遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
斑鳩さんと皆口か。
斑鳩さんはここによく来るんですね。確かにここ喧騒から離れて落ち着くというかなんというか……
寝子高は個性飛び越えて変な奴ばっかりですよ(苦笑)
それがいい刺激になってるのかもしれないですけど。
(ピアノに見覚えがあるかという問いに対し)
遠くから見たときは確証なかったけど、近くで見たらやっぱり……製作者が同じなんだと思います。
ここにもいたんだな……二十年も誰にも弾いてもらえなかったのか(悲しげに目を細めピアノを撫で)
斑鳩さん、見た目理系っぽいのに随分詩的な表現するんですね。
ちょっと意外……あっ気に触ったらすみません(慌てて)
(自分の手を見られて)
俺はピアニストですから。実力には自信あります。
それじゃ、直ったら俺の演奏聴いて下さいね。斑鳩さんの好きな曲弾きますよ(ふっと笑み)
(皆口さんに対し)
人違いじゃなくてよかった……。俺は8組だ。
生まれつきって……まあ、会ったばかりの俺が言うのもなんだけど、あんまり思い詰めんなよ。
俺もそんなポジティブな方じゃねぇから説得力ないけどよ……。
(ピアノを見たら懐かしくなったと聞こえて)
お前もピアノ弾くのか?
俺の演奏ならいつでも聴かせてやるよ。学校にもピアノあるし。いつでも声かけてくれ。
(呉井さんに芸術科かと聞かれて)
おう、俺も芸術科。音楽専攻のピアニストだ。
呉井も音楽専攻か?ピアノ直せるくらいだし。
あっ、プレッシャーかけちまったら悪いな……。
卒業するまでは寝子島にいるつもりだし。さすがにそれまでには直ってるだろ?(冗談っぽく)
(ピアノを弾く資格がないという言葉が聞こえて)
弾きこなせなくたって、弾きたかったら弾けばいいんですよ。音楽ってそういうもんでしょ。
凡人とか天才って言葉は芸術分野に携わってる者としては耳が痛ぇな……(ははは、と乾いた笑い)