
‐だが過去の俺は予想外の言葉を、遊ぶという言葉に対してどっち?と返してきた‐
«は?どっち、だと?»
‐よく分からず返してしまった俺は言葉を放った後に後悔した‐
‐何故『俺』にとってわかりきった事を言ってしまったのだ、と‐
「え??あのきれーな兎さんが玩具なのか、それとも」
‐過去の俺は部屋の隅にあった綺麗な白い兎のぬいぐるみを指してからその指を‐
「僕が玩具なの?って聞いたんだよぅ?」
‐自分の方へ向けて屈託の無い笑顔で聞いてきた‐
«…っっつ…うぇ、う"ぁ……がっ、げほげほっ…っふ、ぁ…»
‐その笑顔で自らを『玩具』と称す過去の己を見て‐
‐『俺』は目頭が熱くなるのと喉が焼けつくような感覚を覚え、嘔吐した‐
«っ…………»
「おにーさん?どうしたの?どこか痛いのっ…?」
‐顔は見えないだろうが音で俺が吐いたのが分かるのだろう過去の俺は心配してくれたのか寄って来た‐
‐『俺』は近くへ来た過去の自分を抱きしめた‐
「??おにーさん?ほんとに大丈夫?苦しいよ」
‐過去の俺が可哀想で、惨めで、何もできない自分が情けなくて‐
«…ごめん、ごめんな»
‐だから精一杯抱きしめた。他の人の温かさも知らなかった自分に教えたくて、ただそれしか-
「…おにーさん」
‐それしか出来ないからっ‐
「大きくなった『僕』」
«っ!?»
‐何故‐
「大じょーぶ、大丈夫だから」
«…っ»
‐何故、という思いよりも幼い自分の手が精一杯の見栄を張っている‐
‐その事に不思議と涙が、溢れて来た‐
«…なぁ、お前は今しあw»
「もう時間だね」
‐幸せか、という『俺』の問いかけを遮り過去の俺が天井を見上げた‐
‐それにつられ『俺』も上を見上げると‐
«…何だ、あれは»
‐白い円状の光が迫って来ていた‐
‐何かと聞こうと過去の俺の方を向くと『俺』が笑って言った‐
「ありがとーね、おにーさん。大丈夫、僕は幸せになれるんでしょ?おにーさんが幸せそうだもの」
‐何か、眩しい光に包まれる中、過去の俺の声が聞こえた‐
‐返そうとしたとき、『俺』の意識が薄れた‐
«ありがとう、またな» 「ありがとぅ、またね」
‐意識が、消えた‐