古々しくも手入れの行き届いた空手道場。
人数こそ少ないものの猛者揃いの盆倉門下たちが日々汗を流している。
土日には子供空手教室なんかも行っていたりする。
時折態度のでかい居候がやって来て指導をしたりしなかったり。
あーバニラなーバニラもいいよな、……――ッ!
(ドズッ、という鈍い打撃音と共に強かな衝撃。
無防備な腹部に突き刺さった一撃にヒュッ、と小さく息が漏れる。
ダメージは確かに入った。……が)
……いいパンチだ。
ボディから削ってくっつー狙いもいい。
しかし、しかしだねむる。
俺に勝ちたいんなら、迷わず顎を狙うべきだったぜ――!!
(言うが早いか、キュキュッという足鳴りの音と共に楓の上半身が掻き消える。
神速で繰り出されたその一撃は空手ではなく、相手同様ボクシングの技。
身体をほぼ横倒しにした状態で真下から相手の顎を狙う、異形の右アッパーが唸りを上げて迫る)