遊園地の敷地内にある野外音楽堂
石造りのステージでは嘗て手品やお芝居、ヒーローショーが演じられていたが、今は演者も観客もなく静まり返っている
ステージには壊れたピアノが一台打ち捨てられている……
肩の力抜くと、途端にゆる~い部分が出ちゃうんですよぅ。
そっかぁ。お名前、斑鳩遥さんっていうんですねぃ。
こちらこそ、改めてよろしくお願いしまっす。
あ、絵も描く事あるけど、オレはどちらかというと粘土細工や陶芸の方が得意なので、
工芸系って言った方がよかったですねぃ。
ややこしい言い方しちゃって、すみません。
知り合いの人も陶芸が得意なんです?
わぁ~♪どんなの作るんだろー、気になるなぁ。
んーっと、オレが作ってる物は…っと…。
(カバンから、手の平にちょこんと乗る丸々とした可愛らしい猫の人形を取り出して)
こーんな感じのちょっとした粘土細工の人形や、たまにキモコワな人形も作ってますよぅ。
(随分弾いてないのかい?と訊かれ、じっと手を見て)
ピアノはこっちに来て以来弾いてなかったんで、ちゃんと指が動くかなぁって…。
とか言いつつ、また前みたいにピアノやドラムをやりたくなって、
最近軽音楽部に飛び込んじゃったんですけどねぃ(苦笑)
このピアノが息を吹き返したら、何か一曲かぁ…。
何だか聞けば聞くほど、そんな聴き手のプロな人にオレの演奏聴いてもらっていいのん?って
どんどん緊張してきたんですけどぉ~~…っ
…んー、でも『技巧の優劣のみが人の心を揺り動かすとも限らない』って言ってくれたし、
オレもそれに近い事を思った事があるしぃ…。
わっかりました、どんな曲弾くか考えておきますねぃ。
ちょ…っ ご友人の方って、超有名な時任彼方さんじゃないですかぁ~(汗)
オレもアルバム持ってますけど……確かこの人の演奏は…。
…と、ソレ、遺作なんですか?
い、いいのかなぁ、そんな貴重な演奏を聴いちゃって…(遠慮がちにウォークマンを見つめる)